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黒柳徹子さんがもつ類いまれな美点とは?

40年間、「小賢しくならない」ということ

矢部万紀子 コラムニスト

 「徹子の部屋」が40年だそうだ。視聴率はすごく高いわけではなく、だから「打ち切りか」などと時々書かれたりもするようだが、テレビ朝日にしてみれば打ち切る理由はまったくないと思う。

 だって人気沸騰中のマツコ・デラックスは「徹子さんのおかげで私がいる」といつも言っているから、二人の特番を何度も作れるし、ビッグネームの訃報のたびにワイドショーその他で「出演時の映像」を流せるし、「笑っていいとも!」終了時にはすかさず「徹子」の開始時間を正午に変えて「フジテレビ退治」感をすごく出せたし……。特典多すぎ!

 だけど、もちろんそれだけでは40年も続くわけがなく、視聴者とゲスト、両方から「いいね!」な番組になっているわけで、それを支えているのが黒柳徹子さんという人の技量なことは間違いない。

黒柳番組スタッフから「少女のままの人」と語られる黒柳徹子さん
 スタッフによる入念な調査を受けてのインタビュー、しかもほとんど編集しない――「徹子の部屋の基礎知識」ともいうべきベースはあってのことだが、私は「いいね!」を支えているのは、黒柳さんという人がもつ類まれな美点だと思う。

 それは何かと言うと、黒柳さんは小賢しくならない。その1点で続いている。そう思っている。

 「小賢しくならない」というのは、簡単なことではない。

 黒柳さんと比べるなど、ずうずうしいことは承知しつつ、「人に会って話を聞く」を基本とする仕事について32年の私は、身を持って感じている。

 ちなみに32年は「笑っていいとも!」の放映期間と一緒だが、サラリーマンの仕事としても短いほうではないだろう。

 短くはない期間で振り返るに、若い頃は一生懸命で大抵のことが済んで、失敗もあるが、すべて糧となる。だが、熟練するにつれ、いろいろな罠が待っている。慢心とか、飽きとかまあいろいろあるのだが、最大は「自分で自分を見る目ができてしまう」罠だと思う。

 ちょっと話が変わるが、テレビ朝日の午前8時からの情報番組「モーニングバード」というのを比較的よく見ている。

 日本テレビ出身の羽鳥慎一アナウンサーは、ハンサムで堂々としていて、でも愛嬌たっぷりで、人気のほども納得だ。そんな彼も時たま、「今、いいこと言ったよね、僕」という顔をすることがある。ドヤ顔ではない。そんな顔をするほど、素人ではない。でも、微妙にわかるのだ。

 羽鳥さんは話すことが仕事だ。「気の利いたことを言う」ことも大切だ。そちらに向けて、熟練していくわけだ。

 そちらに向けての努力をしているうちに、自分で

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