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海老蔵の眼力を封印?!『六本木歌舞伎』第二弾

演目『座頭市』、女優・寺島しのぶが歌舞伎の舞台に

真名子陽子 ライター、エディター


拡大『六本木歌舞伎』制作発表会見から=中村茉央撮影

 2017年2月に東京EXシアター六本木で『六本木歌舞伎』の第二弾が上演される。『六本木歌舞伎』は、2015年に演目『地球投五郎宇宙荒事』で初めて上演され、市川海老蔵、中村獅童をはじめとした歌舞伎役者が出演、脚本に宮藤官九郎、演出は歌舞伎初挑戦の映画監督、三池崇史が担当。連日満員の大盛況で幕を閉じた。

 その注目される第二弾の演目は『座頭市』。海老蔵の代名詞でもある眼力を封印したら面白いのでは?ということから『座頭市』に決定したという。脚本にリリー・フランキーを迎え、演出は引き続き三池が担当。この二人のタッグで、新解釈の『座頭市』が生まれる。さらに、歌舞伎の作品に女優・寺島しのぶがキャスティングされた。海老蔵とは22年ぶりの共演という寺島が、歌舞伎の舞台でどんな芝居を見せてくれるのか?そこにも注目したい。先日、その制作発表会見が行われ、三池、海老蔵、寺島、そして松竹株式会社・副社長兼演劇本部長の安孫子正が登壇。その会見の様子を紹介する。

勘三郎兄さんの話から今回の『座頭市』を

安孫子:昨年2月に『六本木歌舞伎』第1回目の公演をさせていただきました。新しい時代に合った、新しい歌舞伎を創っていこうというのが、この『六本木歌舞伎』の大きな精神で、このたび2017年2月に第2回目の公演を行うことになりました。三池さんにまた演出していただきますが、今回はリリー・フランキーさんに本を書いていただいて、『座頭市』の世界を海老蔵さん、そして寺島しのぶさんで公演をさせていただくことになりました。時の幕府の政策により、女性が舞台に出られないことで歌舞伎の女方というのが生まれ、今日まできていますが、400年前に生まれた「傾(かぶ)く精神」というものを問い詰めたときに、また新たな視点で、女性の俳優さんによって、一つの舞台を創っていくことも大事なことではないかと思います。今回も、「新しい歌舞伎の創造」ということで、三池先生の手腕で面白い舞台が創られることを期待しております。

三池:『地球投五郎宇宙荒事』で、生涯一本は歌舞伎をやってみたいという夢が叶いました。自分にとってもお客さまにとっても何か価値のあるお芝居を作ろうと、初めてのまったく分からない世界で、海老蔵さんに引っ張ってもらいながら創りあげていきました。その後、こういう展開になりまして、「生涯に2本だけ歌舞伎をやったことがあるぞ」と、自分の孫にも誇れるような舞台に仕上げていきたいと思います。内容については、いずれリリー・フランキーさんから情報が流れると思いますので、そちらをチェックしてください(会見時、脚本は未完成)。今、どういう展開になっていくのかスリリングでどきどきしていますが、それも含めてリリー・フランキーの世界だなと思っています。来年の舞台を楽しみにお待ちください。

拡大『六本木歌舞伎』に出演する市川海老蔵=中村茉央撮影

海老蔵:『六本木歌舞伎』は、中村獅童さんと「面白いことができないかな」という話から始まり、『地球投五郎宇宙荒事』を上演しました。この地球投五郎は、(故・中村)勘三郎兄さんが、「寶世(たかとし=海老蔵)、お前はいつか、地球を投げる荒事をしないとダメなんだよ。歌舞伎はもうダメになっちゃうところがあるからやってみろ」と、10年くらい前に言われたことを僕と獅童くんが覚えていて、それが現実となり、三池さんや宮藤官九郎さんのお力とともに第一回目が始まったという、とても感動的な思い出がございます。

 今回は、また勘三郎兄さんの話になってしまいますが、勝(新太郎)さんが『座頭市』をなさっていたことは皆さんご承知だと思いますが、ある大物のお笑い芸人さんと勘三郎兄さんが勝さんとお酒を飲んでいた時に、「いつかおれが“座頭二”をやりたい、“座頭三”をやりたい」という話をしたんだと、勘三郎兄さんが話されていたんです。その話を獅童くんとしていたら、「今度、『座頭市』をやったほうがいいんじゃないか」という話になって、「『座頭市』は前から興味のある作品だからやりたいね」と。ただ獅童くんは先に仕事が入っていたので、軽く断られてしまいました(笑)。

 そんなこんなで、今回も三池さんに、「孫に2回だけ……」とか言ってますけど、ずっとこのまま『六本木歌舞伎』をやっていただいて、歌舞伎の演出家であると孫に言ってもらえるように、今回も一生懸命、役者として勤めさせていただきたいと思います。そして何よりも、今回はしのぶさんと一緒に舞台に出られることがすごく楽しみですし、しのぶさんのご子息は海老蔵びいきらしくて、変なことはできないので(笑)、一生懸命舞台を勤めたいと思っています。

拡大『六本木歌舞伎』に出演する寺島しのぶ=中村茉央撮影
寺島:リリーさんとは以前、お仕事をご一緒していまして、リリーさんのイメージされている私で書く、という噂だけは今聞いていますが、何の役なのかもわかりません! 歌舞伎にまさか自分が出演するとは思っていなかったですし、この40ウン年生きてきて歌舞伎は初めてです。三池さんの新しい見解から、素敵な作品になることを祈っております。歌舞伎の役者さんは2~3日ですぐ台詞を覚えたりしますが、私は少なくとも10日くらいは欲しいなと思っていますので、リリーさんに早く書いてもらえるようにメールを打ちたいと思います。とにかくベストは尽くしたいですし、海老蔵さんは恥ずかしいくらい前から知っているので、懐かしい話もしながら和気藹々(あいあい)と、究極のエンターテインメントに仕上げられたらいいなと思っております。

なんか飢えてくる、「海老蔵がほしい……!」と

記者:三池さんに。今回、海老蔵さんと再タッグを組もうと決意された理由と、今の構想として固まっているプランがあれば、さわりだけでも教えてください。

拡大『六本木歌舞伎』を演出する三池崇史=中村茉央撮影
三池:一度、海老蔵さんとがっつり仕事をやると、半年くらいは拒絶反応が起きるのですが(笑)、その後なんか飢えてくるんですよね、「海老蔵がほしい……!」と。来年公開する僕の映画にも実は出演していただいていたり……まぁ、ファンなんです。一度稽古をしたとき、やっぱりすごいなと思いました。歌舞伎の稽古は僕らからしたら想像のつかないものすごいテンポでやっていて、その場で音も創って、それを生で演出している、それを見ていると非常に気持ちよくて。こんな人間は他にいないなという存在です。

 リリーさんの中では、色っぽいものにしたいという思いがあるそうです。「恋」というと甘いんですけど、悲恋の物語になっていくのではと思っています。もちろん立ち回りもあるのですが、アクションを見せることがテーマではないということは確かです。

記者:三池さんへ。眼力を封印する海老蔵さんをどのように演出を?

三池:脚本がまだなので、具体的にはまだわからないですね。でも、やっぱり自分は映画の人間なので、そこではできないことをやりたいです。一番僕から遠いのはやはり歌舞伎なので。歌舞伎の好きな方が見て、変化球ではあるけれどこれは歌舞伎だなというもの、歌舞伎の概念が広がるようなものができればいいなと思います。だから、映像を使ったり、奇をてらった演出というのは極力避けて、舞台の上で立っているのは役者、その役者を見るという、そういう舞台にしたいなということは、前回の作品から思っていることです。

夜中の2、3時に、飲み屋に入ってきた人が……

拡大市川海老蔵(右)と寺島しのぶ=中村茉央撮影
記者:海老蔵さんに。眼力が封印されますけど、その点どのようにお考えでしょうか。それから、眼力以外にどの力をアピールしたいですか?

海老蔵:目を開けるか開けないか……多分開けないと思うんです。(坂東)玉三郎の兄さんと舞台に出させてもらって一生懸命に舞台をやると、声がつぶれたりするんです。すると「声が出ないなりに芝居をしてごらんなさい、そうするとまた新しい世界が見えるわよ」と兄さんがおっしゃってくださって。それと一緒で、今まで目をつぶって芝居をしたことってないんです。ということは、一役者として目にイメージがある、けれどそれを封印した時に何が出てくるか、それは僕も発見するでしょうし、第三者が見たときに何か言ってくれるはずなんです。それを次のステップとして成長につなげたいですね。

 眼力以外に……「静けさ」ですね。京都で夜中の2、3時に、飲み屋に入ってきた人がいたんです。よく見たら、麦わら帽子にTシャツと短パンで。俺みたいなのが来たな、と思ったらリリー・フランキーさんだったんです。そしたら、「先天性だと思う? 後天性だと思う?」っていきなり……この『座頭市』の話です。「うわっ。何? いきなり会った瞬間?!」と思いながら、先天性か後天性かという話を1時間くらいして。その話の中で出たのが「静けさ」で、目に見えない世界だからこそ見える世界、それを表現できるように頑張りたいと思います。

 歌舞伎の舞台を見るということは、けっこう敷居が高い。けれど、脚本がリリー・フランキーで、演出が三池監督とくれば、「わからないかもしれないけれど、きっと、おもしろいはず!」と思ってしまった。そこに、女優・寺島しのぶだ。どんな『座頭市』が待っているのかワクワクする。故・中村勘三郎の遺志を引き継ぎ、挑戦し続ける海老蔵の役者魂を、ぜひ拝見したい。

◆公演情報◆
『六本木歌舞伎』/演目『座頭市』
2017年2月4日(土)~20日(月) 東京・EXシアター六本木
[スタッフ]
脚本:リリー・フランキー
演出:三池崇史
[出演]
市川海老蔵、寺島しのぶ ほか
公式ホームページ

筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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