メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

【公演評】舞台『ハムレット』

ジョン・ケアードが新解釈で描くシェイクスピアの名作悲劇

岩村美佳


拡大『ハムレット』公演から=引地信彦撮影

 ジョン・ケアードが演出、内野聖陽が主演の舞台『ハムレット』が、東京芸術劇場プレイハウスにて上演中だ(4月28日まで、全国ツアーあり)。英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)の名誉アソシエート・ディレクターのジョン・ケアードが、これまでにもタッグを組んできた内野に、「そろそろハムレットをやれば?」と声をかけて実現した舞台。そぎ落とされた世界のなかで、役者たちの台詞と熱に酔う贅沢な作品になっている。

 『ハムレット』はシェイクスピアの4大悲劇のなかのひとつ。デンマークの王子ハムレットが、亡き父王の亡霊に出会い、実は叔父に殺されていたことを聞かされ、復讐を果たす物語だ。シェイクスピア作品のなかでも、世界中で数えきれないほど上演され続けている人気作品であり、見たことがなくても、どんな作品かなんとなくでも知る人は多い。その名作を、シェイクスピア博士ともいえるジョン・ケアードが、今、日本で、どう演出するのか、興味深く見た。今作で特徴的なのは、ほぼ全ての俳優が複数の役を演じ、わずか14人のキャストで演じることと、和の世界観で作り上げられていることだ。ジョン・ケアードの新解釈である、この2点に注目して紹介する。

対比となる役を同じ役者が演じる

拡大『ハムレット』公演から=引地信彦撮影

 パンフレットからジョン・ケアードの言葉を借りると、『ハムレット』は「存在」についての根源的な芝居であり、「演じる」ことについての芝居でもある。「現実と非現実の多層構造にすることで面白くなるのではないか」との考えから、ホレイショー(北村有起哉)以外の役者が一人数役を演じるという演出にしたそうだ。

 そして、“ホレイショーの記憶の中の物語”のイメージで作られているという。なるほど、物語の導入と終結がそのイメージを明確に示している。舞台は、托鉢の僧が鳴らす鈴のような音が、かすかに聞こえてくるところからはじまる。ホレイショーがゆっくりと舞台に入ってきて、中央の床に触れると、床の光が広がって行き、人々が集まってくる。ホレイショーによって呼び起こされた人々の物語がはじまるのだ。

 役者が複数の役を演じるという演出は、クローディアスと亡霊を同じ役者(國村隼)が演じることを思いついたのがきっかけだそう。主役のハムレットを演じる内野も、ハムレットの死後にデンマーク王となるノルウェイの王子・フォーティンブラスと2役を演じている。王になるべきだったハムレットと実際に王になるフォーティンブラス、殺し殺された兄弟のクローディアスと亡霊など、対比となる役を同じ役者が演じているのは、単純に面白い。同じ役者が演じているからこそ、ふたつの役を注視して見比べてしまう。

◆公演情報◆
『ハムレット』
2017年4月9日(日)~28日(金) 東京・東京芸術劇場 プレイハウス
〈7日(金)・8日(土)プレビュー公演〉
2017年5月3日(水・祝)~7日(日) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
2017年5月10日(水) 高知・高知市文化プラザかるぽーと大ホール
2017年5月13日(土)~14日(日) 福岡・北九州劇術劇場 大ホール
2017年5月17日(水) 長野・まつもと市民芸術館 主ホール
2017年5月21日(日) 長野・上田市交流文化芸術センター 大ホール
2017年5月24日(水)~26日(金) 愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
[スタッフ]
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
上演台本:ジョン・ケアード、今井麻緒子
演出:ジョン・ケアード
音楽・演奏:藤原道山
[出演]
内野聖陽、貫地谷しほり、北村有起哉、加藤和樹
山口馬木也、今拓哉、壌晴彦、村井國夫、浅野ゆう子、國村隼 ほか
公式ホームページ
★加藤和樹インタビューはこちら

・・・続きを読む
(残り:約1136文字/本文:約2698文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
デモクラシーやJournalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

岩村美佳

岩村美佳(いわむら・みか) フリーランスフォトグラファー、ライター

ウェディング小物のディレクターをしていたときに、多くのデザイナーや職人たちの仕事に触れ、「自分も手に職をつけたい」と以前から好きだったカメラの勉強をはじめたことがきっかけで、フォトグラファーに。現在、演劇分野をメインにライターとしても活動している。

岩村美佳の新着記事

もっと見る