メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

【公演評】花組『MY HERO』

宝塚では珍しいヒーローものでドラマシティ初主演、芹香斗亜の花男らしさが光る

さかせがわ猫丸 フリーライター


拡大『MY HERO』公演から、ノア・テイラー役の芹香斗亜=岸隆子(Studio Elenish)撮影

 花組公演、アクションステージ『MY HERO』が、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演されました。伝説のスーツアクターを父に持つ人気俳優ノア・テイラーが、栄光と挫折を経験しながら成長するオリジナルストーリーで、芹香斗亜さんがドラマシティ初主演に挑みます。貴公子風イメージがある芹香さんが、花男のキザりを活かしながら憎らしい二枚目を演じ、同時に繊細な心の内側も豊かに表現。歌やダンスの向上とともに、花組を支えるスターとしての頼もしさを見せました。

 2番手となる鳳月杏さんは、ノアの父を尊敬し、自らスーツアクターとなったテリー・ベネット役。ノアとは正反対の真面目な青年で、持ち前の色気と実力をいかんなく発揮しています。

 宝塚では珍しいヒーローアクションに作・演出が齋藤吉正先生とくれば面白いこと間違いなし。そんな予想を裏切ることなく、元気で明るい展開にホロリとするシーンもおりまぜ、下級生も隅々まで活躍するなど、ヒーローものらしい躍動感たっぷりな舞台となりました。

キザで悪い男に余裕を感じさせる芹香

拡大『MY HERO』公演から、ノア・テイラー役の芹香斗亜=岸隆子(Studio Elenish)撮影
 オープニングはスクリーンにアメリカンコミック風の映像が流れ、まずは登場人物の紹介から。最初に余熱を怠らない齋藤先生おなじみの演出です。

 2種類登場するアクションヒーローの衣装はいずれも本格的で、このまま子ども向け番組に出ても違和感なさそう。体にフィットした金属チックなヒーロースーツを着こなし、マスクの下半分だけ出ている顔で美しさも表現できるのは、さすがタカラジェンヌ。最近は仮面ライダーからイケメン俳優が多数輩出されているので、宝塚でこのジャンルを上演するのも思わず納得してしまいました。

――かつて全米中をわかせたヒーローを描く映画『MASK☆J The Movie』の制作発表会で、主演のノア(芹香)は脚光を浴びていた。MASK☆Jのスーツアクターをつとめていた故ハル・テイラー(綺城ひか里)の一人息子でイケメンスターだが、素顔は酒と女にだらしないトラブルメーカーだ。調子に乗るうち、ついに致命的なスキャンダルを起こして映画は降板、事務所も解雇されてしまった。

 ノアは再起を誓うが、ふとした出会いからマネージャーになったクロエ・スペンサー(朝月希和)がとってくるのは安い仕事ばかり。過去の栄光が忘れられないノアは、遊園地でのヒーローショーを台無しにし、シルバーホーム『ネバーネバーランド』の老人たちを連れ観覧に来ていたボランティアの女子学生マイラ・パーカー(音くり寿)から激しく非難される。

 愛らしいマスクと優しそうな雰囲気が魅力の芹香さんも、荒ぶる青年やオジサマ役などを経て、近年、めきめきと成長してきました。プレイボーイでキザなノアのふるまいは、培ってきた花組男役らしさが活きるところ。享楽的に生きる典型的な悪い男なのに、それがまた憎らしくてカッコいい。そんな役でも余裕をもって演じている芹香さんに、スターらしい貫禄が増したことを実感しました。

 スーツアクターだった父を嫌悪し、顔を出さない演技に意味はないと全面否定していますが、その裏には、幼い頃のとある出来事が隠されていました。そんなノアも、表舞台での活躍を鼻にかけた傲慢さが原因で、あっという間に転落の一途へ。悩み苦しむ中、マイラと出会ったことで、“誰かのヒーロー”であることへの自覚が芽生えてきます。

 葛藤を乗り越え、変わっていくノアの成長がこの物語の根幹です。芹香さんの成長著しい歌声とダンス、そして素直な演技と、なによりスターらしい華やかさが主人公に説得力を与えていました。

◆公演情報◆
花組公演
アクションステージ『MY HERO』
2017年3月16日(木)~23日(木) 東京・TBS赤坂ACTシアター
2017年4月2日(日)~10日(月) 大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
※この公演は終了しています
[スタッフ]
作・演出:齋藤吉正

・・・続きを読む
(残り:約1998文字/本文:約3630文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
デモクラシーやJournalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

さかせがわ猫丸の新着記事

もっと見る