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「あらゆるテイストを満足させる」ベネチア映画祭

玉石混交ながらも、その姿勢は東京国際映画祭も学ぶべき

古賀太 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

 ベネチア国際映画祭には1990年代前半から通っているが、去年(2015年)あたりからコンペが何でもありになってきた。玉石混交、よく言えば映画の多様性。今年はその傾向がさらに明らかになった。それは新しい上映施設「公園館」が象徴している。

 メイン会場そばに新映画宮殿を建てる計画は10年ほど前にあって、ヘルツォーク&ムードンの設計で基礎工事が始まっていた。ところがそこに以前の建物のアスベストが見つかり、その撤去に莫大なお金がかかることが判明して頓挫した。そこは去年まで、ビニールで覆われたまま放置されており、近年トロント国際映画祭の台頭もあって落ち込むベネチアの象徴のように見えた。

公園館拡大新しい上映施設「公園館」=撮影・筆者
 その場所に今年できた真っ赤なプレハブの「公園館」は446席の会場だが、ポイントは一般客を意識していること。

 プレス向け上映中心の「カジノ」やコンペの正式上映の「宮殿」と違い、一般客が自由に入れるゾーンにある。

 そこで上映される「公園の映画」という新しい部門の映画を中心に、オリゾンティ部門や古典部門の一般向け上映も組まれた。

 「公園の映画」部門は、ハリウッドでも活躍するイタリアのガブリエーレ・ムッチーノ監督のイタリア映画『夏を胸に』など一般向けの作品が中心。映画関係者だけでなく、より一般の観客に楽しんでほしいという映画祭側の配慮が感じられる。

玉虫色のセレクション

「ラ・ラ・ランド」.拡大『ラ・ラ・ランド』
 コンペでも、デイミアン・チャゼル監督のミュージカル『ラ・ラ・ランド』(2017年2月、日本公開)をオープニングに据え、パブロ・ロレイン監督がケネディ暗殺後のジャクリーヌ夫人を描く話題作『ジャッキー』を入れるなど、『ゼロ・グラビティ』や『バードマン』などベネチアが近年アカデミー賞の前哨戦と言われるのを意識してのセレクションが感じられる。

 こうした背景には、「地味な作品が多いとイタリアの新聞で叩かれ、結果として国会で問題になり、 ・・・続きを読む
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筆者

古賀太

古賀太(こが・ふとし) 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

1961年生まれ。国際交流基金勤務後、朝日新聞社の文化事業部企画委員や文化部記者を経て、2009年より日本大学芸術学部映画学科教授。専門は映画史と映画ビジネス。訳書に『魔術師メリエス――映画の世紀を開いたわが祖父の生涯』(マドレーヌ・マルテット=メリエス著、フィルムアート社)、共著に『日本映画史叢書15 日本映画の誕生』(岩本憲児編、森話社)など。個人ブログ「そして、人生も映画も続く」をほぼ毎日更新中。http://images2.cocolog-nifty.com/

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