出版不況の最大要因「アマゾン」対応を間違えるな
2017年01月16日
2016年の出版界は、明るい話題がほとんどないままに暮れた。
2月に取次の準大手の太洋社が破産した。これで、大阪屋、栗田出版販売、太洋社の3社が数年の間に経営危機に陥り、大阪屋(現・大阪屋栗田)しか残らなかったことになる。その次の規模の中小取次も大きな話題にはならないが、いくつも姿を消している。最大手のトーハン、日販とて安泰ではない。
そして11月に、神保町にある信山社・岩波ブックセンターが86歳になる会長の死去の数週間後に破産した。
同店のホームページには「硬派出版社の新刊本・既刊本にこれだけ出会える書店は、他に例はない」とあり、「専門書の専門店」として出版業界と読書好きの間では知られていた。
岩波書店とは資本・経営的に関係がなくなっても、「岩波ブックセンター」の看板はそのままだったので、この破産をもって、「岩波文化の危機」としている論調もある。
それは大げさだと思うが、とはいえ、岩波書店の経営状況もよくはないし、主に人文書を出している「硬派出版社」全般が厳しい経営状況にあるのは間違いない。
だが、「出版不況」は、硬派・軟派、規模の大小、刊行物のジャンルを問わず、出版界全体の話でもある。
この「出版不況」論に対して「活字離れではない」「読者は減っていない」との反論があるが、それは全く的外れなわけではない。
ネットも含めれば、むしろ読者は増えているとの説もある。「本が書店で売れない」だけなのだ。
つまりは「書店不況」、「流通不況」である。
その最大要因は、アマゾンにある。つまり、「アマゾン不況」と呼んでもいい。
この「アマゾン不況」においては、書店・取次・出版社・著者の4者の利害は一致しない。さらに「読者」という第5者となると、もっと一致しない。
この状況下、「地味な人文書」に未来はあるのか。
アマゾンはいくつかの顔を持つ。
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