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「ブラック国家」で生じた清水富美加騒動

芸能ゴシップとして矮小化される社会問題

松谷創一郎 ライター、リサーチャー

清水富美加、「幸福の科学」と所属事務所「レプロエンタテインメント」の対立を一面で報じる日刊スポーツ(2017年2月13日付)拡大清水富美加さん、「幸福の科学」と所属事務所「レプロエンタテインメント」の対立を一面で報じる「日刊スポーツ」(2017年2月13日付)

また起きた揉め事

 「もう歌手の仕事は、しなくてもいいと思うんですよね」
 「本当は、水着グラビアはやりたくない」
 「もっとドラマや映画の仕事がしたいのに、オーディションを受けさせてくれない」

 これは、10年以上前に筆者がインタビューしたあるアイドルの発言だ。先日上梓した『SMAPはなぜ解散したのか』のエピローグ部分に登場する「Aさん」である。

 Aさんがこの発言をしたとき、マネージャーはインタビューをしていた一室から外に出ていた。本来はありえないことだが、そのことからもわかるようにAさんと所属プロダクションの関係は冷え切っていた。

 将来を嘱望されていた彼女がこうした本音を吐露したのは、初対面のライターを信頼したからではない。身近なところに愚痴を吐き出す相手がいなかったからだ。地方出身で、内向的で、かつ事務所もケアできていない彼女は、芸能界に疲れ切っていた。

 結局、彼女は大成しなかった。現在もまだ芸能界にいるが、所属プロダクションのホームページを見ても、この5、6年はほとんど仕事をしている気配はない。

 突如生じた女優・清水富美加の騒動で思い出したのは、このAさんのことだった――。

 先週末、幸福の科学出版から「千眼美子」名義で『全部、言っちゃうね。――本名・清水富美加、今日、出家しまする。』が出版された。所属プロダクション・レプロエンタテインメントに不満を持った清水が、幸福の科学の信者として出家し、暴露本を出したのである。現在は、双方の弁護士が話し合いをしている段階にあるようだ。

 この騒動のポイントは、おもにふたつある。

 ひとつが、また芸能人と所属プロダクションとの間で揉め事が起きたという点。昨年(2016年)のSMAP騒動と能年玲奈(のん)の民放局締め出しは、いまだに記憶に新しい。またか、という感じだ。

 もうひとつは、そこに(新)宗教団体が絡んできたことだ。しかもそれは、かねてその教義が問題視され、近年は教団の内紛や政治活動によっても注目されていた幸福の科学だった。これには虚を突かれた。

 この騒動がややこしいのは、このふたつの点にそれぞれ問題があるからだ。しかし、この両者をともに語りうることができるひとはなかなかいない。芸能界と幸福の科学の両者に精通しているひとはおそらくいないのではないか。筆者も芸能界についての知識はあっても、幸福の科学については明るくない。よって、本稿でも幸福の科学の問題についてはさほど踏み込まず、芸能界の問題に要点を絞る。幸福の科学については、宗教学者などの見解を待つ必要があるだろう。

重要情報を完全スルーするメディア

 今回の騒動では、相変わらずテレビとスポーツ新聞で奇妙な現象が見られる。具体的には、清水の所属プロダクションであるレプロエンタテインメントについての言及だ。

 レプロは、長谷川京子や新垣結衣、マギーなどが所属する中堅の芸能プロダクションだ。1991年に設立されたので、特別歴史が長い事務所ではない。その特徴は、ファッションモデルを起点とし、女優に活動の幅を広げるタレントが多いことだ。イメージとしては、上戸彩などが所属するオスカープロモーションと似たタイプと言えるだろうか。

 今回の報道では、レプロがどのような芸能プロダクションかということにも、それなりに触れられてはいる。しかし、そこではある重要な情報が完全にスルーされている。それが、レプロには能年玲奈(のん)も所属していたことだ。 ・・・続きを読む
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筆者

松谷創一郎

松谷創一郎(まつたに・そういちろう) ライター、リサーチャー

ライター、リサーチャー。1974年生まれ。商業誌から社会学論文、企業PR誌まで幅広く執筆し、国内外各種企業のマーケティングリサーチも手がける。得意分野は、映画やマンガ、ファッションなどカルチャー全般、流行や社会現象分析、社会調査、映画やマンガ、テレビなどコンテンツビジネス業界について。著書に『SMAPはなぜ解散したのか』(SB新書)、『ギャルと不思議ちゃん論――女の子たちの三十年戦争』(原書房)。共著 に『どこか〈問題化〉される若者たち』(羽淵一代編、恒星社厚生閣)、『文化社会学の視座――のめりこむメディア文化とそこにある日常の文化』(南田勝也、辻泉編、ミネルヴァ書房)等。

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