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[1]プレゼンテーションの時代を生きる

梅田悟司 電通コピーライター・コンセプター

梅田悟司氏と「と思います」禁止令梅田悟司氏と「と思います」禁止令

プレゼンテーションの重要性が高まっている

私たちは、どんな場面でもプレゼンテーションをしている私たちは、どんな場面でもプレゼンテーションをしている

 他者に自分の考えを伝える、プレゼンテーションの重要性が高まっている。

 仕事をしていれば、打ち合わせの場で自分の考えた企画を共有したり、クライアントに対して、課題解決策を提案したりすることは日常茶飯事であろう。

 大学生にとっては、学生時代の一大イベントである就職活動も、自分を売り込む意味において、プレゼンテーションの場と捉(とら)えることができる。「自分の強みは何か」「なぜこの企業を志望したのか」「今後、仕事を通じて社会にどう貢献したいのか」、こうした内容を面接官に対して正しく伝える必要がある。

 そのほかにも、研究発表や学会報告は当然のことながら、授業の度に提出するリポートさえも、対面型ではないものの、一方向型のプレゼンテーションと言えよう。

 また、近年における、フェイスブックやインスタグラムなどのSNSで散見される「盛る」「生活を編集する」といった行為も、自分を表現する一つの手段として捉えることができる。いいね!などの他者からの評価を目的としているため、れっきとしたプレゼンテーションである。

 デジタル化の波を受けて、小学校ではタブレットやPCの操作法を学びながら、パワーポイントやキーノートを用いて自己紹介や将来なりたい職業などを発表し合う授業も行われている。デジタル・ネイティブならぬ、プレゼンテーション・ネイティブな子どもたちが生まれつつある。

 ビジネスに目をやると、世の中から広く投資を仰ぐクラウド・ファウンテングが活況を見せている。

 こうしたプラットフォームは、自分が抱えている課題意識とたどり着いた解決方法を世界に向けて発信し、賛同者を仰ぐ場、と定義することができる。

 インターネットを介することで、一度に幅広い企業や個人へ事業価値を説明すると共に話題を作っていく拡散型プレゼンテーションを行えるようになったのだ。

 こうした状況を鑑(かんが)みても、年代や立場に関わらず、現代は自分をプレゼンテーションする時代であることがわかる。

 逆説的に言えば、自分の着想やアイデア、意見を発信できない人は、存在しないのと同じとの評価を受けてしまう危険性すらあるのだ。

スッと消えてしまう言葉、胸に刺さる言葉

胸に刺さる言葉は、考え抜いた自信から生まれる胸に刺さる言葉は、考え抜いた自信から生まれる

 社内で若手社員と打ち合わせをしたり、大学にお呼びいただいて授業を担当したりすると、驚かされることがある。若者たちのプレゼンテーションが非常にうまいのである。

 ふだんからやり慣れているのだろうが、話の論点が整理されており理解しやすい。プレゼン資料も洗練されており、イラストや写真、アニメーションを多用することで飽きがこないように工夫されているのだ。

 その一方で強く懸念していることがある。

 それは、話している内容はスッと入ってくるものの、胸に突き刺さることや、強く印象に残ることが少なく、聞いたそばからスッと消えてしまうのだ。

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