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『エジソン最後の発明』公演評

人々の心をつなぐ「言葉」に優しく思いを馳せる喜劇

大原薫 演劇ライター


拡大『エジソン最後の発明』公演から=桜井隆幸撮影

 もしも死者と話せる機械があったとしたら……?

 そんな機械「スピリット・フォン」をモチーフに、人々の心をつなぐ「言葉」に優しく思いを馳せる舞台『エジソン最後の発明』が上演中だ(23日まで東京・シアタートラム。その後、名古屋、大阪公演あり)。

 等身大に描かれた人々のイキイキしたやり取りに大笑いしながら、伝えたい言葉、伝えられなかった言葉を思い出す。心温まる喜劇だ。

どこにでもいそう、でもどこにもいない人たちの物語

 本作は青木豪が7年ぶりに作・演出の両方を担当する公演となる。劇作家としては『花より男子 The Musical』(演出・鈴木裕美)『9days Queen~九日間の女王~』(演出・白井晃)、いのうえシェイクスピア『鉈切り丸』(演出・いのうえひでのり)、演出家としてはD-BOYS STAGE『お気に召すまま』『十二夜』『ヴェニスの商人』(以上、作・シェイクスピア)や『The River』(作・ジェズ・バターワーズ)など、シリアスな歴史劇から軽快なミュージカルまで幅広く手掛ける。今回の『エジソン最後の発明』では青木が主宰した劇団グリング(2009年活動休止、2014年解散)のときを彷彿とさせるような「普通の人々」の物語を立ち上げた。

 東京の下町の工場街。昔ながらの作業音とラジオの音声が響く中で、舞台は始まる。町工場の主、糀谷真一郎(小野武彦)は発明好きで「エジソンさん」と呼ばれていた。エジソンが最後に発明しようとしたのが「死者と話せる機械」スピリット・フォンだと知り、自分もスピリット・フォンを創ろうと試行錯誤の毎日を送っている。真一郎の娘でラジオアナウンサーの深春(瀬奈じゅん)とディレクターの仲木戸智(東山義久)が番組のロケ取材で真一郎を訪れる。何かと難癖をつける真一郎にいら立ちを隠せない深春。実は深春と仲木戸は恋人同士で結婚を考えている間柄。しかし、仲木戸がバツイチであるために真一郎に言い出せないでいたのだ。

拡大『エジソン最後の発明』公演から=桜井隆幸撮影

 予想外のことが起こり、大騒動を巻き起こすロケのどさくさに、「娘さんと結婚します」と言い出す仲木戸。愛娘とバツイチの男性の結婚に気が進まない真一郎は仲木戸に「スピリット・フォンを発明できたら、結婚してもいい」と難題を吹っ掛ける。

 深春の兄夫婦の正(岡部たかし)と明美(安田カナ)。真一郎の亡き親友の弟で町工場主の油木恒夫(八十田勇一)と甥の博之(武谷公雄)。明美が通うラーメン屋の店員で霊感があるという馬場麦子(まりゑ)。出てくるキャラクターは実に個性豊かなのに、非常にリアル。まさに「どこにでもいそう」だけれど「どこにもいなさそう」な人たちだ。青木が一人一人のキャラクターに手塩をかけた。会話から彼らが過ごしてきた日常が自然とにじみ出る。だから、客席に座っているというよりは、町工場の一角にお邪魔して、彼らの生活をのぞき見しているような感覚になってくるのだ。

◆公演情報◆
『エジソン最後の発明』
2017年4月2日(日)~23日(日) 東京・シアタートラム
2017年5月1日(月) 名古屋・青少年文化センター アートピアホール
2017年5月2日(火)~3日(水・祝) 大阪・サンケイホールブリーゼ
[スタッフ]
作/演出:青木豪
[出演]
瀬奈じゅん、東山義久、岡部たかし、まりゑ、安田カナ、武谷公雄、八十田勇一、小野武彦
公式ホームページ
★青木豪×東山義久のインタビューはこちら

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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

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