メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

 イルミネーション・エンタ−テインメント社が製作した3D-CG長編アニメーション『ミニオンズ』(アメリカ公開7月10日、日本公開7月31日)の勢いが止まらない。

『ミニオンズ』映画公開の巨大吊広告拡大『ミニオンズ』映画公開の巨大吊広告=撮影・筆者

 10月1日現在で、全世界興行収入が11億4531万ドル(約1374億3720万円/1ドル=120円計算)を突破。アニメーション映画の歴代興行収入(以下、興収)で第2位となっている。

 9月13日からは中国でも公開が始まり、公開初日だけで約1880万ドル(約22億5600万円)というアニメーション映画興行の国内新記録を達成(9月18日付『シネマトゥデイ』)。あと1.3億ドル(約156億円)を稼ぐことが出来れば、第1位の『アナと雪の女王』(2013年)の12億7421万ドルを超える。

 一方、同時期公開の最大のライバルと目されたピクサー製作・ディズニー配給の3D-CG長編アニメーション『インサイド・ヘッド』の世界興収は7923万ドル(約950億7600万円)に達している。こちらもピクサー作品歴代3位の大ヒットを記録したが、『ミニオンズ』には突き放された形となった。『インサイド・ヘッド』が振るわなかったのではなく、『ミニオンズ』の動員がそれほど桁外れに伸び続けたということだ(表1参照)。

表1
アニメーション映画 歴代世界興行収入
拡大【表1】 アニメーション映画 歴代世界興行収入

ディズニー/ピクサー以外の唯一の成功例

 ミニオンたちが最初に登場した作品はシリーズ第1作『怪盗グルーの月泥棒』(2010年)である。

 ミニオン“Minion”とは「手下、子分」の意味。主人公のグルーを支える、文字通り「手下たち」の設定であったが、その正体不明の黄色いキャラクターたちは世界中で注目の的となった。

 3年後に公開されたシリーズ第2作『怪盗グルーミニオン危機一髪』(2013年)では、その役割は更に大きくなり、ミニオンしか登場しない予告編が制作されるなど、主役を押しのけるほどの存在に成長。

 そして、シリーズ第3作目となる本作『ミニオンズ』では、スピンオフとしてついに主役の座を射止めた。

 『怪盗グルー』シリーズは世界中で大ヒットを記録したが、驚くべきは日本の興行成績である。

 日本興収は、第1作が12億円、第2作が23億円、そして第3作『ミニオンズ』は公開54日目で50.8億円、観客動員は421万人を超え、未だロングラン中だ。1作毎に倍増という、文字通り「ホップ・ステップ・ジャンプ」の奇跡的上昇を果たしている。

 この数値は、今夏の国内アニメーション映画興行でトップを独走した細田守監督の2D大作『バケモノの子』(公開44日間で興収51億円、動員400万人を突破)とほぼ互角の成績である。

 国産の2Dアニメーション長編が量産されている日本では、元より海外長編アニメーションのヒット作は数少ない。

 スタジオジブリ作品を筆頭に、毎年製作される『劇場版ポケットモンスター』『映画ドラえもん』などの新作が30億円を超える興収を連発。お馴染みのキャラクターが活躍する諸作がファミリーを中心とした幅広い客層を吸収し、同時期公開の海外作品動員の障壁となっていた。

 唯一の例外はご存知ディズニー/ピクサー作品である(表2参照)。

表2
日本公開外国産アニメーション歴代興行収入
拡大【表2】 日本公開外国産アニメーション歴代興行収入

 これまで、日本で興収30億円を超えた海外長編アニメーションはディズニー/ピクサー作品しか存在しなかった。ドリームワークス、ブルースカイほか米のライバル各社の作品は幾ら全世界でヒットしても、国内興行は今ひとつ振るわなかった(表3参照)。

表3
ディズニー/ピクサー作品以外の日本公開外国産アニメーション歴代興行収入
拡大【表3】 ディズニー/ピクサー作品以外の日本公開外国産アニメーション歴代興行収入

 『シュレック』4作(ドリームワークス)、『マダガスカル』3作(同)『アイス・エイジ』4作(ブルースカイ)などもアメリカでは全作大成功を収めたが、日本では1作毎に先細りであった。

 ドリームワークスの『ヒックとドラゴン』(2010年)は第1作が大敗した為、数々の賞を受賞した続編『ヒックとドラゴン2』(2014年)は日本ではソフト発売だけに終わった。ライカ社の人形アニメーション長編も『パラノーマン ブライス・ホローの謎』(2012年)が惨敗したことで、新作『The Boxtrolls』(2014年/原題)は公開の予定がない。

 イルミネーション社製作の『怪盗グルー』シリーズ以外の長編『イースターラビットのキャンディ工場』(2011年)、『ロラックスおじさんの秘密の種』(2012年)も日本興行は不発に終わっている。

 つまり、ミニオンの登場するシリーズだけが、ディズニー/ピクサーと肩を並べる「シリーズとしての成功」を手にした。しかし、両者の作風はまるで異なる。

「笑えるB級作品」が世界を征するという快挙

 ディズニーの大ヒット作『アナと雪の女王』 ・・・続きを読む
(残り:約1707文字/本文:約3630文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
デモクラシーやJournalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

叶精二

叶精二(かのう・せいじ) 映像研究家、亜細亜大学・東京工学院講師

映像研究家。亜細亜大学・大正大学・東京工学院講師。高畑勲・宮崎駿作品研究所代表。著書に『日本のアニメーションを築いた人々』(若草書房)、『宮崎駿全書』(フィルムアート社)、「『アナと雪の女王』の光と影」(七つ森書館)、共著に『王と鳥 スタジオジブリの原点』(大月書店)など。

叶精二の新着記事

もっと見る