メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

萩尾望都×倉田淳×笠原浩夫インタビュー(上)

スタジオライフが萩尾原作の傑作漫画『エッグ・スタンド』を初舞台化

大原薫 演劇ライター


拡大左から、笠原浩夫、萩尾望都、倉田淳=宮川舞子撮影

 男優だけの劇団スタジオライフが萩尾望都原作の漫画『エッグ・スタンド』を初舞台化する。本作は第2次世界大戦中、ナチスドイツ占領下のパリを舞台に、少年ラウルと踊り子ルイーズ、レジスタンスの青年マルシャンを主軸として、色濃い人間ドラマが展開される。

 スタジオライフは1996年に萩尾の代表作である『トーマの心臓』を初めて舞台化して以来、『訪問者』『メッシュ』『マージナル』『11人いる!』『続・11人いる!-東の地平、西の永遠-』を取り上げてきた。脚本・演出の倉田淳と萩尾との新たなタッグに注目が集まる。

 萩尾は「漫画表現の革新と長年にわたる創作活動」という業績で2016年度朝日賞を受賞。また、40年ぶりとなる『ポーの一族』新作発表は、掲載誌が異例の重版となるなど大きな話題を呼んだ。

 脚本・演出の倉田と劇団の看板俳優でマルシャン役を演じる笠原浩夫(ダブルキャストで、笠原はRougeチームへ出演)、萩尾との鼎談では、お互いの信頼感をうかがわせる和やかなムードで話が進められた。萩尾から見た倉田演出とスタジオライフの魅力、萩尾の漫画と倉田の演出作品との共通点、新作『エッグ・スタンド』について、さらには40年ぶりの『ポーの一族』まで、大いに語り合った。

スタジオライフはその時代、その国に連れて行ってくれる

拡大『エッグ・スタンド』原作者の萩尾望都=宮川舞子撮影
――萩尾先生は今まで、ご自分の作品の舞台化以外にもスタジオライフの作品をご覧になっていらっしゃると思いますが、どういう印象を持っていますか?

萩尾:スタジオライフは本当に不思議な劇団。ひとえに倉田さんのムードが劇団全体を覆っているせいかもしれないけれど、どの作品をやってもその時代に、その国に連れて行ってくれるんですね。どうやって作品を取り巻く世界全体を作り上げるという特殊なことができるのか、倉田さんにご苦労を伺ったことがあるんですけど、「今はまだ新宿のガード下にいるような子たちだから、早くドイツに連れていかなきゃいけないの」とおっしゃった。そのとき「ああ、やっぱり(倉田さんが)役者を連れていかなきゃいけないんだ」と思って。見ているお客様もそうだけど、舞台の上の人たちを連れて行ってくれるというのが不思議。だから、不思議な劇団スタジオライフ(笑)。

――それはどうやって連れていくのですか?

倉田:まず、自分の思い込みを激しく持つことですね(笑)。

萩尾:まず脳内なんですね(笑)。

倉田:はい。そうすると、きれいでない人たちが目障りになってくる。立ち姿が美しく、きちんとなるように軌道修正をうるさくお願いします。『トーマの心臓』だったらドイツのシュロッターベッツ・ギムナジウムに行かないといけないから、姿勢がきれいでないのは絶対いやですし、言葉をきちんと話してくれないとその世界の入り口に入れない。姿形ももちろんですが、言葉が世界に連れていってくれるというのが大きいと思うんです。シュロッターベッツの子たちが話しているのだから、きちんとした言葉を話すようにお願いしていますね。

萩尾:きれいでないのが目障りというのは、お作法の先生みたいですね。

笠原:ハハハ。

萩尾:でも素晴らしいと思います。前に、『訪問者』で主人公をいじめる不良役をなさっていた澤(圭一)さんとお話したとき、「美しい不良をやりました」と挨拶されて(笑)。「それはどういう意味ですか」と聞いたら「僕が不良をやったら、倉田さんが“美しくない、美しくない、美しくないわ”と言ったので、美しい不良になりました」と言ってたんです。それくらい美意識には非常にこだわっていらっしゃるんですね。

爽やかで初々しいものが好きだから、一致するのかな

拡大『エッグ・スタンド』脚本・演出の倉田淳=宮川舞子撮影
――笠原さんは、こだわりのある倉田さんの演出を長年受けていらっしゃいます。

笠原:はい、鍛えられました。確かに客演をしたときに、今倉田さんが言ったような部分を要求する演出家はあまりいないかなと。現代的な要素を要求する人が多いと思うけど、倉田さんはクラシカルな部分を要求するんです。

倉田:そうですね。ライフはそういう題材の作品を上演しているから。

笠原:耽美的な作品を取り上げることが多いからということもあるかもしれませんけど、『トーマの心臓』をやる以前からそうなのかなと思いますね。以前の(『TAMAGOYAKI』などの)ワープものの作品の中でも言葉に対する倉田さんの要求は結構あったと思い出されます。それが自分にはすごくプラスになっているなと思いますね。「なんでそんなに姿勢がいいの?」と言われることもありますし。

倉田:客演すると「姿勢がよすぎるから、少し猫背になってください」と言われるそうなんです。

笠原:立ち止まったときに「足をもっと開いていいから」とか。あ、これがスタジオライフのカラーになってるのかなと感じるときはありますね。

◆公演情報◆
スタジオライフ『エッグ・スタンド』
2017年3月1日(水)~20日(月・祝) 東京・シアターサンモール
2017年3月24日(金)~25日(土) 大阪・ABCホール
『OSAKA SPECIAL EVENT』
2017年3月26日(日)大阪・ABCホール
[スタッフ]
原作:萩尾望都(『エッグ・スタンド』小学館文庫『訪問者』収録)
脚本・演出:倉田淳
[出演]
ラウル:松本慎也/山本芳樹(Wキャスト)
ルイーズ:曽世海司/久保優二(Wキャスト)
マルシャン:岩﨑大/笠原浩夫(Wキャスト)
船戸慎士、奥田努、仲原裕之、宇佐見輝、澤井俊輝、若林健吾、田中俊裕、千葉健玖、江口翔平、牛島祥太、吉成奨人、藤原啓児
※チケットは各プレイガイドにて発売中
公式ホームページ
〈萩尾望都プロフィル〉
福岡県生まれ。代表作は『トーマの心臓』『11人いる』『ポーの一族』『残酷な神が支配する』『イグアナの娘』『なのはな』『王妃マルゴ』など。作品のジャンルはSF・ファンタジー、ミステリー、ラブコメディ、バレエもの、心理サスペンスものなど幅広い分野にわたり、「少女漫画の神様」とも評されている。小学館漫画賞、星雲賞コミック部門、手塚治虫文化賞優秀賞を受賞するなど、数々の受賞歴があるほか、2012年には少女漫画家では初となる紫綬褒章を受章、2017年には朝日賞を受賞している。
 〈倉田淳プロフィル〉
1975年、演劇集団「円」研究所に第一期として入所。芥川比呂志に師事し、81年まで演出助手を務めた。85年に故・河内喜一朗とともに劇団スタジオライフを結成し、ほとんどの作品の脚本と演出を手掛ける。
〈笠原浩夫プロフィル〉
宮城県出身。劇団の作品を中心に客演やドラマ、Vシネマ、映画など幅広く活躍中。スタジオライフでの主な出演作品は、『PHANTOM~THE UNTOLD STORY』『GREAT EXPECTATIONS~大いなる遺産~』『トーマの心臓』『訪問者』『ヴェニスに死す』『ヴァンパイアレジェンド』『死の泉』『桜の園』『DRACULA』などがある。

  ・・・続きを読む
(残り:約974文字/本文:約3848文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
デモクラシーやJournalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

大原薫の新着記事

もっと見る