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中川晃教、第24回読売演劇大賞最優秀男優賞受賞

『ジャージー・ボーイズ』は30代の代表作になった

真名子陽子 ライター、エディター


拡大読売演劇大賞 最優秀男優賞を受賞した中川晃教=岩村美佳撮影

 シンガー・ソングライターであり俳優の中川晃教が、第24回読売演劇大賞 最優秀男優賞を受賞した。2016年7月に上演されたミュージカル『ジャージー・ボーイズ』で演じたフランキー・ヴァリ役の演技によるもの。『ジャージー・ボーイズ』は、60年代に『君の瞳に恋してる』や『シェリー』『恋はヤセがまん』など、数多くのヒット曲を生みだしたフランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズの栄光と挫折、そして再生の物語を描いたミュージカルで、中川は「天使の歌声」と称されるフランキー・ヴァリ役を演じた。その最優秀男優賞受賞の取材会が行われ、作品への思いや今後について語った。

ただやりたいという気持ちひとつで始まった

拡大読売演劇大賞 最優秀男優賞を受賞した中川晃教=岩村美佳撮影
■中川晃教あいさつ

 作品と自分との出会いからスタートし、そこで出会った共演者や演出家と共に作品を作っていきます。その過程の中で、ひとつ実感していることがあります。たくさんの方に劇場へ足を運んでいただいて、その作品の魅力を感じていただいて、作品が盛り上がっていく……。また見に行きたいとたくさんのお客さまに思っていただくためには、メディアのみなさまに、この作品の魅力をたくさんの方へ届けていただき、盛り上げていただいて、それが結果として結びつくんだなということを実感しています。この作品は、特にメディアのみなさまに盛り上げていただいたことを実感しました。その結果、頂いた賞、そして評価だと思っています。感謝の気持ちを込めて、そして、今日もたくさん集まっていただいて、本当にありがとうございます。

■記者との質疑応答

記者:たくさんお祝いの言葉をいただいたと思いますが、特に印象に残った言葉は?

中川:ある制作会社のプロデューサーの方から、「中川さんが出ている作品が受賞したことを、中川さんを知る人みんなが喜んでいる」というメッセージをいただいて、とても心に響きました。今回、この作品に関わったすべての方との出会いに感謝すると同時に、今まで出会ったすべての方々へ感謝することができ、ふと腑に落ちました。その気持ちを持たせてくれたメッセージでした。

記者:演じたフランキー・ヴァリのあの高い声について、本国のプロデューサーのOKをもらうまでの経緯などを教えてください。

中川:ファルセットより強い音を用いることで、フランキー・ヴァリという役は存在すると感じました。音楽はこの作品の主役です。シンガー・ソングライターとしてデビューしていますので、音楽の無限大の可能性、なんでも表現できることを実感しています。この作品のこの役に出会ったときに、これはいけるのではと思えたんです。しかし、この作品はコンサートではなくミュージカルで、とてもクオリティーの高い作品だと知った時に、どうすればフランキー・ヴァリという役に自分自身がなれるかを真剣に考えました。今となってはよかったなと思うのですが、最初、まさか本国にいるボブ・ゴーディオさんの許可を得なければやれない役とは知らず、ただやりたいという気持ちひとつで始まったんです。

 いざフタを開けてみたら、本国に3曲のデモテープと映像を送らなければならないということでした。その3曲を送るために、楊淑美先生のところへ学びに行きました。具体的に本国のボブさんたちは、ファルセットより強い発声、ファルセット、地声、それぞれを1曲の中で使い分けることができるか、コントロールできるかということをおそらく知りたいだろうと。そして、3曲の歌を送ったら今度は6曲歌ってくれと言われました。どういう意味なんだろうと、試されてるなと火がついて、テクニックを用いて歌うことができるということを証明するためにさらにレッスンをしまして、その結果OKをもらいました。

 デビューして15年目にこの作品に出会ったのですが、最初に出会ったミュージカル作品は『モーツァルト!』でした。すべてが真っさらで、ただ無我夢中で役にぶつかっていきました。その時に頂いたのが読売演劇大賞優秀男優賞と杉村春子賞でした。その時は、その賞の価値や評価を自分の中で実感できていなかったのですが、そこからミュージカルをやらせていただいて、1作1作出会うごとにその作品に向かって真剣に自分が取り組むようになっていった、その時間はとても大きな経験でした。シンガー・ソングライターだけでなく本物のエンターテイナーとして、そこにいるのは中川晃教なんだけれども中川晃教ではなく、その作品の中で生きているという芸を極めていきたい、エンターテイナーとして本物になっていきたいと、1作1作向き合ってきたことが、今回の賞を頂いたことでそれでよかったんだなと思えて、とてもうれしかったです。

自分の知らない声を知った時の感動が大きかった

拡大読売演劇大賞 最優秀男優賞を受賞した中川晃教=岩村美佳撮影

記者:41公演をシングルキャストで乗り切れた理由はなんでしょう?

中川:初めての発声、初めての声を用いてやり遂げないといけない責任を感じていました。自分の声は自分が一番よく知っていると思うのですが、今回、自分の知らない声を知った時の感動がとにかく大きかったです。ただその声を保ちつつ、さらに進化させながら公演をやり遂げられるかというと、その経験は自分の中になかったので、そこが一番不安でした。1カ月の公演中、休演日や1日1公演の後にボイスレッスンに通ったんです。それは初めてのことでした。休みをとることが重要だと思っていましたが、舞台に立ち続けるためには、最高のパフォーマンスをするためには、声を含めた身体のメンテナンスをしないと、次の日に最高のパフォーマンスができないと実感することが多かったんです。ただ、声を使ったあとにボイストレーニングへ行くことが果たしてプラスになるのか、そこは不安でしたが、でも行きました。そうしたら、声帯がトリートメントされて、もっと声が良くでるようになったんです。ボイストレーニングへ行くことで、頭からその楽曲をどういうふうに歌うか、どういうふうに声帯を使うかを毎回意識して。でも本番前にそれらすべてを忘れて、その役を生きる。そうすればいいんだなと思えた時に41公演乗り切れるかも、むしろ楽しいかもと思えました。

記者:公演を終えて俳優として得たものはなんでしょう? そして、再演に向けてひと言お願いします。

中川:得たものはとても大きかったです。いろんな作品や役との出会いの中で得てきたものが、自分の中に小さくても確実な自信となっていて、でもその自信を持ってしても毎回その出会いがこわかったりします。これでいいんだろうかと思いながら挑んでいく日々の中、この作品に挑みました。『モーツァルト!』に出会ったのが19歳の時で、運命を感じた役で代表作と言えると思います。30代に入って35歳からはまた新たな世界に出ていきたいという目標を持ちながらやらせていただいていますが、その中でなにかひとつ30代の代表作ができたらいいなという思いの中フランキー・ヴァリという役に出会い、そのとき、この作品は僕にとって30代の代表作になるかもしれないと感じました。周りからアッキーの声で聴きたいという情熱も受けてこの作品と出会っています。出会ってきた人達の思いと僕自身の思いとが重なって、この作品と出会った。自分の中で30代の代表作と出会えたと思えた瞬間でした。

 超えないといけない壁は高かったけれど、どこかで超えられるのでないかという思いもありました。歌を通してお客さまの心をつかみ、そして感動を届ける。なんてすばらしい仕事をさせていただいているんだろうと思うんです。その音楽、歌はこの作品の最大の見どころであり、その歌を歌い続けること、歌い続ける自分を持ち続けること、そして人に感動を与えることができる仕事につけて幸せだなと思える自分……役者だけではできない気づきをこの作品を経験して感じました。

 再演については、千秋楽の日に再演が決まったことを伝えた時の客席の盛り上がり、雄たけびみたいな声を覚えていて、作品はお客さまに育てられるんだなと感じました。初演では初めて使う声だったので、再演では精度をより高めていける、もっともっと多くの方に観ていただくことができると思うと、やっぱりうれしいです。

音楽を作ることが一番の表現方法、ミュージカルを作りたい

拡大読売演劇大賞 最優秀男優賞を受賞した中川晃教=岩村美佳撮影

記者:35歳から描く新しい世界はどんな世界なんでしょうか?

中川:モットーは「誰も歩いていない道を歩く」です。音楽をやっているときは孤独で、とことん追いつめられるし、追い込んでいくし。でも、ミュージカルはカンパニーだから、みんなで作っていくし、苦労も一緒に乗り越えて、その過程がその作品に生きていきます。シンガー・ソングライターという軸があるから、ミュージカルの世界がすごいと思えるんです。新しい世界というのは、自分がやってきたことを土台にするけれど、自分が踏み入れたことのない世界に呼ばれた感覚です。それに恐れることなく、自分にないものを求められたら、むしろそれは自分に必要なものなんだと思って挑んでいきたいですし、挑み続けたい。そして出会いを育んで大切にして、大切だと思う気持ちでやり続けていくことが、新しい世界に向かっていくことだと思っています。

 音楽でデビューした自分にとってミュージカルは新しい世界でした。でも、音楽という意味ではどちらも同じなんですね。ミュージカルをやってきてその次に見ている世界は、音楽を作ることが自分の一番の表現方法だと思っているので、ミュージカルを作りたいです。今、『フランケンシュタイン』を上演していますが、軽く嫉妬します(笑)。作曲家が若いんです! 30代であれだけの壮大な音楽を作るんですよね。もちろん、日本にも才能や場があります。オリジナルミュージカルを生み出していく時代がくると思っています。僕だけじゃなく、ミュージカルシーンでがんばっている人たちみんなの力がプラスになって、その時代が近づいているような気がしています。

 そして、それを待ってくれている人、応援してくれる人がいる。そんな人達が増えてくると、夢ではなく現実にしなきゃいけない。現実にするために、どうすればミュージカルを作られるんだろうと考えます。お仕事として頂くミュージカルは輸入されたミュージカルが多いけれど、1カ月2カ月とさせていただく中で、ミュージカルの作り方を知ることができるんですよね。たくさんミュージカルをさせていただくと、役に向かうだけではなく、こういう作り方もあるんだと感じます。いろんなミュージカルと出会っていく中でより新しい世界へ……それはやっぱり日本のミュージカルシーンがいよいよ次のステージに向かうときではないかと思っています。そしてそこへ向かうためには、牽引してきた大先輩たちの土台なくして、今の僕たちの経験はないだろうということを噛み締め、新しい世代が思い描くエンターテインメントミュージカルをやりたいです。誰もが恋をするような、そして日本から世界へ行っていいんじゃないかと思ってもらえるようなミュージカルを作られるように、がんばっていきたいです。夢は大きいです。やらなきゃいけないことがいっぱいあります。(以上)

 会見で言っていた、「中川晃教なんだけれども中川晃教ではなく、その作品の中で生きているという芸を極めていきたい」。これをエンターテイナーとして確実に体現しているなと思った。舞台に立っているのは中川晃教なんだけど、最大最強の武器であるあの声を持って舞台に立つ中川晃教は、フランキー・ヴァリでありビクター・フランケンシュタインだった。その存在感は唯一無二だなあと、心地よくしみてくる歌声を聞きながら感じたことを思い出した。臆することなく夢を語った中川晃教が作る「誰もが恋をするようなミュージカル」を早く観てみたい。

〈中川晃教プロフィル〉
1982年11月5日生まれ、宮城県仙台市出身。2001年8月1日、自身が作詞作曲をした『I WILL GET YOUR KISS』でデビュー。同曲にて第34回日本有線大賞新人賞を受賞。翌年、ミュージカル『モーツァルト!』のタイトルロールを務め、第57回文化庁芸術祭演劇部門新人賞、第10回読売演劇大賞優秀男優賞、杉村春子賞を受賞。以後、音楽活動と並行して数々のミュージカルの主演を務める。近年の主な出演作品として『SONG WRITERS』『抜目のない未亡人』『グランドホテル』『ジャージー・ボーイズ』『フランケンシュタイン』など。また、出演のみならず楽曲提供という形でも舞台に携わっている作品も多数。11月にはNHK大河ファンタジー『精霊の守り人 最終章』ラダール役で出演予定。
◆2017年の予定◆
3月14日(火) 『中川晃教 Symphonic Night With Love』(東京)
4月~5月 ミュージカル『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』
7月~8月 ミュージカル『ビューティフル』
11月12日(日) 『中川晃教シンフォニックコンサート』(大阪)
中川晃教公式ホームページ

筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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