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[10]なぜ、自治体のPR動画はネタ化するのか

宮崎県小林市、「うどん県」香川、岐阜県関市……

太田省一 社会学者

 今回は、まずこの動画から見ていただきたい。

PR動画のワンシーン。西諸(にし・もろ)弁で「じょじょん よかとこ、住んみやん」は、「とても良いところだよ、住んでごらん」という意味=電通提供拡大宮崎県小林市のPR動画のワンシーン。西諸(にしもろ)弁で「じょじょん よかとこ、住んみやん」は、「とても良いところだよ、住んでごらん」という意味=電通提供

 私は初見の際、完全に騙された。東北弁の発音がフランス語に似ているとタモリなどが常々指摘していて、そうしたネタの応用編とも言えるのだが、宮崎県小林市というれっきとした自治体が作った動画ということで、そんな可能性を端から疑ってみもしなかった。

 そして動画のラストで仕掛けに気づかされ、その鮮やかなどんでん返しに喝采すら送りたくなった。

 近年、各地の自治体が、地元PRの一環としてこうした凝った動画を制作することが増えている。

 注目を浴びたのは、話題になった香川県の「うどん県」キャンペーンあたりからだろうか。同県出身の要潤が副知事に扮し、「香川県は『うどん県』に改名しました」と宣言する内容の動画だ。2011年のことである。

 それ以後他県も追随するかたちで、地元の特徴をユーモラスに、そして時には自虐的にアピールする動画を制作するようになった。

 さらに最近は、都道府県レベルよりも市区町村レベルでのPR動画制作が盛んになりつつあるという。

 各地域の魅力度調査の結果によると、都道府県レベルでのランキングには年による変動がほとんどないのに対し、市区町村レベルでは毎年のようにかなりの変動がある。したがって、市区町村レベルでのPRには、力を入れた分だけ効果を見込める可能性がより高いというわけである。

女性が空手チョップでニンジンを切ろうとするシーン=岐阜県関市提供拡大岐阜県関市のPR動画。女性が空手チョップでニンジンを切ろうとするシーン=関市提供
 例えば、これも今話題なのが、岐阜県関市のPR動画「もしものハナシ」である。

 関市は伝統的に刃物の町として有名だが、もしもこの世に包丁、剃刀、ハサミなど刃物がなかったらいったいどうなるのか?

 それをユーモアたっぷりに描いたのがこの動画である。ストレートに刃物の良さや有難さをアピールするのではなく、ひとひねりするところが昨今のトレンドと言うべきなのだろう。

地域の深刻な問題も

 しかし、こうした自治体動画は、 ・・・続きを読む
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筆者

太田省一

太田省一(おおた・しょういち) 社会学者

1960年、富山県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビ、アイドル、歌謡曲、お笑いなどメディア、ポピュラー文化の諸分野をテーマにしながら、戦後日本社会とメディアの関係に新たな光を当てるべく執筆活動を行っている。著書に『紅白歌合戦と日本人』、『アイドル進化論――南沙織から初音ミク、AKB48まで』(いずれも筑摩書房)、『社会は笑う・増補版――ボケとツッコミの人間関係』、『中居正広という生き方』(いずれも青弓社)。最新刊は『SMAPと平成ニッポン――不安の時代のエンターテインメント 』(光文社新書)、『ジャニーズの正体――エンターテインメントの戦後史』(双葉社)。

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