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【公演評】ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』

新演出、新キャスト、新振付、新衣装、新装置、リスクを冒して作り上げた新たな物語

岩村美佳 フリーランスフォトグラファー、ライター


拡大『ロミオ&ジュリエット』公演から、左から馬場徹、古川雄大、平間壮一=田中亜紀撮影

 ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』が、赤坂ACTシアターで上演中だ(2月14日まで。大阪公演2月22日〜3月5日 梅田芸術劇場メインホール)。シェイクスピアによって書かれた不朽の名作『ロミオとジュリエット』が原作の、フランス発ロックミュージカル。過去に宝塚で4度、日本オリジナルバージョンが2度上演されており、上演される度に大ヒットとなるミュージカルだ。個人的にも好きな作品で、宝塚の初演以外はすべて、ほぼ全キャストを見ている。

 2017年版を上演するにあたり、これまでの演出をすべて担当している小池修一郎は、新演出を試みている。さらに、新キャスト、新振付、新衣装、新装置と、「新」が並んだ『ロミオ&ジュリエット』だ。だが、新しくなったとはいっても、物語の構成とセリフ・音楽はほぼ変わっていない。小池が2011年上演時から描きたかったという「戦争の結果廃墟となった都市で起きる物語」(公式パンフレットより)に立ち返って作られた作品はどう変わったのだろうか。

 舞台全体を包むシンプルな白い幕に、戦争の爆撃などのモノクロ映像が映し出され、黒いハットとトレンチコートに身を包んだ「死」のダンサーが空気を動かすように踊る場面からはじまる。記憶の中のこれまでの『ロミオ&ジュリエット』が脳内再生されそうになったが、白い幕が開いてそれは止まった。目の前に現れたのは今までよりもカラフルな世界観だったからだ。前回までの日本オリジナルバーションはモノトーンの印象が強く、今回のチラシもモノトーンだったので、意外な印象だった。グリーンとブルーを基調としたロックテイストのモンタギュー家と、ワインレッドと黒を基調とした華やかなキャピュレット家。そして、大公がシルバーグレー、神父がモノトーンと中立的な人々は色を持っていない。もっと荒(すさ)んだビジュアルになるだろうと想像していたので少々面食らったが、廃墟となった街にも再び芽が息吹き出し、生き物に血が通い、人々に愛が生まれつづけるということだろうか。

 作品全体を通して、一番印象が変わったのが「死」(大貫勇輔と宮尾俊太郎(Kバレエカンパニー)のダブルキャスト。私が見たのは大貫)。死のナンバーは、コンテンポラリーの小㞍健太による振り付けだ。さまざまな場面にさまざまな姿で存在しているが、背景に溶け込んでいて、ともするとその存在を忘れてしまう。人々の熱情に惹き付けられていると、気配無く忍び寄ってくる。ふと気づくと見ていた役の近くに死がいることに驚く。特にロミオが死の影を感じて歌うナンバーでは、ロミオにまとわりつくような振り付けで、振り払えない死の影への恐ろしさを感じた。これまでも演じるダンサーによって差はあったが、「死」は全編を通してもっと存在感が強かったと記憶している。

生命力が伝わる古川、正統派で愛される大野

拡大『ロミオ&ジュリエット』公演から、左から生田絵梨花(乃木坂46)、古川雄大=田中亜紀撮影
 メインキャストの若者たちはすべてがダブルキャスト。まだ全キャストを見ていないが、原稿を書いている時点で見ることが出来たキャストについて触れる。

 ロミオ役は、唯一の再登板となる古川雄大と、初挑戦の大野拓朗。古川は、前回見たときに、最初からガラス細工のように繊細で、脆くも崩れていく姿が痛々しく、見ているのが辛くなるようなロミオだった。4年の間にさまざまな経験を経た古川が新たなロミオをどう生きるのか楽しみに見た。特に違っていたのは悲劇が起こるまでの物語前半。未来を夢見て生きている強い生命力が伝わってきた。まだ見ぬ恋人への思いや、ジュリエットに出会ってから思い描く未来など、希望や欲が感じられ若者らしい輝きがある。バルコニーでジュリエットに「結婚しよう」という姿は、一生懸命で純粋で微笑ましく、はしゃぐ姿が可愛らしい。マーキューシオとティボルトの死を経てからの後半は、古川自身が持つ繊細さが前面に現れ、悲劇のラストに至る。懸命に生き、そして命を削っていくように全身全霊でロミオを生きている姿に惹き付けられる。技術面でも歌声が伸びやかに成長し聞き応えがある。

◆公演情報◆
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』
2017年1月15日(日)~2月14日(火) 東京・TBS赤坂ACTシアター
2017年2月22日(水)~3月5日(日) 大阪・梅田芸術劇場メインホール
[スタッフ]
原作:ウィリアム・シェイクスピア
作・音楽:ジェラール・プレスギュルヴィック
潤色・演出:小池修一郎(宝塚歌劇団)
[出演]
古川雄大/大野拓朗(Wキャスト)、生田絵梨花(乃木坂46)/木下晴香(Wキャスト)
馬場徹/矢崎広(Wキャスト)、平間壮一/小野賢章(Wキャスト)、渡辺大輔/広瀬友祐(Wキャスト)大貫勇輔/宮尾俊太郎(Kバレエカンパニー)(Wキャスト) ほか
公式ホームページ

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筆者

岩村美佳

岩村美佳(いわむら・みか) フリーランスフォトグラファー、ライター

ウェディング小物のディレクターをしていたときに、多くのデザイナーや職人たちの仕事に触れ、「自分も手に職をつけたい」と以前から好きだったカメラの勉強をはじめたことがきっかけで、フォトグラファーに。現在、演劇分野をメインにライターとしても活動している。

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