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【公演評】月組『グランドホテル』

若き新トップスター珠城りょう、24年ぶりの名作でお披露目を飾る

さかせがわ猫丸


拡大月組『グランドホテル』公演から、フェリックス役の珠城りょう=岸隆子撮影
 月組公演、ザ・ミュージカル『グランドホテル』、モン・パリ誕生90周年レヴューロマン『カルーセル輪舞曲(ロンド)』が、1月1日、宝塚大劇場で初日を迎えました。2017年の宝塚歌劇は、24年ぶりとなる名作の再演と、月組新トップスター、珠城りょうの大劇場お披露目公演が重なり、ひときわ華やかな幕開けを迎えています。

 「男役10年」と言われる中、研9でトップスターに就任する珠城さんは、天海祐希さんに次ぐ歴代2位のスピード出世で、ひときわ注目を浴びることとなりました。昨年秋にはドラマシティ公演「アーサー王伝説」でプレお披露目を飾りましたが、2017年元旦、新年の始まりとともに、いよいよ珠城さんが本拠地・大劇場のセンターに立つ日がやってきました。

 挑戦するのは、1993年に月組で上演した『グランドホテル』。1989年、ブロードウェイでの初演でトニー賞を5部門受賞し、世界各地でも大ヒットした名作です。高級ホテルという空間の中で、登場人物の人生がいくつも交錯する群像劇に、初演とは主人公を変えてさらにロマンチックなアレンジを施し、新生月組にふさわしい新たな『グランドホテル』が誕生しました。

理想の男役体型を持つ珠城、最強のスーツ姿

 開演アナウンスは客席も登場人物の一員という心憎い設定で、私たちもホテルの喧騒の中へ自然と吸い込まれていきます。

 ここは1928年のベルリン、グランドホテル。回転ドアからスマートな従業員やセレブ客が次々登場するのは、ここが超一流であることの証。主な登場人物は、多額の借金を抱える青年貴族、旬を過ぎたプリマ・バレリーナと忠実な付き人、不治の病におかされた簿記係、ハリウッド・セレブに憧れるタイピスト、そして従業員たち。世界に名だたるグランドホテルには、様々な人生模様が渦巻いていた――。

 冒頭から重なりあうコーラスは重厚で、楽曲の美しさもブロードウェイ・ミュージカルならでは。せりも使わず、盆も回りませんが、舞台上に配置されたたくさんの椅子を、場面に応じて登場人物たちが並び替えながら雰囲気を作り上げるのが見ものです。このフォーメーションは2階から見た方が、より堪能できるかもしれません。

 珠城さん演じるフェリックス・フォン・ガイゲルン男爵は、ひときわ華やかに登場した若くて美しい紳士。この豪華ホテルに長期滞在する優雅な貴族……のはずが、その内情は宿泊費も滞納し、常に支配人のローナ(輝月ゆうま)や運転手(宇月颯)から借金の返済を迫られている貧乏貴族でした。しかし彼は悪びれることもなく、一獲千金を狙うなど常に楽観的。育ちの良さから悪党にもなりきれず、あまりにさわやかで憎めないという不思議な魅力を、愛嬌たっぷりに演じています。なにより珠城さんのスーツ姿は最強でしょう。思わずすがりつきたくなる頼もしい背中も健在で、「理想の男役体型、ここにあり」を再確認です。堂々とした貫録やオーラも文句なし。にじみでる若さも、貴族らしい純粋さに生かされていました。

年増女から無垢な少女へ劇的に変化する愛希

拡大月組『グランドホテル』公演から、フェリックス役の珠城りょう(下)とグルーシンスカヤ役の愛希れいか=岸隆子撮影

 トップ娘役の愛希れいかさんが演じるのは、最高級スイートルームに滞在するエリザヴェッタ・グルーシンスカヤ。かつては人気を誇ったプリマ・バレリーナでしたが、日に日に観客が少なくなっていくことに自信を無くし、自分のネックレスでみんなのギャラを支払ってでも踊りたくないと言いだします。おそらく40歳を超えているグルーシンスカヤは、老いの悲しさも拍車をかけ自暴自棄になっていましたが、フェリックスと出会ったことで、再び希望を取り戻します。

 その心情の変化を表す愛希さんの演技が実に素晴らしい。人生に絶望し投げやりになる姿は、年増の女性そのものにしか見えないのに、恋を知ったことでバレエへの情熱が蘇り、みるみるうちに無垢な少女のごとく輝き始める劇的な変化は圧巻の一言でした。

◆公演情報◆
月組公演
ザ・ミュージカル『グランドホテル』
モン・パリ誕生90周年レヴューロマン『カルーセル輪舞曲(ロンド)』
2017年1月1日(日)~1月30日(月) 宝塚大劇場
2017年2月21日(火)~3月26日(日) 東京宝塚劇場
[スタッフ]
『グランドホテル』
脚本:ルーサー・ディヴィス
作曲・作詞:ロバート・ライト、ジョージ・フォレスト
追加作曲・作詞:モーリー・イェストン
オリジナル演出・振付、特別監修:トミー・チューン
演出:岡田敬二、生田大和
翻訳:小田島雄志
『カルーセル輪舞曲(ロンド)』
作・演出:稲葉太地
公式ホームページ

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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