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3月8日「ウィメンズ・マーチ東京」を呼びかけて

「ヤバい」「つらい」ことは、きりがないほどある

濱田すみれ NPO法人アジア女性資料センター・スタッフ

撮影=Karolina Breguła拡大撮影=Karolina Breguła
 「女が生きるのマジで辛い!」「我慢するのはもう限界!」

 これは、2017年3月8日の国際女性デーに「ウィメンズ・マーチ東京」の参加者が訴えたコールの一部だ。この日、国際的なアクション「女性のいない日」への連帯を表明する「赤」を身に着け、女性差別を批判する意味をもつ「プッシーハット」を被った参加者は、それぞれが抱えている「もやもや」や「しんどさ」を訴えるために渋谷や原宿の街を行進した。

https://twitter.com/womensmarchtyo
https://www.facebook.com/womensmarchtokyo/

「反トランプ」を超えた「ワシントン女性大行進」

 2017年1月21日、アメリカ・ワシントンD.C.に50万人もの女性たちが集結し、「ワシントン女性大行進」(Women's March on Washington)をおこなった。ワシントン以外の全米各地、そして日本を含む世界各地でも同様の女性大行進が開催され、主催者によれば、のべ500万人が参加したという。

連載 世界中で続く「ウィメンズ・マーチ」

 その様子を私は主にインターネットで知った。幅広い年齢の参加者が掲げるプラカードに書かれたメッセージや、さまざまな背景をもった女性たちによるリレー・スピーチ、そしてSNSで拡散される参加者・賛同者の投稿には、移民排斥、宗教差別、人種差別、ジェンダーに基づく暴力、セクシュアル・マイノリティの権利侵害、貧困、リプロダクティブ・ライツ(性と生殖の権利)侵害など、あらゆる問題が取り上げられていた。

 主催者は声明で、彼女たちが指す「女性」には「黒人女性、先住民女性、貧困女性、移民女性、障害のある女性、イスラム教徒の女性、レズビアン・クイア・トランス女性すべてが含まれている」と述べている。そして、「この社会で女性はさまざまに交差するアイデンティティーを持っているため、より多くの社会正義や人権の問題に直面する」として、暴力の撲滅、リプロダクティブ・ライツ(性と生殖の権利)、セクシュアル・マイノリティの権利、労働者の権利、障害者の権利、移民の権利、環境への配慮などを挙げ、それらのすべてが等しく重要であり、女性たち自身が真摯に向き合うべき課題であるという立場を明確にしている。

 ワシントン女性大行進の参加者それぞれの主張は、単なる「反トランプ」を超えて、女性が生きる現在の社会が抱える根本的な問題を提起していると感じることができた。

3つのアクションへ

 私はアジア女性資料センターで活動を始めて7年目になる。これまで、機関誌『女たちの21世紀』の編集を担当したり、女性の人権やジェンダー平等に関するセミナーなどを開催してきた。また、若い女性たちが活動するユースグループも立ち上げ、同世代同士で身近なジェンダー問題について語り合う場所づくりや、若い世代向けのワークショップ教材の開発にも取り組んできた。

 日本にもさまざまな立場から問題を共有する場所が欲しいと強く思って、まず私個人のSNSアカウントで「日本でも女性大行進がやりたい!」と投稿してみた。すると、たくさんの友人から賛同を示す「いいね!」やコメントがついたので、女性運動関係者の何人かに声をかけてみた。その結果5人のメンバーが集まり、2017年2月に「ウィメンズ・マーチ東京」実行委員会を立ち上げることになった。

 ちょうどこの頃、ワシントン女性大行進の主催者が、3月8日の国際女性デーにゼネスト「女性のいない日」(A Day Without A Woman)を開催すると発表し、世界中の女性や賛同者に参加を呼びかけていた。私たち実行委員会でも、この国際的な動きに連帯しようと話し合い、ウィメンズ・マーチ東京の開催日も3月8日の国際女性デーに合わせることになった。実行委員会の人数は少なかったが、ワシントン女性大行進のウェブサイトやSNSを通して発表される情報を見ていると、世界中の女性たちと国際女性デーに向けて一緒に準備している気分になって嬉しかった。

 「女性のいない日」に関する情報は、できる限り日本語に訳すなどして私たちのSNSアカウントでも発信した。この日には、具体的に3つのアクションへの参加が呼びかけられていた。

 1つ目は、この日に女性たちが有給の仕事そして無給の仕事(家事・育児・介護などの無償労働)を休むこと。女性たちが担っているあらゆる労働は、男性たちが多く担っているそれと比べて価値がない/低いとされている。女性たちの仕事がどれほど重要なものなのか、女性たちが一斉に仕事から離れることで社会に再認識させようというアクションだった。

 2つ目は、女性やマイノリティが経営する小店舗以外では、できるだけお金を使わないこと。いま世界では、大規模なグローバル企業が前例のないほど巨大な力を持っている。だが果たして、そのような大企業の多くは、私たちの地域社会に貢献しているだろうか、ジェンダー平等を実現するために努力しているだろうか、私たちの住む地球環境を持続可能なものにしているだろうか。こうした疑問をもつ女性たちが、男性中心的でコミュニティや環境に対して抑圧的になりがちなグローバル企業に、1日だけでも利益を生ませないという取り組みだ。

 3つ目は、連帯を表明するために「赤」を身に着けること。これは仕事を休むことができない女性たちやゼネストを支持する男性たちにも参加しやすいアクションとして呼びかけられていた。

 この「女性のいない日」のアクションをSNSで発信したところ、ハッシュタグ(#0308ウィメンズマーチ東京)をつけて「当日は赤を着て連帯する」というツイートが、予想以上の数にのぼった。

 また、ワシントンの女性大行進に賛同した女性たちが展開する「プッシーハット・プロジェクト」も紹介したところ、こちらも反響が大きかった。「プッシー」とは、子猫を意味すると同時に女性器を表すスラングでもある。つまり、猫耳の形をした帽子の「プッシーハット」を被ってゼネストに参加することで、トランプの女性蔑視発言(“grab her by the pussy”)に対して強い抗議の意思を示す取り組みである。

それぞれの「マーチした理由」

 準備期間は約1か月という短い期間だったので、当初は本当に開催できるのか不安だったが、さまざまな人たちからのサポートを得られて、無事に当日を迎えることができた。どのくらいの人が集まるか予想ができなかったが、当日までに34の賛同団体が集まり、開催日に近づくとSNSで参加表明する人やメディアからの問い合わせも増えてきた。

撮影=Karolina Breguła拡大撮影=Karolina Breguła
 3月8日は、第1部で国会議員に声を届けるための院内集会を開催し、第2部で「ウィメンズ・マーチ東京」デモ行進をおこない、第3部は日本に住む女性たちが抱えている問題を共有するためのスピーチ集会をもつという構成にした。

 第1部の院内集会では、6人の国会議員と100人以上の参加者が、ジェンダー平等に向けて活動している女性たちの声を聞いた。

 現政権による「女性活躍」政策は女性たちの生活条件の改善に全く寄与していないことや、「親子断絶防止法案」というDV被害女性に敵対的な法案が国会に提出されようとしていることが報告され、またセクシュアル・マイノリティが抱える困難についてもうったえがあった。

 「女性たちはこれまで十分に声を上げてきた。しかし、その声を聞こうとしない人たちが政策決定の場にいる」というスピーチを聞いて、この国でこれまで、声を上げても無視され続け、声を上げる力を奪われてきた女性たちがどれだけいたのだろうかと、胸が締めつけられた。

 院内集会のあとは渋谷の東京ウィメンズプラザに移動してのウィメンズ・マーチだ。議員会館を出て急いで向かうと、マーチの出発地点にはすでに100人以上の人たちが集まっていた。当初、実行委員会ではマーチの参加者は最低で20人いればと話していたので、とても嬉しかった。最終的にマーチへの参加者は300人以上にのぼった。

 参加者それぞれが手作りしたプラカードには、「女性の権利は人間の権利」「私の身体は私のもの」「NO セクハラ」「女はモノじゃない」「パートなめんな」「女性活躍しません」「性暴力ゆるさん」「だれもがいきいきと生きられる社会のために」「閉経したって生きてるよ」など、多様なメッセージが並んだ。実行委員会では、女性たちが生きにくそうなことがらを挙げて、それに合わせて「マジでヤバい」「マジでつらい」と続けるコールを考えたが、実際にその場で思い浮かんだ「ヤバい」「つらい」ことは、きりがないほどにたくさんあった。

 第3部のスピーチ集会では、賛同団体を中心に「私がマーチした理由」でスピーチをお願いし、マーチでそれぞれが掲げた辛いことや悩みを具体的に共有してもらった。家族に「助け合い」を強制し女性に家事・育児・介護をますます押しつけようとする憲法24条改悪への危機感、さまざまなセクハラの被害、シングルマザーに対する差別、東日本大震災の被災女性たちがいまも抱える課題、沖縄の基地周辺で頻発する性暴力など、ここでも女性たちの抱えるさまざまな困難が共有された。

世界中の連帯の波

撮影=Karolina Breguła拡大撮影=Karolina Breguła
 この日、賛同する300人の女性たちと渋谷や原宿の街頭を歩いた様子はワシントン女性大行進の主催者にも伝わり、SNSでは「日本の仲間たちもアクションに参加してくれたことを誇りに思う」というメッセージ付きで写真が紹介された。

 マーチを終えて個人的にとても嬉しいのは、東京でもこの日にウィメンズ・マーチを開催したことを知った世界中の女性たちが、日本からの連帯を喜んでくれていることだ。ワシントン女性大行進主催者のインスタグラムで紹介されたウィメンズ・マーチ東京の様子には、たった5日後の3月13日現在で、すでに3万3700件の「いいね!」と、184件のコメントがついた。

 1月のワシントン女性大行進以降の動きをみていると、一連のアクションに連帯する女性たちは、世界中で互いの取り組みを褒め合い、励まし合っている。SNSなどで中傷するようなコメントが出ると、世界中から連帯する人たちがすぐに反応し、ヘイト・アカウントのほしいままにさせないようサポートしている。彼女たちは「私たちは、愛はどんな不安、貪欲、憎悪よりもはるかに多数であることを知っている」と繰り返し発信している。立ち上がった女性たちとその仲間たちを孤立させないために、意識的に仲間たちを励まし、勇気づけ合っている。そして、彼女たちは「この取り組みは短距離走ではなくマラソンであることを忘れないようにしよう」と繰り返している。

 この連帯の波は大きくなっていると感じたし、私自身がたくさんの勇気をもらった。日本でも励まし合いながら、息長く運動を続けていくことが、この生きにくい社会を誰もが生きやすい社会に変えていくことに繋がると信じている。次のアクションはどうしようか、考えるとワクワクしてくる。


筆者

濱田すみれ

濱田すみれ(はまだ・すみれ) NPO法人アジア女性資料センター・スタッフ

1984年東京生まれ。自由の森学園高校卒業後に渡米し、Virginia Marti College卒業。アパレル会社勤務などを経て、アジア女性資料センターの事務局に。機関誌『女たちの21世紀』の編集を担当。また、「ユースグループ」を立ち上げ、若い女性たち同士が身近なジェンダー問題について語り合う「ジェンダーカフェ」や、女性の人権やジェンダーに関するワークショップを全国各地に届ける「ジェンダーワークショップ・キャラバン」といった企画を主催してきた。