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[15]ネットで「あるあるネタ」は進化する

岡崎体育、マキタスポーツ、秋山竜次……

太田省一 社会学者

 岡崎体育。風変わりな名前だが、2016年5月にメジャーデビューしたばかりのミュージシャンだ。

 いま、彼のミュージックビデオが話題を呼んでいる。その名も『MUSIC VIDEO』。これまた風変わりなタイトルだが、ご覧いただけばわかるように、ミュージックビデオにありがちな演出をそのまま歌と映像にしたものである。

岡崎体育拡大岡崎体育
 例えば、本人が「カメラ目線で歩きながら歌う~」と歌う歌詞そのままに本人が画面を見据えながらこちらへ歩いてくる、といったように歌詞が全編を通してどこかのミュージックビデオで見たような場面の解説になっている。

 つまり、“ミュージックビデオあるある”集が楽曲になっているのだ。

 「あるあるネタ」は、笑いの分野でもいまやおなじみだ。「あるある」という表現とともに定着し始めたのは、1990年代に入ってからだろうか。

 つぶやきシロー、ふかわりょうといった芸人がそれでブレイクした。2000年代以降もテツandトモ、レイザーラモンRGなどが活躍している。

 一言で言えば、「あるあるネタ」は共感の笑いだ。ふだん目にはしているが何となくやり過ごしてしまっていることを芸人ならではの観察眼で切り取り、提示する。それが私たちの似たような経験についての記憶を刺激し、思わず「あるある」とうなずきながら笑ってしまう。

あいまいな、笑いと音楽の境界線

 そんな「あるあるネタ」の幅も、時代とともに広がっている。今回、この岡崎体育のミュージックビデオを見て思い出したのは、マキタスポーツの音楽ネタだ。

 ミュージシャンでもあるマキタは、さまざまな音楽ネタを得意としている。

 そのなかのひとつに「ヒット曲の法則」を分析し、それをもとに作ったオリジナル楽曲がある。2011年にリリースされた『十年目のプロポーズ』(※スチャダラパーをフィーチャーしたバージョン)がそれで、彼が主張するヒット曲4つの法則(カノンコードの使用、「翼」「扉」「キセキ」「桜」のキーワードを盛り込んだ歌詞など)に忠実に作られたこの楽曲は、テレビでも紹介され、配信チャートでも上位に食い込んだ。

 これは、流行歌そのものについての「あるある」と言えるだろう。しかも、一部分だけ取り出すような定番的なものではなく、楽曲という作品で表現したという点であまり類を見ない。

 この連載の前回でオリエンタルラジオが中心となったユニット・RADIOFISHの『PERFECT HUMAN』についてもふれたが、ここでも笑いと音楽の境界線がとてもあいまいになっている。

 考えてみれば、「あるあるネタ」は ・・・続きを読む
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筆者

太田省一

太田省一(おおた・しょういち) 社会学者

1960年、富山県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビ、アイドル、歌謡曲、お笑いなどメディア、ポピュラー文化の諸分野をテーマにしながら、戦後日本社会とメディアの関係に新たな光を当てるべく執筆活動を行っている。著書に『紅白歌合戦と日本人』、『アイドル進化論――南沙織から初音ミク、AKB48まで』(いずれも筑摩書房)、『社会は笑う・増補版――ボケとツッコミの人間関係』、『中居正広という生き方』(いずれも青弓社)。最新刊は『SMAPと平成ニッポン――不安の時代のエンターテインメント 』(光文社新書)、『ジャニーズの正体――エンターテインメントの戦後史』(双葉社)。

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