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【公演評】星組『スカーレット・ピンパーネル』

紅ゆずる、思い出の新人公演主演作で星組新トップお披露目へ

さかせがわ猫丸 フリーライター


拡大『THE SCARLET PIMPERNEL』公演から、パーシー役の紅ゆずる=岸隆子撮影
 星組公演、ミュージカル『THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット・ピンパーネル)』が、3月10日、宝塚大劇場で初日を迎えました。ブロードウェイでも大ヒットしたこの作品が宝塚で上演されたのは、2008年の星組公演。胸のすく痛快なストーリーに加え、当時のトップスター安蘭けいさんが美しい歌声でつづる名曲の数々で、衝撃ともいえる感動を呼びました。2010年に月組で再演され、主演の霧矢大夢さんが情熱的な歌唱で独自の魅力を引き出し、再び大ヒット。いまや宝塚の代表作の一つとなっています。

 7年ぶりの再演となる今回は、星組新トップスターに就任する紅ゆずるさんのお披露目公演となりました。紅さんにとってもこの公演は特別で、宝物のような存在だったことでしょう。初演当時研7で、最後の新人公演だった紅さんが、成績下位から主演に抜擢されたこと。その重圧に負けない堂々たる演技で、「新星現わる!」と激震が走ったことは、伝説にもなったほどです。この出来事をきっかけに紅さんはスター街道へ。まるでアメリカンドリームのごとく、成績だけでははかれない宝塚の面白さを体現したような出来事でした。

 あれから7年。たくましく成長した紅さんが、今度は星組新トップスターとなって、同じく新トップ娘役の綺咲愛里さんとともに主演で飾る『スカーレット・ピンパーネル』。いよいよお披露目の幕が上がりました。

紅らしいギャップが魅力のヒーロー

拡大『THE SCARLET PIMPERNEL』公演から、パーシー役の紅ゆずる(中央)=岸隆子撮影

 生粋の星組っ子である紅さんは、涼しいマスクとコスプレが似合うスタイルに加え、愛嬌たっぷりの芸風で人気を誇ってきました。特にコメディセンスは抜群で、明るい作品では常に舞台を引っ張りながら、お客様を笑顔で包み込んでいます。もちろん芝居心も豊かで、切ない演技や狂気の演技など、見る者を引き込む力は強く、その落差に心惹かれずにはいられません。

 パーシヴァル・ブレイクニー(パーシー)は、おどけてばかりな表の顔と、弱いものを救う勇敢な素顔のギャップが魅力的なヒーローです。紅さんが演じるには、まさにピッタリのキャラクターではないでしょうか。

――18世紀フランス。パリには革命の嵐が吹き荒れていた。市民たちの怒りは渦巻き、ロベスピエール(七海ひろき)率いるジャコバン党による貴族の粛清が次々と行われている。そんな恐怖政治に憤るイギリス貴族のパーシヴァル・ブレイクニーは、スカーレット・ピンパーネルと名乗り、正体を隠して無実の罪で断頭台に送られる貴族を救いだしていた。革命政府の公安委員ショーヴラン(礼真琴)は、その男の正体をつかまえようと躍起になるが、どんな人物なのか誰も予想すらできなかった。

 オープニングはギロチンが日常となったパリの街。みすぼらしい老人の扮装で貴族の娘たちを救い出すのは、もちろんスカーレット・ピンパーネルこと、パーシーです。ブロンドの髪をひとつにしばった紅さんは、マント風のコートが長身に映え、立ち姿がとても美しい。さっそうとしたイギリス紳士に戻ってテーマソング『ひとかけらの勇気』を歌う姿に、トップスターに就任した喜び以上の感動が、ファンのみなさんの胸にもこみあげたのではないでしょうか。正義の味方・紅パーシーには、貴族の人のみならず、私たちも思わず一緒にすがりつきたくなるような頼もしさでいっぱいです。

 もちろん、スカピン名物のコメディシーンでは、紅さんらしさが弾けるのは言うまでもありません。外国のスパイ・グラパンに変装したり、ショーヴランをからかう場面では本領発揮とばかりに、ますますイキイキしていたのが印象的でした。

 老人姿のパーシーを呼び止めるピポー軍曹は美稀千種さん。初演でも同じ役を演じていて、威圧的なのに少しおっちょこちょいな動きが健在です。パーシーに助けられるドゥ・トゥルネー伯爵夫人の万里柚美さんも同じで、変わりない美貌がこちらも懐かしくなりました。

七海、綺咲の麗しさがまぶしい

 ショーヴランを徹底的に締め上げるロベスピエールは、貴族を次々処刑する恐怖政治の首謀者ともいえる存在で、クールな七海ひろきさんがもっとも得意とするところかもしれません。男役としての円熟味を増してきたこの頃、美貌にもますます磨きがかかって、王子様と見まごう麗しさです。そこへ狂気とも言えそうなほどの冷酷無比な表情が似合っていて、ファンの皆さんもたまらないはず。新しく増えたナンバーも、堂々と歌い上げていました。

――コメディ・フランセーズ劇場では、花形女優マルグリット・サン・ジュスト(綺咲)が、パーシーと結婚するための引退興行を行っていた。だが、革命政府を批判したことで劇場の閉鎖命令を出され、元同志だったショーヴランから、劇場の再開と引き換えにサンシール侯爵(夏樹れい)の居場所を迫られた。追い詰められたマルグリットが教えてしまった結果、侯爵は断頭台へ送られてしまう。結婚式の当日、友人のデュハースト(壱城あずさ)から、侯爵の処刑とマルグリットの裏切りを聞いたパーシーは衝撃を受けるが、もはや時間は残されていない。翌朝、仲間たちに自らの正体と壮大な計画を打ち明け、ピンパーネル団が立ち上がった。

 マルグリットは気高く、誇り高い女性です。それでもパーシーのことを心から慕ういじらしさが可愛らしく、実に魅力的なヒロインでしょう。綺咲さんは眉を大きく弓型に描き、強気なマルグリットらしさを押し出して、初代の遠野あすかさんを思い出させる役作りです。課題の歌もしっかりと聞かせ、トップ娘役に就任する初々しさがまぶしくて、不安は感じさせません。なにより紅さんとの並びが良く似合っていて、トップコンビとしても息ぴったりな様子がにじみ出ていました。

◆公演情報◆
ミュージカル『THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット・ピンパーネル)』
2017年3月10日(金)~4月17日(月) 宝塚大劇場
2017年5月5日(金・祝)~6月11日(月) 東京宝塚劇場
[スタッフ]
音楽:フランク・ワイルドホーン
潤色・演出:小池修一郎
公式ホームページ

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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