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宮澤エマ、中身を知ってほしいと願う令嬢役に

ミュージカル『紳士のための愛と殺人の手引き』出演

米満ゆうこ フリーライター


拡大ミュージカル『紳士のための愛と殺人の手引き』に出演する宮澤エマ=米満ゆうこ撮影
 2014年にトニー賞4部門を獲得した人気ミュージカル『紳士のための愛と殺人の手引き』が、いよいよ日本で上演される。1900年頃の英国が舞台で、母を亡くした主人公のモンティは、実は母親は大富豪の貴族「ダイスクイス・ファミリー」の血を引き、モンティにも爵位継承権があるという事実を知らされる。しかし、現伯爵を含め、ダイスクイス家のメンバー8人が死ななくては、8番目の継承権を持つモンティは伯爵にはなれない。8人のメンバーを次々と殺していくモンティをはじめ、きてれつな上流社会の人々を皮肉った作品はブロードウェイで大ヒットした。特に、作品の見どころとなる、モンティが殺人を犯すシーンはブラックユーモアたっぷりで、ブロードウェイの劇場では爆笑の連続だった。

 公演に先がけ、モンティと恋愛関係に陥る、ダイスクイス家の令嬢フィービーを演じる宮澤エマが、大阪市内で会見を開いた。テレビでコメンテーターとして活躍する傍ら、2013年に初舞台を踏み、その確かな演技力と歌唱力が評判を呼び、キャリアを順調に重ねている。ミュージカル界の期待の星とあって大勢の記者が集まる会見となった。

譜面が届いたとき、チャレンジしがいがあると

記者:まず、作品について教えて下さい。

宮澤:こんなに大掛かりな会見は初めてでして、何だか謝罪会見をしているみたいです(一同笑)。この作品はブロードウェイで見ているのですが、2014年にトニー賞を受賞したほどのすごく面白い舞台です。イギリスが舞台で、ブリティッシュユーモアが特徴。イギリス人の感性と日本人の感性は似ているところがたくさんあり、日本に持ってきたら面白いだろうと思っていました。実際、日本での上演が決まって、オーディションを受けることになりました。高いソプラノを歌う役でしたので、私ではないだろうなと思っていたけれど、この役に決まり、嬉しい気持ちでいっぱいです。お客さまに楽しんでもらえるように、役をこれから作り、稽古して極めていけたらと思います。

記者:フィービー役について聞かせて下さい。

宮澤:フィービーは、田舎で暮らしている貴族の娘です。箱入り娘で社会との関わりがなかったのですが、外の世界に興味を持っている。自分の生まれ持った環境や立場だけではなく、本当の私のことを知ってほしいと思っている女性で、そういうソロナンバーもあります。モンティ(ウエンツ瑛士/柿澤勇人のWキャスト)と出会うことによって、今まで以上の自分を出していく役どころです。はじめは肩書や経歴に注目しがちですが、そこではなく中身を知ってほしいという、そのギャップを忠実に、意外性を持って演じたいなと思っています。

記者:フィービーとの共通点はありますか。

宮澤:デビューしてからは、祖父(第78代内閣総理大臣・宮澤喜一)の孫であるという肩書で見られると、深窓の令嬢に思われてしまい、くだけた感じよりちゃんとしていてほしいという期待があるようでした。普段の自分は、「元首相の孫」を意識して生きているわけではないので(笑)、そこは共感できますね。

記者:このミュージカルのメインの楽曲はオペラですよね。シュールな内容と壮大なオペラの曲調が、見ていてギャップがあり大変面白かったのですが、その辺りはいかがでしょうか。

宮澤:ブロードウェイではポップス寄りの作品が多い中、久々にすごくクラシカルな音楽が印象的な作品です。フィービーの歌は、とくにソプラノのクラシカルな曲調がメインですが、美しい音楽と歌詞にはギャップがあります。フィービーは衣装や立ち振る舞いで、可憐なお嬢様かと思いきや、言っていることはすごく面白くてユニークなんです。歌詞はお下劣とまではいいませんが、そのギャップを極めていくことで、お客さまにも作品の面白さが伝わるのではと思います。

記者:実際に歌ってみてどうですか。

宮澤:譜面が届いたときは、これはチャレンジしがいがあると思いました。最近、出演したミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』では、ゴスペルやR&B、ポップスの曲調で、地声で歌うことが多かったんです。今回は裏声を使わなければいけません。そこを違和感なく歌いたいですね。スティーヴン・ソンドハイムとはまた違って耳障りはいいのですが、音のパーツをバラバラにするととても複雑に結ばれている。あまりやったことがない歌い方ですので、徐々に体に馴染ませていきたいですね。「裏を表に」というソロナンバーは、自分の表面ではなく中身をみてもらいたいと歌う曲。モンティがどうしてフィービーに恋をするのか分かるような美しくてロマンティックな素敵な曲ですが、技術的には難しいですね。モンティやシベラ(シルビア・グラブ)と歌う三重奏もあるので、お客さまにも喜んでいただけると思います。

上流社会の人々の生き方とは?という問題提起も

拡大ミュージカル『紳士のための愛と殺人の手引き』に出演する宮澤エマ=米満ゆうこ撮影
記者:貴族の階級社会がテーマでもあります。『ダウントン・アビー』(英国貴族の生活の内幕を描いた海外のテレビドラマ)もブームになっていますが、参考にされた作品はありますか。

宮澤:『ダウントン・アビー』はとても分かりやすい作品ですね。今回は、1900年代初頭の映画などの作品を参考にしたいと思っています。『紳士のための愛と殺人の手引き』は上流階級の話ですが、モンティの立場はアッパーミドル。モンティのような中流階級が上を目指すという構造は、日本で言うと江戸時代の士農工商に戻ってしまう感じでしょうか。その微妙なクラス感はイギリス特有ですので、そこをもっと勉強して、お客さまにどうやってニュアンスを伝えるか考えて作っていきたいです。貴族は社会のロールモデルと思われていても、実は下品なことをしていたり、モラルがなかったり。

 市村正親さんが一人8役で演じられるモンティの親戚たちも伯爵家なのに、秘密の逢瀬を繰り返す人などそれぞれ問題があるんです。「私はチャリティが大好き」というご婦人も自分のエゴや見栄のためだったりする。上流社会の人々の生き方とは?という問題提起もしています。その中で、モンティが何のために上流に上っていくのかというところも見えてくると思います。

記者:フィービーは、「モンティに出会って変化する」とおっしゃっていましたが、モンティはどうなのでしょうか。

宮澤:シベラとモンティ、フィービーは後に三角関係になります。シベラとフィービーはライバルですが、対照的でコインの表裏という感じです。シベラはお金や上流社会が大好きで、もっと上に行きたいというモチベーションがある。逆にフィービーは、多くの高級品に囲まれ、生まれながらに持っているものがたくさんありますが、そうではないものを求めている。二人は逆のものが欲しいんです。モンティはシベラに憧れているにもかかわらず、いい家の生まれではないのでシベラに振られてしまう。彼はもし、自分が伯爵になれたら、パッションや愛ではなく、モラルを持った性格のいいフィービーのような人がいいんじゃないかと、二人の間で揺れ動くんです。今までにない価値観が生まれ、モンティも変化していきます。

記者:モンティが、市村正親さん演じる8人のダイスクイス家の人を次々と殺すシーンについては、どう思われますか。

宮澤:登場する上流社会の人々があまりいい人たちではないので、どちらかというと退治していく感じですね。この人が殺されても、そこまで罪悪感を覚えないというような、強烈なキャラクターが次々と出てきます。歌舞伎でもそういう作品があると思いますが、悪いからこそ見ていて面白い。自分が人を殺すまで悪くはなれないからこそ、痛快な部分がある。一番上で輝いている人が地に落ちるのを見たいという気持ちは、皆、表立っては言わないけど、どこかに持っているものだと思います(笑)。市村さんといえば、『スウィーニー・トッド』をイメージする方も多いと思いますが、あそこまで生々しくはなく、直接手を下すシーンは少ないです。モンティのモラルは心配せずに見ていただけると思います。

記者:作品をブロードウェイで見ていて、こんな殺され方があったのかという斬新なシーン(笑)はありましたか。

宮澤:普通に殺人を考えたとき、一番手を汚さないのは毒を盛ることだと考える人が多いかも知れません(笑)。モンティもそうなんです。ただ、予定通りにはいかない。人に毒を盛るのは難しいじゃないですか(笑)。近くにいながら、そういうことをするのは。最近、似たような事件がありましたから、あまり言ってはいけないことかもしれませんが(一同笑)。それが意外な方法で、こんなに簡単に人を殺せてしまったというのが一番最初の殺人のシーンです。そこが驚きでした。そのシーンで、しかも自分が笑っているというのも(笑)。そこがフックになり、お客さまも楽に見ていただけると思います。

モンティの真面目な部分とセクシーな部分が楽しみ

記者:フィービーは市村さん演じる8役の内の一人、ヘンリーとは兄妹役という設定です。どんな絡みがあるのでしょうか。

宮澤:直接、兄妹として絡むシーンはすごく少ないんです。ヘンリーとモンティが出会って、次にフィービーとモンティが出会い、ロマンチックな瞬間になった途端、ヘンリーがあっという間に殺されてしまうんです(笑)。市村さんとは初共演です。松本幸四郎さんとも以前、舞台でご一緒させていただきましたが、大御所の方は多くを語らずとも役で見せて下さるという印象を受けています。市村さんにもお稽古場で、いろいろなことを教えていただきたいと思っています。

記者:モンティをWキャストで演じるウエンツ瑛士さん、柿澤勇人さんについてはいかがでしょうか。

宮澤:ウエンツさんとはテレビでご一緒させて頂いてご挨拶しましたが、「初めましての気がしないよね」と言われて。たぶん、お互いハーフで、似たような番組にも呼ばれていますので、すぐに打ち解けられました。柿澤さんとは、初舞台『メリリー・ウィー・ロール・アロング~それでも僕らは前へ進む~』で共演して、それ以来です。そのときも柿澤さんに片思いをする報われない役で、「今回も三角関係でなかなかうまくいかないね」と話していました(笑)。お二人ともチャーミングですし、モンティは殺人を繰り返すキャラクターでありながらも、二人の女性がメロメロになってしまう魅力があるんです。それにモンティはイギリス人とカスティリア人のハーフで、白人の貴族とカスティリアの情熱的な血が入っています。モンティの真面目な部分とセクシーな部分を、お二人がどう演じられるのか楽しみです。

記者:先ほど自分がフィービーと重なるとおっしゃっていましたが、宮澤さんのセレブなイメージを覆すようなエピソードを教えて下さい。

宮澤:えーーっ、何でしょう。庶民的な、何だろう……。トイレットペーパーをけちるとかそういうことですかね(一同笑)。食品の賞味期限が切れていても食べちゃうとか。普段の生活の中では意識したことがなかったのですが、世間のお嬢様のイメージはすごいものなんだなと。「コンビニやファミレスに行ったことがないでしょう」と言われて、そんな生活をしている人はもはやいないと思うんですけれど。恵まれた生活をしているのは自覚していますが、わりと普通に、学校の帰り道にしょっちゅう買い食いしていました(笑)。この業界に入ったのも23歳で、一通り遊んでおバカもしましたので、普通に生きてきたつもりです(笑)。

記者:最後に大阪の観客にメッセージをお願いします。

宮澤:ブラックユーモアのコメディで人を笑わせるということは、泣かせることよりも難しいのではないかと実感しています。センスやタイミングを問われますし、タイミングはキャスト全員で共有しないといけないものです。「笑い」といえば大阪で、笑いには厳しい街です。ユニークなフィービーを演じることで「ひと笑い」とは言わず、「何笑い」でも取れればいいなと思っております。ぜひ、劇場に足を運んでください。

◆公演情報◆
ミュージカル『紳士のための愛と殺人の手引き』
2017年4月8日(土)~4月30日(日) 東京・日生劇場
2017年5月4日(木・祝)~7日(日) 大阪・梅田芸術劇場メインホール
2017年5月12日(金)~14日(日) 福岡・キャナルシティ劇場
2017年5月19日(金)~21日(日) 愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
[スタッフ]
脚本・歌詞:ロバート・L・フリードマン
音楽・歌詞:スティーブン・ルトバク
原作:ロイ・ホーニマン
日本版演出:寺﨑秀臣
[出演]
市村正親、ウエンツ瑛士/柿澤勇人(Wキャスト)、シルビア・グラブ、宮澤エマ、春風ひとみ ほか
公式ホームページ

筆者

米満ゆうこ

米満ゆうこ(よねみつ・ゆうこ) フリーライター

「三度の飯よりアートが好き」で、国内外の舞台を中心に、アートをテーマに取材・執筆。ブロードウェイの観劇歴は20年以上にわたり、ブロードウェイの劇作家トニー・クシュナーや、演出家マイケル・メイヤー、スーザン・ストローマンらを追っかけて、現地で取材をしている。

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