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ミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』取材会

サザーランド氏絶賛の北翔海莉、「男から女に戻る不器用さで役に入り込めるかな」

さかせがわ猫丸


拡大ミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』に出演する北翔海莉(左)と演出のトム・サザーランド=岸隆子撮影

 今秋に上演するミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』の取材会が、2月27日、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで行われました。24日に東京で行われた制作発表会見では主要キャストが勢ぞろいしましたが、大阪の取材会では、これが宝塚退団後初のミュージカルとなる主演の元星組トップスター北翔海莉さんと、演出のトム・サザーランドさんが、公演についての意気込みをじっくりと語っています。

 『パジャマゲーム』は、7セント半の賃上げをめぐるパジャマ工場の労働者と雇用者の闘いと、組合員のリーダー、ベイブ(北翔)と工場長のシド(新納慎也)の恋をロマンチックに描いたミュージカル・コメディ。ボブ・フォッシーが初めて振り付けを担当し、1954年の初演でトニー賞を受賞。その後、ブロードウェイや英国ウエストエンドで何度も上演された名作です。

 この取材会の前日には、サザーランド氏がイギリスの演劇賞「the Offies」をトリプル受賞したという喜びのニュースも飛び込み、より華やかな取材会となりました。

 東京の制作発表会見で披露された楽曲のビデオ上映後、お二人の挨拶から会見は始まります。

トム・サザーランド、ボブ・フォッシーへのオマージュ

拡大ミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』に出演する北翔海莉(左)と演出のトム・サザーランド=岸隆子撮影

 『タイタニック』『グランドホテル』に続き、私が日本で手がける3作目の『パジャマゲーム』は、これまでとは趣向が異なるミュージカル・コメディです。1954年の初演以来、ドリス・デイ主演と革新的なストーリーや音楽が話題を呼び、なによりボブ・フォッシーが初めて振り付けを手がけたことで有名な作品となりました。中でもスチームヒートは、みなさんもよくご存じではないでしょうか。

 今回、フォッシーの代わりを務めるのは、ニック・ウィンストン。英国でも5本の指に入る振付家で、『フォッシー』(ロンドン公演)のオリジナルキャストとして、スチームヒートを踊った1人でもあります。そんな彼とともにこの作品を作り上げることも嬉しくてなりません。フォッシーなくして『パジャマゲーム』は語れないし、これはフォッシーへのオマージュでもあるからです。

 また、『タイタニック』に出演した方たちと再びご一緒できること、そして北翔海莉さんと仕事ができることがとても光栄で、夢のようです。宝塚歌劇は日本に来るたび観劇しますが、実は昨日も観に行きました。

 日本はいつも私をあたたかい空気で迎えてくれます。ほかにもプロジェクトの進行を考えていますし、これからも日本と英国のかけ橋となりたいと考えています。9月にお会いできることを楽しみにしています。

北翔海莉、底抜けに明るい役者たちの力で盛り上げたい

拡大ミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』に出演する北翔海莉(左)と演出のトム・サザーランド=岸隆子撮影
 昨年の11月20日に宝塚を卒業して、『パジャマゲーム』が女優として初めての舞台になります。このお話を伺った時、ミュージカルファンなら誰もが憧れる作品で、トム・サザーランドさんの演出という組み合わせのすごさにまず驚きました。この作品に自分が参加できることへの喜びとワクワクで、早くお稽古が始まらないかと今から待ち遠しいくらいです。

 仕事に命をかけるベイブは、工場の仲間を守る責任感や正義感にあふれ、男性と対等に戦いながらも、母のような温かさを持つ女性です。対立するシドと恋に落ちていくのですが、恋愛に対する不器用さは、男役を21年間やっていた私にちょうどいいかもしれません。男から女になっていくギクシャク感がうまく作用して、ベイブに入っていけるかなと思っています。

 相手役の新納さんをはじめキャストのみなさんは、今まで私が客席から見て憧れていた方ばかりですので、ご一緒できるのがとても嬉しくて、いろんなことを教えていただきたい気持ちでいっぱいです。まだ制作発表に向けて何日かご一緒しただけですが、すでにお稽古場に笑いがあふれていました。底抜けに明るい役者たちの力で、作品をさらに楽しく盛り上げ、お客様にお届けしたいと思っています。

自分がリードしないように気をつけなきゃ

拡大ミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』に出演する北翔海莉=岸隆子撮影
――東京でキャストが勢ぞろいした制作発表の感想をお聞かせください。

トム:今からでもリハーサルに入りたくなり、心の底からワクワクしました。こんなにエキサイティングなプロジェクトはあっただろうかと、すでに待ちきれません。

――世界的には有名な作品ですが、日本ではまだ上演されたことがありませんね。

トム:初演当時、『パジャマゲーム』はとても革新的なものでした。普通の人を語る初めてのミュージカルで、ドラマチックな設定もなく、ごくありふれた日常を描いたものだったからです。音楽もクラシックではなく、ポップミュージックを取り入れ、現代ミュージカルの先駆けにもなりました。60年以上前の作品ですが、今起こってもおかしくないストーリーで、日本のみなさんも登場人物に共感できるのではないでしょうか。

――この作品について、北翔さんはどう感じられましたか?

北翔:スチームヒートをはじめ、一度は耳にしたことがあるメロディーがいくつもでてきますし、ピクニックのシーンでは衝撃的なダンスシーンもあります。こんなにも歌って踊って、それでいて日常的なストーリーだから感情移入もできるし、元気や勇気ももらえる。だからこそミュージカルファンは見たいし、役者も出演したくなる作品なんだと思いました。

――労使交渉というシリアスなストーリーとミュージカルの兼ね合いは難しそうですね。

トム:政治的なメッセージをエンターテインメントで包みながら伝えていますが、お客様はそれほど強いメッセージを受け取っているとは気づかない、そこがこの作品の賢い点といえるでしょう。エンターテインメントを通してメッセージを受け取ることで、より理解が深まるのだと思います。

――北翔さんは労働組合の女性リーダーにどんなイメージがありますか?

北翔:労働組合というよりも、自分の組織を守るというイメージを持ちました。宝塚時代にトップという立場から、自分の組や組子を守っていたという意味で重なる部分があるかもしれません。

――日常に近い役を演じることについてはどう思われますか?

北翔:これまで私は、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフや『ナポレオン』でのタレーランといった遠い世界の役を演じてきましたが、今回はすぐ隣の人に起こるような日常を描いています。どんな出来事があっても、それぞれの立場で一生懸命生きていくことの大切さを、役を通して伝えていきたいですね。

――男性との恋愛も演じますが。

北翔:本当にどうしましょう。逆にその不器用な、慣れていない感じがベイブらしいとトムさんが言ってくださったので、これは新納さんに身を任せるしかないなと。今までは受け止める方でしたから……自分がリードしないように気をつけなきゃ(笑)。

――トムさんは北翔さんのどういった部分を引き出そうと考えていますか?

トム:北翔さんの才能を持って、宝塚では味わえなかった魅力を、新しい形で引き出したいと思います。舞台を見れば、観客とつながりを持てる人はすぐにわかる、北翔さんはそれができる方だと思います。宝塚であろうとミュージカルであろうとそこは変わりません。

――ベイブはスチームヒートを踊りませんね。北翔さんで見たいのですが……。

トム:オリジナルではグラディスと男性2名が踊っています。ネタバレになってしまうので多くは語れませんが、考えてはいます。ベイブは一幕のピクニックシーンで大きなナンバーがありますし、スチームヒートだけでなく、ほかの場面でもこのミュージカルが有名になればと思っています。

北翔さんの魅力? 何時間でも話せますよ

拡大ミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』に出演する北翔海莉(左)と演出のトム・サザーランド=岸隆子撮影
――トムさんが感じる北翔さんの魅力は?

トム:どこから語り始めればいいのかというくらい、何時間でもお話しできるのですが(笑)。北翔さんは歌唱やダンステクニックなどのパフォーマンスを含め、素晴らしい才能をすべて詰め込んで女性に入れた感じで、まさにパーフェクトなベイブになるのではないでしょうか。ドリス・デイが演じたベイブはフェミニンで、少し違うかなと感じていましたので、世界中で北翔さんほどピッタリな人はいませんね。

――トムさんのお言葉を聞かれていかがですか?

北翔:いや、こんなに言われちゃって……なんとも恥ずかしい限りですが(笑)、21年間、宝塚で育てていただき培ってきたものを、新たなステージで表現できることは大変光栄です。お客様を楽しませるエンターテイナーとして、今までよりもさらに、毎回進化できるステージを目指したいですし、トムさんや共演者の方々に、新しい北翔海莉を引き出していただけるよう、身をゆだねながらついて行きたいと思います。

――退団してまだ3カ月ですが、どんな日々を過ごしてきましたか?

北翔:千秋楽の翌日は、もう何十人斬りのような立ち回りをしなくてもいいんだとホッとしました(笑)。中学を卒業して21年間、男性として生きてきて、これからはやっと女性として人生を歩めることになりましたが、何からどう手を付けていいのか……まだスカートの1枚も買えていないんですよ。新納さんが「自分の方がたくさん女性を演じてきたから、ふるまいを教えてあげる」と言ってくださいましたし、元相手役の妃海風さんにもこれから電話でいろいろ聞いてみなければ(笑)。

これからは違う劇場で、違うキャストで、違うスタッフとともに、また新たな自分がスタートしますので、一から修行が始まる気持ちで身を引き締めています。

――演出家として、この作品への意気込みをお聞かせください。

トム:私はまず見ることが大好きなんです。そして語り継がれているものを伝承していくこと。さらにみなさんの視点を変えてしまうことが大好きです。『パジャマゲーム』が登場した時、どれほど革新的だったことでしょう。しかし今ではそれが普通の時代になりました。その当時、世間を驚かせたのと同じくらい、今回、私は皆さんを驚かせることをお約束します。私は観客の想像力を働かせることが大好き。それをどうぞお心にとめてお持ち帰りください。

拡大ミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』に出演する北翔海莉=岸隆子撮影
――最後に北翔さんから、大阪のみなさんへメッセージをお願いします。

北翔: この作品は海外で何度も上演されていますが、私は2017年の日本ならではの『パジャマゲーム』にしたいと思いました。それは、役にそれぞれの役者が近づいていくというよりも、役者の持つ力と役がうまくマッチして、今回のキャストにしか出せない魅力を持つことです。トムさんの力をお借りして、日本のミュージカルが世界からも注目してもらえるような作品をお見せできればと意気込んでいます。明日からでもお稽古に入りたいくらい気持ちはワクワクしていますが、その前に違うステージも待っていますので、今、高揚している気持ちをそのまま持ち続けていきたいですね。

同時に、宝塚在団中に『THE MERRY WIDOW』や『風の次郎吉』など思い出深い作品を上演したドラマシティの舞台に、卒業後も立てる喜びもかみしめています。関西のみなさま、そして全国からもたくさんのお客様が関西に足を運んでいただけるよう、これからも精進してまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。(以上)

 退団してまだ3カ月あまり。女性への変化に戸惑いを見せる北翔さんですが、サザーランド氏から絶賛され、さかんに照れる様子に素顔のかわいらしさがのぞいていました。歌・ダンス・芝居とバランスがとれた北翔さんの実力が発揮できるミュージカルは、ファンにとっても待望だったことでしょう。

 フォッシーの魅力が詰まった『パジャマゲーム』は、日本ではまだ知られていないだけに、その期待も天井知らず(?)。私たちを驚かせることを約束したサザーランド氏がどんな風に仕掛けてくるのか、半年先の上演が今から待ち遠しくてたまりません。

◆公演情報◆
ミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』
2017年9月25日(月)~10月15日(日) 東京・日本青年館ホール
2017年10月19日(木)~29日(日) 大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
[スタッフ]
演出:トム・サザーランド
振付:ニック・ウィンストン
[出演]
北翔海莉、新納慎也、大塚千弘、上口耕平、広瀬友祐、阿知波悟美 佐山陽規、栗原英雄 ほか
公式ホームページ

筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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