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【公演評】スタジオライフ『エッグ・スタンド』

戦争が生んだ恐るべき子ども、ラウルの心の闇に迫る

岩橋朝美


拡大Rougeチーム、左から、笠原浩夫、久保優二、山本芳樹=スタジオライフ提供

 萩尾望都が1984年に発表した、戦時下のパリを舞台にした中編漫画『エッグ・スタンド』を、オールメールの劇団スタジオライフが初舞台化。Noir、Rougeの2チーム編成で、新宿シアターサンモールにて上演中だ(3月20日まで上演。大阪公演は3月24~25日)。Rougeチームの初日の模様をお届けする。

 第2次世界大戦中、ナチスドイツ占領下のパリ。キャバレーの踊り子のルイーズ(久保優二)は、少年ラウル(山本芳樹)、レジスタンスのマルシャン(笠原浩夫)と出会い共同生活を始める。ルイーズはラウルを弟のように気づかい、ルイーズとマルシャンは次第に惹かれあう。しかし、つかの間の幸せな日々を過ごす彼らを、戦争の狂気が引き裂いていく。

拡大Rougeチーム、山本芳樹=スタジオライフ提供
 「戦争の悲しみは個々人に落ちてくる。そういう作品を描きたかった」と萩尾が語る通り、戦争が登場人物たちの人生に暗い影を落とす。かつて国のために戦場で戦ったマルシャンは、空襲で妻と幼い子どもを失った。演じる笠原は、猫背の背中に数多の死を十字架のごとく背負い、26歳にして「おじさん」の呼称がしっくりくるほどの老いを感じさせる。紅一点の17歳の踊り子ルイーズは、ユダヤ系ドイツ人であることを隠し暮らしている。ユダヤ狩りの恐怖にさらされながらも、ラウルやマルシャンへ惜しみない愛情を傾けるルイーズを、久保は持ち前の温かさとやさしさで体現した。

 そして、本作の要であるミステリアスな少年ラウル。父が政治犯として処刑され、村八分にされた母に溺愛という名の支配を受けて育ったラウルは、自身の人生を生きるために一線を越える。山本演じるラウルは、瞳に無垢と闇を宿す原作のラウルそのもの。現実に対して常に不感症な彼の浮遊感のある佇まいには、怖さと哀しみの両方が感じられた。

 タイトルのエッグ・スタンドをイメージした、天井につるされたリングは、卵の殻に開けられた穴のようでもある。エッグ・スタンドの上で不安定に立つ卵は、ラウルの心の闇であり、戦争で疲弊する世界。その穴の中に、あなたは何を見るだろうか。

◆公演情報◆
スタジオライフ『エッグ・スタンド』
2017年3月1日(水)~20日(月・祝) 東京・シアターサンモール
2017年3月24日(金)~25日(土) 大阪・ABCホール
『OSAKA SPECIAL EVENT』
2017年3月26日(日)大阪・ABCホール
[スタッフ]
原作:萩尾望都(『エッグ・スタンド』小学館文庫『訪問者』収録)
脚本・演出:倉田淳
[出演]
ラウル:松本慎也/山本芳樹(Wキャスト)
ルイーズ:曽世海司/久保優二(Wキャスト)
マルシャン:岩﨑大/笠原浩夫(Wキャスト)
船戸慎士、奥田努、仲原裕之、宇佐見輝、澤井俊輝、若林健吾、田中俊裕、千葉健玖、江口翔平、牛島祥太、吉成奨人、藤原啓児
※チケットは各プレイガイドにて発売中
公式ホームページ

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筆者

岩橋朝美

岩橋朝美(いわはし・あさみ) フリーエディター、フリーライター

映画関連のムック・書籍の編集に携わった後、女性向けWEBメディア・Eコマースサイトのディレクションを担当。現在はWEBを中心に、ファッション・美容・Eコマースなど多様なコンテンツの企画、編集、取材、執筆を行う。また、宝塚やミュージカルを中心とした舞台観劇歴を生かし、演劇関連の取材や執筆も行う。

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