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パリ同時多発テロが生んだシンボル(上)

SNSによる急速な拡散と消費

林瑞絵 フリーライター、映画ジャーナリスト

テロから2時間半後にアップされた「Peace for Paris」

 平和と反戦のシンボルのピースマークに、エッフェル塔を掛け合わせたデッサン。

 黒ペン1色で描かれたシンプルなものだが、見る人の懐にまっすぐ飛び込んでくるような強い印象を残す。

フランス人イラストレーター、ジャン・ジュリアンが描いた「Peace for Paris」拡大フランス人イラストレーター、ジャン・ジュリアンが描いた「Peace for Paris」
 パリ同時多発テロを受け生まれたものだが、目下、新しい平和のシンボルとして広く支持されている。

 ロゴには「Peace for Paris」という文句が添えられ、発表された。

 作者はフランス西部の町ナント出身で、ロンドン在住のイラストレーター、ジャン・ジュリアン(32)。ラジオで祖国のニュースを聞いて衝撃を受け、最初に浮かんだイメージを、下書きなしで一気に描いたものだという。

 自爆テロと銃乱射は2015年11月13日金曜日の21時台から始まっていたが、彼は2時間半後の深夜0時頃にはこのロゴを、インスタグラム、ツイッター、公式サイトなどにアップしていったそうだ。

 事件から二日後。共和国の象徴レピュブリック広場でも
>
> 「Peace for Paris」のデッサンがある
拡大事件から2日後、「共和国」の象徴レピュブリック広場でも「Peace for Paris」のデッサンが見られた=撮影・筆者
 デッサンは直ちに反響を呼んだ。数時間のうちにツイッターで4万6000回リツイート、インスタグラムで12万3000の「like」がついたと報道された。

 しかしこれらの数字は実際のインパクトを表してはいないだろう。有名デザイナーやミュージシャンも共有したこともあり、最終的には世界で数百万から数千万人がシェアをしたとも言われている。

 海外の反応は迅速で、タイム誌やニューヨーク・タイムズ紙、CNCなどは、フランスの多くのメディアよりも早いタイミングで、ジュリアンにインタビューを敢行していたほどだ。

瞬く間に伝播する共感

 振り返れば2014年1月のシャルリー・エブド襲撃事件の後にも、「私はシャルリー(Je suis Charlie)」のロゴが誕生し、SNSを介して瞬く間に世界を駆け巡っていたものだ。

 こちらはフランス人グラフィックデザイナーで、音楽ジャーナリストのジョアキム・ホンサン(38)が手がけたロゴであり、「私は自由」「私は恐れない」という意味が込められていた。彼の場合は、事件発生から30分以内にロゴをツイッターで発信していたというから、行動の早さにあらためて驚いてしまう。

 ただ発信のスピードが早いのは、当然といえば当然かもしれない。ジュリアンとホンサン双方の発言を読むと、 ・・・続きを読む
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筆者

林瑞絵

林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト

フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。

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