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[9]「不育症」――4回の流産ののちに……

横田由美子 ジャーナリスト

 ミカさん(44歳)が「不育症」という言葉を初めて聞いたのは、四十も手前だった頃ではないかという。

 「保健の授業でも聞いたことなかったし、大変な思いをしたとはいえ、奇跡的に長女が生まれたので、逆に気がつかなかった。妊娠はするので、“不妊”という意識もありませんでした。
 不妊治療をしていた女友達から、『妊娠するだけいいじゃない』と言われて、帰り道に涙が止まらなくなったこともあります。それほど、不育症について知られていないのが現実です」

 と言って、目を伏せた。

妊娠がわかるたびに悩む日々

母親の不育症を乗り越え生まれた赤ちゃん母親の不育症を乗り越え生まれた赤ちゃん。「不育症」はまだまだ知られていない(写真は本文とは関係ありません)
 不妊症と不育症の境目が曖昧で、最近ようやく両者をつなぐ糸口が見つかったことも知られていない。

 ミカさんが過去に経験した「流産」は計4回にわたる。

 妊娠検査薬で陽性が出て、産婦人科で正式に「妊娠」を伝えられるも、大喜びできたのは、最初の妊娠の時だけだった。

 初めての妊娠は、30歳の時だ。医師から「妊娠しているけれども、心拍が確認できなかったから、2週間後にもう一度来てください」と告げられた。

 知識が少なかったこともあり、その時のミカさんには、重大なこととして受け止められなかった。

 夫に「事の次第」を伝え、翌日は、低いヒールに履き替えて仕事に行った。

 午後、下腹部に違和感を感じた。

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