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【公演評】『キューティ・ブロンド』

神田沙也加がキュートに伝えるポジティブなメッセージ

大原薫


拡大ミュージカル『キューティ・ブロンド』公演から=東宝演劇部提供

 圧倒的に楽しい! 日本初上演となるブロードウェーミュージカル『キューティ・ブロンド』が上演中だ(3日まで東京・シアタークリエ。その後、全国ツアー公演あり)。

 原作となった映画『キューティ・ブロンド』(原題は『Legally Blonde』)は2001年に公開。2007年にブロードウェーでミュージカル化された。オリジナル版の演出は『キンキーブーツ』のジェリー・ミッチェル。筆者はブロードウェーでの公演を観劇しているが、ダイナミックなステージングの華やかなエンターテインメントの中に、確かなメッセージが息づく舞台に大いに感動したものだ。

 今回の日本版は上田一豪による新演出。作品の魅力をあますところなく伝えて、心躍らされた。

『アナと雪の女王』に続く、新たな当たり役に

拡大ミュージカル『キューティ・ブロンド』公演から=東宝演劇部提供
 オシャレが大好きな女子大生のエルは大学で青春を謳歌していた。しかし婚約間近の彼氏、ワーナーから「上院議員を目指す自分の妻としてブロンド娘はふさわしくない」という理由で突然振られてしまう。納得がいかないエルは一念発起して猛勉強。ハーバード大学のロー・スクールに合格し、ワーナーに再会。エルは弁護士を目指して、快進撃を続ける。

 ディズニー映画『アナと雪の女王』のアナ役の声優として実力を知らしめた神田が、満を持して東宝ミュージカルに初主演。エル役で実にイキイキとした舞台姿を見せ、伸びやかな歌声を聞かせた。テーマカラーのピンクを基調とした衣裳を17着も早替えして見せ(そのどれもが似合う!)、コミカルな演技で場内を沸かせる。

 しかし、見どころはそこだけではない。作品は「楽しいミュージカルコメディ」だが、その奥に横たわるメッセージは深い。エルは「キレイなブロンド娘は、表面を飾り立てることにばかり時間を費やすおバカな子ばかり」というステロタイプな偏見に対して、自分なりの方法で立ち向かっていく。神田が自らの感情を繊細に揺らして、エルに心を寄せて演じているのが伝わってくる。時には傷つきながらも、自分の可能性を信じてまっすぐに前に進んでいくエルに、いつしかエールを送らずにはいられなくなる。現実社会には残念ながら差別や偏見はつきものだ。それに対して自分がどう向かい合い、乗り越えていくのか。神田が等身大でエル役に体当たりしていく姿に、明日に向かうエネルギーをもらえるだろう。エルは神田沙也加の新たな当たり役と呼ぶにふさわしい。

◆公演情報◆
ミュージカル『キューティ・ブロンド』
2017年3月21日(火)~4月3日(月) 東京・シアタークリエ
2017年4月5日(水)~6日(木) 愛知・愛知県芸術劇場大ホール
2017年4月8日(土) 香川・レクザムホール 大ホール
2017年4月12日(水) 大分・iichikoグランシアタ
2017年4月15日(土)~16日(日) 福岡・キャナルシティ劇場
2017年4月18日(火) 広島・JMSアステールプラザ大ホール
2017年4月20日(木) 静岡・浜松市浜北文化センター大ホール
2017年4月23日(日) 福井・越前市いまだて芸術館
2017年4月27日(木)~30日(日) 大阪・メルパルクホール大阪
[スタッフ]
音楽・詞:ローレンス・オキーフ&ネル・ベンジャミン
脚本:ヘザー・ハック
翻訳・訳詞・演出:上田一豪
[出演]
神田沙也加/佐藤隆紀(LE VELVETS)/植原卓也/樹里咲穂/新田恵海/木村花代/長谷川初範 ほか
公式ホームページ

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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

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