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[15]愛人と不妊治療をする「偽りの夫婦」

横田由美子 ジャーナリスト

拡大不妊治療に来るカップルが「夫婦」かどうか、病院側も確認する時代になってきた=写真はイメージ

 

 「“なりすまし夫婦”の項を読んで、改めて背中に冷や汗がつたうのを感じました」

 前回の原稿([14]遺産相続のために卵子をほしがった男)を掲載した直後、関東圏の大学病院で不妊治療にあたっているA医師から連絡がきた。

 A医師がその“夫婦”に初めて会ったのは、今から4年前、2013年のことだ。40代後半の上品な男性と連れだって、30代後半の派手目の妻が診察に訪れた。

 「妻も、そろそろいい年齢だし、どうしても子どもが欲しいと言うので……」

 と、夫はあまり積極的な様子ではなかったが、「授かれるものなら……」と妊活に満更でもない雰囲気だった。

 A医師は、夫婦の年齢が年齢なので時間がないと思い、

 「血液検査など、ごく一般的な検査をお二人にした後は、“タイミング療法”は飛ばして、すぐに人工授精をしましょう」

 と勧めた。

 2、3度挑戦してみて、難しいようであれば、体外・顕微授精という選択肢も提案しなくてはいけない。だが、まずは、感覚的に“普通のセックス”による授精と変わらない人工授精をする方が、心理的なハードルも低くなると判断したためだ。

 人工授精では、夫の精子をスクリーニングして質の良い精子を分離し、排卵のタイミングにあわせて精子を注入する。妻の卵胞を計測し、生理開始直後からHCG(Human chorionic Gonadotropin、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)注射をして、人工授精をしたところ、1度目で妊娠に成功した。妻の喜びようは尋常ではなく、A医師も担当した看護師も、一緒に喜んだ。妻は、同じ大学の産科で女の子の赤ちゃんを産んだ。

堂々と答える“妻”、しどろもどろの“夫”

 「その直後だったと思います。その夫婦の担当だった看護師が顔面を硬直させて、『先生、お話があるんです』と言ってきて、人気のない所に呼び出されました」

 聞くと、二人は未入籍の夫婦であったばかりでなく、夫には、本妻が別にいて、高校生の子どもまでいると言うではないか。「妻」と名乗った女性は、 ・・・続きを読む
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筆者

横田由美子

横田由美子(よこた・ゆみこ) ジャーナリスト

1996年、青山学院大学卒。雑誌、新聞等で政界や官界をテーマにした記事を執筆、講演している。2009年4月~10年2月まで「ニュースの深層」サブキャスター。著書に『ヒラリーをさがせ!』(文春新書)、『官僚村生活白書』(新潮社)など。IT企業の代表取締役を経て、2015年2月、合同会社マグノリアを設立。代表社員に就任。女性のためのキャリアアップサイト「Mulan」を運営する。

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