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[2015年 美術 ベスト5] 本音の展覧会

美術館がタブーを恐れなくなった

古賀太 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

目立った根源的なテーマ

 フランスのヌーヴェル・ヴァーグの金字塔となったジャン=リュック・ゴダールの映画『勝手にしやがれ』(1951)の後半で、ジャン=ポール・ベルモンドが「密告者はバラし、泥棒は盗み、殺人者は人を殺し、恋人たちは愛し合う」という同義反復のような不思議なセリフをジーン・セバーグに語るシーンがある。

 この映画では、本性を現したのだから仕方がない、というような意味だが、今年(2015年)はみんなが本音を見せた年のようだ。

 政治家は国民のことを考えずに、アメリカの意向と経済界の利益のために動く。それに反対する国民はデモをする。それが学生にも広がる。沖縄の知事は国と正面から戦い、地元が支持をする。

 有名デザイナーはお金儲けのために平気でパクリをする。それに怒ってネットで袋叩きにして、引きずりおろす。

 フランスで苦しむ移民たちは、テロを起こす。それに対抗して、大統領はシリアへの空爆を増す。EUは貧乏国ギリシャを切り捨てようとする。アメリカでは大統領候補者がイスラム教徒を入国させるなと言って、喝采を浴びる。

 そんな「本音」ベースの雰囲気が、偶然かもしれないが美術展にも現れていたように思う。

 その結果として、美術とは何か、美術館とは何かを問いただすような根源的なテーマの展示が目立った。美術館がタブーを恐れなくなったというべきか。

春画を自由に見る光景

(1)「春画展」(永青文庫)

連日、多くの観客を集めた春画展=東京都文京区の永青文庫拡大連日、多くの観客を集めた春画展=東京都文京区の永青文庫
 「春画展」はここでも書いたように、2年前に大英博物館で開催された展覧会の帰国展のはずだったが、20以上の博物館・美術館が批判を恐れて開催を拒否した。

 そこで反原発を唱えて怖いものなしの細川護熙元首相が理事長を務める永青文庫が名乗りを挙げた。

 もともと春画は江戸時代には貸本として普通に流通していたものだし、嫁入り道具のひとつでもあった。明治以降、長い間影の存在だったが、性表現の自由化に伴って1990年前後からは印刷物としては数冊が普通に出回っていた。

 美術館が25年もそれをやらなかったのは、単なる「ことなかれ主義」。今回の展覧会では ・・・続きを読む
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筆者

古賀太

古賀太(こが・ふとし) 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

1961年生まれ。国際交流基金勤務後、朝日新聞社の文化事業部企画委員や文化部記者を経て、2009年より日本大学芸術学部映画学科教授。専門は映画史と映画ビジネス。訳書に『魔術師メリエス――映画の世紀を開いたわが祖父の生涯』(マドレーヌ・マルテット=メリエス著、フィルムアート社)、共著に『日本映画史叢書15 日本映画の誕生』(岩本憲児編、森話社)など。個人ブログ「そして、人生も映画も続く」をほぼ毎日更新中。http://images2.cocolog-nifty.com/

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