メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

無料

女子高生を演じる笠原、曽世、岩﨑×演出・倉田

【インタビュー】劇団スタジオライフ「DAISY PULLS IT OFF」

岩橋朝美 フリーエディター、フリーライター


拡大左から笠原浩夫、倉田淳、曽世海司、岩﨑大=伊藤華織撮影

 劇団スタジオライフが、2016年12月1~18日に新宿シアターサンモールで「DAISY PULLS IT OFF(デイジー プルズ イット オフ)」を上演する。本作は1983年にローレンス・オリビエ賞の年間最優秀コメディー賞(Comedy of the Tear)を受賞した傑作。個性豊かな女子高生たちの青春群像劇を、オールメール劇団のスタジオライフが上演した過去2回の公演はいずれも評判を呼んだ。9年ぶりとなる今回は、ベテランの味で魅(み)せるMysticチームと若手キャストで挑むShinyチームのWキャストで上演する。上演に先立ち、Mysticチームに出演する笠原浩夫、曽世海司、岩﨑大、演出家の倉田淳に話を聞いた。

 英国の名門校“グレンジウッド女学院”に初の奨学生として入学した公立校出身のデイジー(笠原浩夫/宇佐見輝)は、親友のトリクシー(山本芳樹/月岡弘一)や憧れの先輩クレア(曽世海司/石田知之)らに囲まれながら、順風満帆の学園生活がスタートするかに思われた。ところが、同級生のシビル(岩﨑大/久保優二)やモニカ(藤原啓児/松村泰一郎)のいやがらせや、学園の秘宝探しなど、さまざまな出来事に巻き込まれてしまう。

 Mysticチームは、在団歴20年を越える笠原をはじめ、曽世、岩﨑らベテラン勢が女子高生役を演じることで話題だ。デイジー役に決まった時の驚きようはすごかったという笠原は、「役者はどんな役がきても応えるのが仕事だし、喜々として演じるのが使命なので、逆に燃えるものはある」という。

 取材当日に稽古を見学したところ、180センチを超える笠原デイジーの登場に思わず「大きい……」とつぶやいてしまったが、弾けるような笑顔とテンポの良いセリフ回しで、太陽のように明るくイキイキと存在する笠原デイジーがとても魅力的だった。デイジーをいじめるシビル役の岩﨑の振り切った芝居や、優等生ながら家庭の事情を抱えるクレア役の曽世の気品あるたたずまいも目を引き、稽古場には何度も笑いが起こっていた。

 「年の瀬の上演なので、見ると元気が出る作品を届けたい」と上演を決めたという倉田は「演劇って何でもありで、どんな風にもできるそのフレキシブルさが素晴らしいし、そこにお客様の想像力が加わってガッチリとした作品になるだいご味を味わっていただきたい」と語った。

〈倉田淳さんプロフィル〉1975年、演劇集団「円」研究所に第一期として入所。芥川比呂志に師事し、81年まで演出助手を務めた。85年に故・河内喜一朗とともに劇団スタジオライフを結成し、ほとんどの作品の脚本と演出を手掛ける。
〈笠原浩夫さんプロフィル〉宮城県出身。劇団の作品を中心に客演やドラマ、Vシネマ、映画など幅広く活躍中。スタジオライフでの主な出演作品は、「PHANTOM~THE UNTOLD STORY」「GREAT EXPECTATIONS~大いなる遺産~」「トーマの心臓」「訪問者」「ヴェニスに死す」「ヴァンパイアレジェンド」「死の泉」「桜の園」「DRACULA」などがある。
〈曽世海司さんプロフィル〉宮城県出身。劇団の作品を中心に客演やドラマ、Vシネマ、映画など幅広く活躍中。スタジオライフでの主な出演作品は、「PHANTOM~THE UNTOLD STORY」「GREAT EXPECTATIONS~大いなる遺産~」「トーマの心臓」「訪問者」「ヴェニスに死す」「ヴァンパイアレジェンド」「死の泉」「桜の園」「DRACULA」などがある。
〈岩﨑大さんプロフィル〉東京都出身。劇団の作品を中心に客演、ドラマ、映画など幅広く活躍中。スタジオライフでの主な出演作品は、「トーマの心臓」「訪問者」「天守物語」「ヴェニスに死す」「ヴァンパイアレジェンド」「死の泉」「桜の園」「DRACULA」など。外部出演に「超歌劇 幕末Rock 黒船来航」「幕末異聞 人斬りの恋」などがある。
〈劇団スタジオライフ〉1985年結成。87年から、男優が女性役も演じるという手法をとり、現在は男優40人、女性演出家・倉田淳1人のみで構成されている演劇集団。(公式ホームページ
◆劇団スタジオライフ公演「DAISY PULLS IT OFF」
《東京公演》2016年12月1日(木)~18日(日) 新宿シアターサンモール⇒内容については公式ホームページなどでご確認ください。

年の瀬にシンプルな応援メッセージを

拡大倉田淳=伊藤華織撮影
――「DAISY PULLS IT OFF」は9年ぶり3回目の上演です。今、この作品を再演しようと思った理由は?

倉田:年の瀬の上演なので、見ると元気が出る作品を届けたいと思いました。デイジーがさまざまな苦難に打ち勝っていくストーリーは、シンプルな応援メッセージになるのではと思って上演を決めました。

――本作はベテランの役者さんによるMysticチームと、若手の役者さんによるShinyチームによる上演です。この2チームでの上演の意図を教えてください。

倉田:Shinyチームの若い子たちはシンプルに演じることをテーマにしています。Mysticチームはミスキャストチームとかいろんなことを言われているのですが(笑)、いろんな人生経験を経てきた役者たちをキャスティングしているので、味で勝負したいなと思っています。

――そのMysticチームに出演される笠原さん、曽世さん、岩﨑さん。作品の魅力と、9年ぶりにキャスティングされた感想をお聞かせください。

笠原:デイジー役を振っていただいたときの私の驚きようは、ものすごいものでございました(一同笑)。でも、役者はどんな役がきても応えるのが仕事ですし、喜々として演じるのが使命なので、逆に燃えるものはありますね。まさか女子高生を演じる日がくるとは……。

倉田:でも、杉村春子さんが「女の一生」で、80歳を超えても10代の少女を演じていらしたんですよね。役の核と、なぜ登場人物がこのセリフを口にしているかを全部理解しているからできること。今回のデイジーのMysticチームもそこに到達したいなと思っています。これは演劇だからできることで、映画では絶対に無理だと思います。

笠原:映画は無理ですね。たしかに(笑)。

倉田:演劇って何でもありで、どんな風にもできるそのフレキシブルさが素晴らしいし、そこにお客様の想像力が加わってガッチリとした作品になるだいご味を味わっていただきたいと思っています。

――今まではどちらかというと女性役の多い役者さんが演じられてきたデイジーを、今回Mysticチームでは男性役の多い笠原さんが演じることが話題です。

倉田:心情をしっかり伝えられる役者だと思うので、そこを期待してキャスティングしました。

笠原:がんばります!

――曽世さんは9年ぶりの上演について、どんな思いですか。

曽世:演劇ならではの試みだと思います。この布陣なので、何の迷いもてらいもなく、ただそこにいればいいという、役者として幸せな状況ですね。台本を読み直してみると、当時の状況は忘れているんですが、前回も演じたクレアの気持ちはスッスッと入ってきますね。時を経て、もう一度演じさせていただけるのはありがたいなと思います。

――岩﨑さんは、久々のスタジオライフ作品でもあります。

岩﨑:9年ぶりに「デイジー」を上演するんだと驚きましたが、前回に続いてシビルを演じることになり改めて「お願いします!」という気持ちです。スタジオライフ作品に出演するのは2年ぶりで、その間に自分の中でも変わった部分はあるのかなとも思います。ライフの作品は独特な部分もあり、外部ではスタジオライフとは違ったテイストの作品にも数多く出演したので、その融合がうまくできたらと思います。それと今回は、6人のゲスト(客演)の方を迎えているので、彼らの活力になって、引っ張っていければとも思っています。先陣を切って自分がバカをやって、ダメ出しをいっぱい受けているんですけれども(笑)、稽古場ではとりあえず出せるものを出してみて吟味して、周りの人たちも感化されて盛り上がっていきたいです。シビルは、そういうことができる役なので。

曽世:シビルはどんどん出していって、倉田さんに打ち込んでもらう役だものね。

岩﨑:はい。だから、今の自分のポジションが、キャラクターにも当てはまったのかなと思っています。

10年ぐらい女性役を演じているから、引き出しがある

拡大笠原浩夫=伊藤華織撮影
――本作は登場人物がほぼ女子高生の群像劇で、スタジオライフさんでは珍しい作品です。先ほどの稽古で、女子が集まった時ならではのキャッキャッとした雰囲気が伝わってきましたが、ほかの作品とは意識は違いますか?

岩﨑:大いに違いますね。女性役は本物の女性が演じたほうがもちろんきれいですが、男性が演じるからこそ面白く演じられる、僕らだからこその強みを全面に出せるかなと思います。「デイジー」は文化祭でお芝居を発表するという設定なので、みんなが一生懸命前のめりで芝居ができるところも面白いです。

曽世:男性が女性を演じることで、女性のお客様がどれだけ感情移入してくださるかが勝負なのかなと思います。さまざまなキャラクターがそろっているので、きっと誰かに共感できると思うのですが、それが男性の僕らのフィルターを通してより共感を引き出すことができればと思っています。それと、年月を経たからこそできるという意味では、キャリアを重ねると勇気が出ます。例えば20代の頃に女子高生役を演じたら、やっぱりどこか恥ずかしい部分があると思うんですよ。でも、この年齢までくると、宇宙人を演じるのとあまり変わらない気がします。恥ずかしいという気持ちはなくなって、役の心情だけを置いておける気がします。これは、スタジオライフが男性だけで30年間舞台を作ってきた強みなのかなと。余計なものを脱ぐことができるのがキャリアの強みなので、稽古がとても楽しいですね。

笠原:単純なところが魅力かなと思います。女子高生がたくさん出てくる時点で、「おお?」と興味を引くと思うんですよ。しかも、それを男が演じている。この幾重にもフィルターがかかっている状態が魅力なのかなと思いますね。クラシカルな青春の雰囲気を演じられるところもいいなと思います。

――デイジーはとくに真っすぐなキャラクターで、青春物語の王道ヒロインですよね。ただ、先ほど稽古を拝見して、笠原さんが演じられると、そこはかとなく面白さも漂っている気がしました。

笠原:本当ですか!(一同笑)

――可愛らしさの中にも、ユーモラスで開き直りそうな雰囲気があるなと。

笠原:勝手ににじみ出てきてしまうんですよね(笑)。

――この作品は数多くちりばめられている「女子あるある」にクスッとして共感します。みなさんは、女子っぽさを出すために何か参考にしていることはありますか? 稽古場では、岩﨑さんがミラーをさっと出して顔をチェックする様子がとても自然だなと思いました。

笠原:10年ぐらい女性役を演じているから、引き出しがあるんですよ。変わった引き出しもいっぱいあって。

岩﨑:たしかに入団してから女性役を何度も演じさせてもらっているので、そういう意味では年輪がそこに出ているかと思います。

――そんな岩﨑さんに、倉田さんは「ちょっとおじさんすぎる」と指摘されていましたね。

倉田:まずは女子高生をきちんと演じたうえで、ここぞというときに、おじさんぽさを出してもらうと意味が出ると思うんですよね。

――笠原さんは何か参考にされたものはありますか?

笠原:何かを参考にしたりはせずに台本を読んで作り上げたいと思っているのですが、先日テレビで高校時代の恋愛をテーマにしたバラエティー番組を見て、「このキュンとする気持ち、俺、今欲しているかもしれない!」と思いました。今まで一度も彼女がいたことがない男子学生がシミュレーションでデートをするという企画で、その雰囲気を自分は忘れているな、デイジーに使えるなと思いました。それから「女子学生 キュンとする」という検索ワードで調べて、これ甘酸っぱいわ~みたいなエピソードをチェックしましたね(一同笑)。

――曽世さんはいかがですか。

曽世:倉田さんは、女性役が初めての方には、必ず女を演じすぎないでって言うんですよ。女をやろうとしないでと僕らはたたき込まれているんですね。わざと演じようとしないことが、かえって女性のお客様に「あるある」と思ってもらえるのかなと思います。何もしない勇気ですね。

芝居って楽しいなという感覚を共有したい

拡大曽世海司=伊藤華織撮影
――デイジーはトリクシー、シビルはモニカ、クレアはアリスと、主要登場人物がみんな2人組で行動するところも女子ならではで、それぞれのコンビの関係性も作品の面白さにつながっていると思います。それぞれ相手の方とはどのようにコミュニケーションをとっていますか?

岩﨑:モニカを演じる藤原(啓児)さんからは「ついていくよ! だから、好きなようにやって!」と言われています。今回はコンビを組む藤原さんはもちろん、対決する笠原さんも曽世さんもみんな先輩方なので、全員に芝居を受けてもらえるという安心感がありますね。

曽世:名キャッチャーがいるから、伸び伸びできるよね。

岩﨑:そうですね。まだ稽古が序盤戦なので、藤原さんとまずはアイデアの出し合いっこをして膨らませて、密に作り上げていければと思います。

――笠原さん演じるデイジーの親友、トリクシーを演じられるのは山本芳樹さんです。おふたりは今夏「THREE MEN IN A BOAT+ワン」で見事な掛け合いを披露されて大変面白かったのですが、本作ではいかがでしょうか。

笠原:ずっと一緒に芝居をしている仲なので、今回の作品だからどうということはないですね。どういう風に役作りをしてくるかも、事前にはまったく聞いていないので。現場で見せ合うのが楽しいですね。

――曽世さんは客演の山根大弥さんとコンビを組まれますね。

曽世:私は客演の方とがっつりお芝居をすることが多いんですね。今回も大弥くんと組むのが新鮮だなと思いながらも、ちょっと気になるのは実際の年齢が離れていることですね。自分では全然気にしていないのですが、彼は僕をすごく先輩だと思っているんじゃないかなと。

――稽古場では、おふたりの間にすでに自然な空気が流れているように見えました。

曽世:もっとマブになりたいんですよ。

――客演の方と仲良くなるコツはあるんですか。

曽世:この業界には、現場の空気を作って盛り上げて、若手を引っ張るのが上手な先輩方が多いので、僕もそういう雰囲気を出せたらいいなと思っています。芝居って楽しいなという感覚を共有したいですね。

――それぞれの登場人物の魅力と、演じていて面白い部分を教えてください。

笠原:デイジーは真っすぐさが面白いですね。キッパリしているところが心地良いです。

――スタジオライフさんの作品で、ここまで素直で真っすぐなキャラクターは珍しいですよね。悩める主人公が多いので。

倉田:そうですね。

笠原:たしかに他に思い浮かばない。

曽世:デイジー自ら「無鉄砲」って言ってますからね。スタジオライフの作品で、私は「猪突猛進(ちょとつもうしん)型です」という主人公いないですよ(一同笑)。

笠原:すべてにおいて真っすぐ!と自分で言ってるからね(笑)。真っすぐでいろんな人にぶつかっていくデイジーは、たしかに僕の中でもあまり演じたことのないタイプの役なので、演じていて楽しいですね。でも、デリケートな子なんだなと思います。

倉田:感受性が豊かなんです。

岩﨑:シビルはデイジーに対して意地悪ですが、本人としては学園を守るという正義感にあふれているんですね。バカではないし、デイジーとは違うベクトルの真っすぐさがある。シビルにはデイジーをいじめているという意識はないんです。一生懸命なんですよ。

――でも、いじめられる方の笠原さんは、いじめられるとイラッとしますか?

笠原:しますね~。僕も初演でシビルを演じたので、気持ちがわかるんですよ。うん、そうなるよね、でもやっぱりシビルってバカだよねって(笑)。

――あれ、やっぱりそうなんですか(笑)。シビルはピュアすぎるゆえにわかっていない部分があるのかもしれませんね。曽世さんは女子高生のクレア、デイジーの母、教師ミス・グランヴィルの3役を演じられますね。

曽世:そうですね。3人の視点から物語を見ることができて楽しいです。クレアは作者の方にとてもやさしく描いていただいていて、みんなが憧れる生徒会長であり、スポーツキャプテンでありながらも、その裏にある弱さをきちんと表現されているんです。その2層構造は演じる方としてはやりがいがありますね。抱えている悩みを表に出せない方はいっぱいいらっしゃると思うので、そういう方の代弁を、役を通してできればなと思います。

若さをまねようとは考えていないんですけど……

拡大岩﨑大=伊藤華織撮影
――演出していて面白いと感じる部分を教えてください。

倉田:韓流ドラマのようなある種の典型の構図があって、言ってしまえば予定調和のシンプルの極みの台本だと思っています。だからこそ、その間を埋めていく作業は役者のキャラクターになっていくと思うので、そこに期待しています。典型的な人たちが典型から肉付けされて、基本は典型にあるんですけれども、そこからはみ出し立ち上がっていくところを見つけていけたらなと思っています。

――個々のキャラクターに、役者さん自身の個性も反映されているように思います。たとえば、曽世さんは運動神経の良さがクレアに生かされていたり……。

曽世:クレアはホッケーチームのキャプテンなんですけど、一切活躍していないと思うんですよね。彼女のせいで試合がピンチになっていることが多々あって、その「できそうだけどドジ」なところに僕は共感するんです。

――そうなんですね(笑)。岩﨑さんは前作ではデイジーとの体格差を生かして、デイジーをお姫様抱っこするシーンがありましたが、今回笠原さんにもされるんでしょうか。

岩﨑・笠原:あ~ほんとだ!

曽世:「OZ」で、逆バージョンはありましたね。

笠原:そうだ。僕が大を抱っこしてた。ギリギリのバランスで、「ごめんよ。今日こそ落とすかもしれない」と思いながら(笑)。

――稽古場で、お互いの芝居を見た感想をおしえてください。「こう作ってきたか!」みたいなことはありますか?

岩﨑:稽古は「探しっこ」ですよね。Wキャストの相手もよく見るし、自分が出ていないシーンは客観的に見られるので、よい部分はキープしておこうと思ったり。

曽世:いや、面白いですよね。みんなゲラゲラ笑って見てますよ。

――先ほどの稽古場でも、笑いがたくさん起こっていましたね。とくに笠原さんが登場すると、みなさん一観客のようにニコニコしてご覧になっていて。

曽世:やっぱり見たいですよ。この人がどんなデイジーを演じるんだろうって。

――劇団員の方も、笠原さんのデイジー役には興味津々なんですね。

曽世:キャスト表を見た時に、膝を打ちましたもん。なるほど!って。

――笠原さんは、最初デイジー役に決まったときに「ちょっと考えさせて!」と思ったけれど、藤原さんがモニカを演じると聞いて、それならやると言ったというエピソードを聞きました。

笠原:そうなんですよ。上には上がいるなと思って(笑)。でも、稽古が始まるのが本当に楽しみでしたね。

――若手チームは意識されますか?

曽世:今日たまたまなんですけれど、若手チームの芝居を大と見ていて、「若さってこういうことだね~」という話をしていました。若いエネルギーがハジけてて……。

岩﨑:僕たちは、なんかいろんなものがくっついちゃっているかもしれないねって。

笠原:ハハハハ(笑)。

岩﨑:その若さをまねようとは一切考えていないんですけど、すごいなぁって。こんな時期あったかなぁって。

曽世:憧憬(しょうけい)ですよね。なので、違いは絶対ありますよね。

笠原:今のところあまり意識はしていないんですけれど、走り出したら、若手チームからすごくいいものが出てくるんだろうなという危機感はありますね。僕たちにはかなわないようなものが。(若手チームでデイジーを演じる)宇佐見とかすごいものが出てくるんだろうなと、ちょっとハラハラしています。

――ベテランチームは、先ほど倉田さんがおっしゃっていた「味」で勝負されると思います。先ほど稽古を見させていただいたときにも、すでにいろいろと個性を出されたり、仕掛けたりする部分が見えたのですが。

笠原:まだまだですけどね。それぞれ個性を出してくるタイミングも違うので。あまり早く出しすぎてしまうと飽きてしまうこともあるし。温めておいて出す!みたいな。何を出すんだって話でもありますが(笑)。

同じ系統の役者? 中身は全然違うけれど

拡大左から笠原浩夫、曽世海司、岩﨑大=伊藤華織撮影

――お三方は長い間スタジオライフに在籍されています。お互いの役者としての魅力を教えてください。

笠原:曽世はとくに落語に力を入れていて……。

曽世:え? なんか落語の人みたいになってる……(一同笑)。

笠原:いや、話すことが本当に得意なので、うちのイベントでもかなりの頻度でMCをやってくれていますし。それと、自分で企画して実行する行動力がすごいし、ますます腕を上げているなと思います。

――先日は、おふたりのご出身の宮城でトークイベントをされていましたよね。

曽世:この人とふたりっきりでイベントをするのは初めてだったんですが、事前に打ち合わせをしなくともまったく問題なかったです。僕にとって、笠原さんは入団して真っ先にお世話になった方です。同郷出身ということもあったと思うんですけれど、みんなが僕を煙たがっていた中、この人だけは僕を可愛がってくれたんです。だから、いつもしっぽ振ってついていっていました。

――笠原さん、曽世さん、岩﨑さんは全員「トーマの心臓」でオスカーを演じられていますよね。初演でオスカーを演じた笠原さんには、曽世さんや岩﨑さんは役についてご相談されることも多かったのではと思います。

曽世:そうですね。かなり相談しました。「ドラキュラ」もそういえば同じ役を演じてますね。

笠原:本当だー。同じ系統の役者ってことか。

倉田:中身は全然違うけれどね。

――どんなところが違いますか?

倉田:うーん、いろいろ違う(笑)。

笠原:説明すると長いことになりますよ(笑)。

曽世:笠原さんが中心にいると、みんなが安心して楽しく演じられるんです。明るい役でも影のある役でも、真ん中にこの人がいてくれると間違いないんです。

笠原:いやいや、曽世さんにはかないませんよ。

曽世:持ち上げても何もないから……。昔から、パワフルで爆発力があるので、現場が元気になるんですよね。

岩﨑:力技でね。

笠原:ハハハハ(笑)。

曽世:劇団の雰囲気作りという意味では、この2人の存在は大きいですね。ピシッと決まるのは間違いないです。

笠原:大もね、客演先でもまれてきて、芝居のキレが上がっているような気がしますね。

――今年岩﨑さんは客演が続いていて、コスチュームものなど作品のバラエティーも豊かですよね。

笠原:また引き出しが増えたんじゃない?

岩﨑:それを、まだどう使っていいのかわからないですけどね。

――岩﨑さんから見た笠原さんと曽世さんはいかがですか?

岩﨑:僕は、オスカー先輩のおふたりの背中をずっと追いかけてきました。入団したての頃は、一緒に登場するシーンで自分だけうまく演じられなくて、深夜稽古につき合ってもらうこともありました。「ありがとうございます」という気持ちしかないです。お世話になりっぱなしです。

心の中をどう通っていくかにこだわっている

――お三方は外部出演も多いですが、よそを見たからこそわかるスタジオライフの魅力、倉田さんの演出の魅力とは? ある劇団員の方は、倉田さんの演出にもまれていると、よそでの演出が物足りなく感じることもあるというお話も伺いました。

笠原:僕はこの劇団が最初なので、これが僕にとって普通なんですね。なので、外に行ったときに、それは普通じゃないなと思うことはありますね。そこが物足りないと思う部分かもしれません。帰ってくると、言われるべきことを当然言われることに安心します。

曽世:倉田さんがこだわっている部分は容易にはクリアできないんですね。常に難題を与えられるのが面白いなと思います。倉田さんの演出がなければ、スタジオライフの世界観にはならないんです。倉田さんの演出はかなり抽象的なところから入るので、抽象をいかに具象に持っていくかが役者の仕事で、そういうスキルをこの劇団で身につけさせてもらっているのかなと思います。

岩﨑:倉田さんは、この役はこういう意図で書かれているという細かな台本分析から入って、役者それぞれがキャラクターをきちんと理解するまで帰さないです。でも、外部だと「とりあえずノリでいいよ!」みたいな演出もあるんですね。「演技を考えるのは役者だから」と突き放されることもあります。それぞれのやり方があると思うんですけれども、倉田さんはとくに役のイメージが明確だなと思います。

――倉田さんの頭の中では、キャラクターがかなりはっきりあるのですか。

倉田:キャラクターより心理ですね。キャラクターは結果出てくるものだと思うので。心の中をどう通っていくかにこだわっているかもしれません。

――今回は、外部から若手の役者さんが多く客演されていますが、演出をしていていかがですか?

倉田:最初は気を使おうとしていたんですけれど……。

曽世:そうなんですね。僕らは、思ったより速く門を開けてくださったなと思っていましたが。

倉田:いきなりはどうかな……と思っていたんですけど、やっぱり言ってしまいますね。彼らもスタジオライフの作品世界にどう入っていくか悩んでいるのかなと思いつつ、ついつい言ってしまいます。

曽世:僕らにとっては当たり前ですが、彼らにとっては戸惑うことも多いだろうなと思います。

――それでは、最後にメッセージをお願いします。

笠原:これから年の瀬を迎えるわけですが、本当に元気の出る芝居なので、シンプルに楽しんでいただけると思います。ただ楽しく終わる芝居ではなく、ちゃんと引っかかりもある作品なので、元気になりたい方にはぜひ劇場に来ていただきたいです。

曽世:オールメールの芝居は以前より増えましたが、スタジオライフにはそのオールメールの歴史があるんだなということを、この作品ではとくに感じます。僕たちはキャラクターの心情を伝わりやすくするための手段としてオールメールを使っているので、この作品ではそれがよく伝わるのではないかなと思います。演劇の楽しさを堪能していただければと思います。

岩﨑:何か心に残っていくのが舞台のだいご味だと思います。映画より高いチケット代を払って、何かを見たい、感じたいと思って来てくださるお客さんに、元気や、やさしい気持ちをもって帰っていただければと思います。

倉田:この作品を、初めてロンドンで見たのが1984年でした。1983年にローレンス・オリビエ賞の最優秀コメディー賞を受賞していて、その勢いのままウエストエンドで上演されていたんですね。当時私はとにかく演劇が見たいと思って、2カ月間の予定でひとりでロンドンに滞在していたんです。最初は珍しくてキャピキャピしていたんですけれど、だんだんくたびれてきて。寝る前にその日見た舞台の記録をつけて、朝起きてご飯食べに階下に降りて「グッドモーニング」と言われると、「あぁ、また一日英語だ……」と。だんだん気持ちがダウンしてきた時にこの作品を見たら、いつのまにか物語に巻き込まれていて、ものすごく元気になれたんです。

 気持ちがなえている時も、ひとつの劇場空間の中で追体験をすることで、明日に向かってがんばろうという気持ちになれる演劇の力ってすごいと思いました。そのパワーを今度は私たちがお客様にお渡ししたいと思います。年の瀬は幸せな人ばかりじゃないし、人は何かを抱えずに生きることはできないので、見に来ていただいたお客様が明るく元気になっていただけたら、舞台を作っている人間の冥利(みょうり)に尽きると思います。

<インタビューを終えて>
 笠原さん、曽世さん、岩﨑さん、そして演出の倉田さんをお迎えしての取材でしたが、役者のお三方がみなさん背が高く存在感があるので、この人たちが可憐(かれん)な女子高生役を……?とつい思ってしまいますが、いやはや稽古を拝見したら楽しいのなんの。大人の男性が女子高生を演じるギャップに笑わされつつ、次第に一生懸命で純粋な女子高生たちの奮闘に引き込まれてしまいました。稽古序盤でもこの完成度なので、本番はどんなに面白い舞台になるだろうとワクワクが止まりません。なお、前回公演のデイジーの髪形はツインテールでしたが、今回も踏襲されるかは未定とのこと。個人的には、笠原さんのツインテールをぜひ見てみたいです。

旧「スターファイル」ホームページはこちら

 


筆者

岩橋朝美

岩橋朝美(いわはし・あさみ) フリーエディター、フリーライター

映画関連のムック・書籍の編集に携わった後、女性向けWEBメディア・Eコマースサイトのディレクションを担当。現在はWEBを中心に、ファッション・美容・Eコマースなど多様なコンテンツの企画、編集、取材、執筆を行う。また、宝塚やミュージカルを中心とした舞台観劇歴を生かし、演劇関連の取材や執筆も行う。

岩橋朝美の新着記事

もっと見る