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週刊文春のいい「回転」について考える

元同業者としては、複雑だったりするけれど……

矢部万紀子 コラムニスト

 つい先日、神保町の古書店に行ったら、ラジオが流れていて、FMのようだった。

 しばらくすると、「私以外私じゃないの」が聞こえてきた。最初から最後まで、フルコーラスがかかり、聴き入ってしまった。

ベッキーベッキー“禁断愛”の連続記事は反響を呼んだ
 うわー、こんな歌なんだー、へー、かっこいいなー、何言ってるかよくわからないけど、と思った。

 この歌については、甘利元大臣が「だーかーら、マイナンバー」と歌っているのと、本人(川谷絵音さん)歌うところのサビの部分のみを、ワイドショーで聞くばかりだったのだ。

 どちらもセットで、「週刊文春にしてやられた2人」という文脈で取り扱われていた。

 私はサラリーマン人生のいちばん長くを「週刊誌」作りにかかわってきた。

 もちろん、週刊文春でないところでだ。いわゆる「総合週刊誌」というものを作ってきたので、まあ、「週刊文春のライバル誌」を作ってきたわけだ。

 週刊誌を作っていた会社を5年前に辞め、以来シニア女性向け月刊誌の編集長をしている。

 そうなってからは、わりと平らな気持ちで週刊文春を眺めていたが、でもなんとなく、「かつて競っていて、正直負けていた相手」であるという事実を前に、ちょっと素直になれないというか、まあ、そういう面はあった。文春の手柄を前にすると、ちょっと心が傷つくような。

「君たち、人殺しの顔、見たくないのか」

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