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渡辺えり×木野花×桑原裕子が情熱的に語る(下)

演出家3人が出演する「今しかない演劇」~オフィス3〇〇『鯨よ! 私の手に乗れ』

大原薫 演劇ライター


渡辺えり×木野花×桑原裕子が情熱的に語る(上)

拡大左から、桑原裕子、渡辺えり、木野花=岩村美佳撮影

妄想と現実と演劇の中を行き来して

――本や映画と比べると演劇は、他の人の評価を気にしないで自分だけの目線で見ることができますよね。

渡辺:実際、その日と次の日は芝居が違ったりする。劇評では評価が高いのに、見に行ったらつまらないこともよくあるじゃないですか。劇評家が見た日は面白かったのかもしれないけど。

木野:そうなのよ。若い頃はムラがある舞台をやっていたと思うの。以前は同じ舞台でも30点~100点というのがあった。ある時期から、演出としては最低でも合格点は出して、70点~100点の芝居を目指そうと思うようになった。

渡辺:劇団3〇〇も昔は、「初日と楽日はまったく違う作品を見るようだ」と言われていたときがあってね。

木野:それはえりが書くのが遅いからよ(笑)。

渡辺:今回はそういうことがないように頑張ってます。でもね、こうやって話を聞いていると木野さんは論理的に物事を考えて、分析する力があるなと思うんですよ。私は本を読んでいると字面を追ってるんだけど、自分で物語を考えちゃって、

木野:妄想が広がる。

桑原:「こうなってるのかな」というのと全然違う方向にいっちゃうんですね。

渡辺:「あの映画でこういうシーンあったよね」というと「そんなの、ないよ」と言われるの。実際に見直してみたらそんなシーンはなくて、私の妄想だった。

桑原:えりさんの妄想が勝ってるんですね(笑)。

拡大渡辺えり=岩村美佳撮影
――木野さんから見て今回の作品は?

木野:まだ三分の一しか書き上がっていない時に読んで、いい作品だなと思いました。えりの頭の中だけでわかっていて、後半が駆け足になってしまうともったいないと思って。そこを書き足すだけで変わってくるから、普段私は作品に口出ししないんですけど、今回はちょっと提案しました。

渡辺:木野さんにわかりにくいと言われて書き加えたのが、桑原さんの台詞なんです。これが作者の思い。自分の戯曲、劇作家としての思いを桑原さんに託すという重要な台詞がさっき書き上がったものですから。

桑原:すごくいい台詞です。

――演じ手としてはどうでしょうか。

木野:まだ最後まで通して演じていないので、私が演じる元演出家の藍原はどこまでが狂気でどこまでが正気になっているか、まだ整理ができていないんです。

渡辺:木野さんの役で難しいのは、普通の妄想じゃなくて、演劇を狂気ととらえているところなんですよ。本当に狂気に陥っていたら演出なんてできないんですけど、演劇イコール狂気として、妄想と現実と演劇の世界を行き来している人として書いているんです。

木野:藍原ってえりに似ている。妄想なのか演劇なのか。今やっているのが自分の頭の中のものなのか、実際に書かれた台本なのか混沌としながらやっているんだろうと思うんです。でも、自分ではそれで納得がいっているんだよね。

◆公演情報◆
オフィス3○○公演『鯨よ! 私の手に乗れ』
2017年1月18日(水)~2月5日(日) 東京・シアタートラム
[スタッフ]
作・演出・振付:渡辺えり
[出演]
木野花、銀粉蝶、久野綾希子、桑原裕子、土屋良太、広岡由里子、鷲尾真知子、渡辺えり
小出奈央、川口龍、佐藤友紀、町田達彦 ほか
公式ホームページ
〈渡辺 えりプロフィル〉
劇作家・演出家・女優。舞台芸術学院、青俳演出部を経て、1978 年より「劇団 3○○」を 20 年間主宰。82 年『ゲゲゲのげ ~逢魔が時に揺れるブランコ』で岸田國士戯曲賞を受賞。87年『瞼の女-まだ見ぬ海からの手紙-』には第22回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞し以後、数々の作品を生み出す。NHK朝の連続ドラマ小説『あまちゃん』や映画『Shall we ダンス?』他、CM・バラエティー番組などにも出演しマルチな活躍をみせている。四年前より開講している「渡辺流演劇塾」では、老若男女問わず幅広い年齢層に演劇を創造する楽しさを自ら教え、その育成に励むほか、今年は自身初演出のミュージカルも手がけた。
渡辺えりオフィシャルブログ
〈木野 花プロフィル〉
女優・演出家。1974年に東京演劇アンサンブル養成所時代の仲間5人と、女性だけの劇団「青い鳥」を結成。翌年に旗揚げ公演を行い、80年代の小劇場ブームの旗手的な存在になる。86年、同劇団を退団後も女優・演出家として活躍中。主な出演作に映画 『恋人たち』『娚の一生』、ドラマ『あまちゃん』『3年B組金八先生』、舞台『書く女』など。演出作に、グループる・ばる『八百屋のお告げ』月影番外地『どどめ雪』など。渡辺えり作品は、2003年・07年『りぼん』(初演・再演)、11年・12年『月にぬれた手』(初演・再演)に続き、今回が5度目の参加となる。
〈桑原 裕子プロフィル〉
KAKUTA主宰・作・演出・俳優・東宝芸能所属。阿佐ヶ谷スパイダース・葛河思潮社・双数姉妹・道学先生・ブラジル等人気劇団や白井晃演出『ペール・ギュント』などへ多数出演。脚本家としては、舞台・映像・ラジオ・ノベラ イズ小説・ゲームシナリオと様々な分野に脚本を提供。近年は山下達郎クリスマス・イブ(30th Anniversary Edition)初回限定盤特典『クリスマス・イブ』新録ショート・フィルムやドラマ『温泉マル秘大作戦』の脚本も手掛け、09年KAKUTA作品『甘い丘』再演で第64回文化庁芸術祭・芸術祭新人賞(脚本・演出)、14年KAKUTA 作品『痕跡(あとあと)』にて、第8回鶴屋南北戯曲賞を受賞。演出家としては、2011年~13年までブロードウェー・ミュージカル『ピーターパン』の潤色・作詞・演出を行う。
桑原裕子twitter

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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

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