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[11]ネット芸とはなにか、ちょっと考えてみた

とにかく明るい安村、萩本欽一、はじめしゃちょー、M.S.S Project

太田省一 社会学者

「安心してください、穿いてますよ。」

 そろそろ年末も近づいてくると、世の中は回顧ムードになってくる。恒例の「新語・流行語大賞」の候補も発表された。

 そこに毎年名を連ねるお笑い芸人による流行フレーズのなかで、今年「ラッスンゴレライ」や「あったかいんだからぁ」と並んでノミネートされたのが、「安心してください、穿いてますよ。」である。

とにかく明るい安村さん 拡大「安心してください、穿いてますよ。」を流行させた、とにかく明るい安村さん
 ご存知の方も多いだろうが念のために説明すると、これはピン芸人のとにかく明るい安村が流行らせたフレーズである。

 海パン一丁姿の安村が、相撲の仕切りや野球のピッチングフォームのポーズをすると、角度や動きによって全裸に見える。

 すると安村は、勝ち誇ったようにニヤリとしながら両手で海パンを指し示す。

 そのとき発する決めゼリフが「安心してください、穿いてますよ。」である。

 その安村が、海外向けにつくった外国語(英語、タイ語、韓国語)バージョンの動画が外国人にウケているという。

 例えば、英語版の動画では、「アメフト」、「西部劇のガンマン」、「スパイダーマン」を題材に全裸に見えるポーズを決め、“Don't worry, I'm wearing."と締める。

 この動画はすでに100万回を超える視聴回数を記録している。コメント欄を見ても、「すごい」「天才」「つい笑っちゃうね」といった肯定的な評価も目立つ。

 笑いは文化や慣習と密接なものであり、その社会で通じても違う社会では通じないとよく言われる。例えば、私もそうだが、アメリカンジョークはいまひとつピンとこないというようなことだ。

 だがそれもネタの性質によるのかもしれない。安村のこのネタはシンプルで余分な説明が要らず、見て一目でわかるタイプのもの。それでネタにするポーズをその文化圏で知られているものにすれば十分ウケるということなのだろう。

 またこの場合、インターネットの長所も感じられる。実際に海外に行って本格的に活動するとなると大ごとだが、こうして動画としてアップすれば格段に労力は少なくて済む。

 言い古されたことだが、インターネットには国境を簡単に越えられるという利点がある。その意味では、今後海外でも評価されるタイプのネタも増えていくのかもしれない。

テレビの芸は「解体芸」

 だがもう一方で、やはり日本で暮らす人間にしかわからないだろうと思われる笑いもまだまだ多い。実際、日本のテレビバラエティの歴史は、そんな笑いの洗練の歴史でもあった。

 では、ネット上でもさまざまなネタ動画がアップされるようになった現在、テレビ芸があるように、ネット芸と呼べるようなものもあるのだろうか? 今回は、安村の動画を見てふと心に浮かんだこの疑問について、ちょっと考えてみたい。 ・・・続きを読む
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筆者

太田省一

太田省一(おおた・しょういち) 社会学者

1960年、富山県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビ、アイドル、歌謡曲、お笑いなどメディア、ポピュラー文化の諸分野をテーマにしながら、戦後日本社会とメディアの関係に新たな光を当てるべく執筆活動を行っている。著書に『紅白歌合戦と日本人』、『アイドル進化論――南沙織から初音ミク、AKB48まで』(いずれも筑摩書房)、『社会は笑う・増補版――ボケとツッコミの人間関係』、『中居正広という生き方』(いずれも青弓社)。最新刊は『SMAPと平成ニッポン――不安の時代のエンターテインメント 』(光文社新書)、『ジャニーズの正体――エンターテインメントの戦後史』(双葉社)。

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