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必見! 濱口竜介『ハッピーアワー』(中)

市民参加のワークショップを出発点とした試行錯誤

藤崎康

 前回述べたように、『ハッピーアワー』の放つリアルさは、これまで誰も体験したことのないようなものだ。

 たとえば、看護師・あかり/田中幸恵の発する次のセリフの訴求力はどうだろう――「[以前だったら高齢の患者さんが]ここで死んだいうラインがあるやん。今は結局手術や投薬やあ言うて、その先も生きれてしまうわけよ。そうするとどうなるかって言うと、病気を持ってる上に、認知症を併発する患者さんっていうのが増えるわけ」「たとえば[病院を]脱走した人が、病院の外で事故に遭うやんか、もしくは自殺とかする。そうすると、それは看護師の“業務上過失致死”になんねん。裁判ではもう絶対負けんねん」。

濱口竜介監督拡大濱口竜介監督

即興演技ワークショップから

 では、こうした切実なセリフを、ひいては全編を貫く鮮明で先鋭な迫真性を、濱口竜介はいったいどうやって案出し、描出(びょうしゅつ)したのか。

 それはやはり、本作が市民参加の「即興演技ワークショップ in Kobe(以下WS)」を出発点に制作された、という点に大きく関わっているだろう。

 このことを、濱口らの著作、『カメラの前で演じること――映画「ハッピーアワー」テキスト集成』(濱口竜介・野原位・高橋知由、左右社、2015)に即して見ていこう。 ・・・続きを読む
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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

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