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高畑淳子さんの謝罪会見、モヤモヤが晴れない

加害者に感情移入したくもなり、親を責めたい気分にもなり……

青木るえか エッセイスト

 高畑裕太問題というよりは高畑淳子問題として見ている。

 バラエティや民放のドラマを見てないと高畑裕太を知らない人は多いだろうけど、お母さんのほうはまあ知らないこともない女優さんだ。容疑者の母というより、女優の息子が容疑者ということになってるんじゃないでしょうか。

 ひどい事件とはいえ、自分のことでないのだから、他人事として見るしかない。

 高畑裕太の罪は重い。やりくちが卑劣でみっともなく、おまけに調子に乗ってやってる感じがすごくイヤだが、幸い捕まってるので、あとは警察と検察と矯正にお任せしたい。

 こういう問題が起こった時、犯人が逮捕されて留置場あるいは拘置所や刑務所にいるので、そいつに石を投げたりこもってる家のドアに落書きしたりテレビの前に引き出して土下座させたりマイク100本突き付けたり怒鳴ったり小突いたりできない。

 おかげでそのとばっちりがまわりに行く。

 高畑淳子さんがさっさと謝罪会見を、それも朝のワイドショーの時間内にやったのは、手の内はすべて見せられるだけ見せてしまう、なんでも正直にぶちまけてしまう、のが火消しにはいちばん効果的とわかってたからだろう。

長男・裕太容疑者の逮捕を受け、会見する高畑淳子さん=26日午前9時50分、東京都千代田区、20160826拡大長男・裕太容疑者の逮捕を受け、会見する高畑淳子さん=2016年8月26日、東京都千代田区

 高畑さんはコトの重大さもよくわかっているという風情で、そこに“愚かな親”風味も適度に混ぜ、あんまりつっこまれないような会見をきちんと終えた。

ホコ先はレポーターにも被害者にも

 でも見てる人のモヤモヤは晴れない。

 そこで「息子さんの性癖はどうだったかとかいう質問をするレポーターの下品」にホコ先が向く。そもそも成人している子どものやらかしたことで親が出てくるものなのか、と言う者も出る。いや、そんなことよりも被害者のことをもっと考えろ。と、親切ごかしながら同時に被害者がどこのどういう人でどんな顔をした人なのか知りたくなる。年はいくつだって? どんな方なの、お気の毒に。いや、だからそういうことが被害者を苦しめるんだって。

 そして同時に、高畑淳子さんがあんなに涙ながらに謝ってんのを見せつけられたら、これ以上責めたらあかんみたいな雰囲気になって、そういうのが、被害者が被害を訴えることへの無言の圧迫になる。

 あらゆる方面にモヤモヤは発散されて、しかし「発散!」という爽快感もなく、ただいやな感じにそのへんにパッパと振りまかれてしばらく匂ってる……が、やがて慣れて忘れる。

 何か事件が起こるたびにこんなことの繰り返しである。

人の身になったつもりになる滑稽さ

 最初に、自分がやられたわけじゃないので他人事でしかないと書いて、ひどいこと言ってると怒られそうな気がしたが、でもやっぱり他人事でしかない、と言いたい。 ・・・続きを読む
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筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

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