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増田明美ファンからの「ひよっこ」視聴率挽回予測

「かわいそうなところ」をみなが共有する、「立派な功績をあげた人」

矢部万紀子

増田明美さん2015拡大増田明美さん=2015年

 4月3日から始まった朝ドラ「ひよっこ」の視聴率がよくないと聞く。初回の数字が、「あまちゃん」から「べっぴんさん」まで8作連続で20%超えだったのに、19.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。以後も20%をなかなか超えていないと報じられている。

『連続テレビ小説 ひよっこ』拡大『ひよっこ』=NHK提供
 「べっぴんさん」がパッとしなかった影響を受けた、主演の有村架純の茶髪やセーラー服の短すぎる丈が時代とあってない、あまり顔を知らない俳優が出ているなど、いろいろ言われているようだが、私は「ひよっこ」、すごいぞ!と思っている。そのことを書かせてもらう。

キーワードは「意図」と「非連続」

 「ひよっこ」はこう始まった。「おはようございます。増田明美です」。あのマラソンの、あの「詳しすぎる解説」の、増田明美さんがナレーションを担当することがわかった瞬間だった。増田ファンの私、うれしかった。だが、ファンだから「すごいぞ!」ではないことは縷々書いていく。

 続く主題歌は、桑田佳祐さん。昭和30年代のドラマだということが説明された後、響いてきた。「昭和歌謡でいきましょう」という意図がはっきり伝わる歌詞&メロディーだった。

 私は「ひよっこ」のキーワードは「意図」だと思っている。意図的に何かを進めていく。これ、できるようでできない。

 たとえば増田さん、初日のオープニングに「おはようございます」と登場させ、2日目には「今日からでも、間に合いますよ」などと言わせた後に、主人公のおじさんが登場すると「朝ドラには変なおじさんがよく出てきますよね、何ででしょうね」とドラマにつっこみを入れている。7日には体育の先生らしき役割で一瞬登場させ、「失礼いたしました」とナレーション。「増田明美という『非連続』を視聴者に伝える」という意図がはっきり伝わってきた。

 「非連続」も、このドラマのキーワードではないかと期待している。

 そもそも岡田惠和という脚本家が、「ちゅらさん」「おひさま」に続く朝ドラ3度目の登板で、全然「非連続」ではないが、岡田は今回「非連続」を意識したのではないかと勝手に思うのだ。

 1959年生まれで、数々のヒットドラマを書いてきた岡田。「ちゅらさん」はパート4まで作られるほどの人気だった。宮藤官九郎が「あまちゃん」で示した圧倒的な「非連続」ではないが、自分なりの穏やかな(朝ドラにおける彼の作風は、たぶん「穏やか」であっていると思う)「非連続」を狙っているのでは、と思う。

 実績はある。名声はある。なのにわざわざ3回目を引き受ける。これまで投げたことのあるボールを、「こんな感じですよね」と投げるのではつまらない、そう思うのではと想像する。

 しかし、「よし、非連続でいくぞ」と決めても、「じゃ、どうすればいい?」となる。

 会社経営において、「集中と選択」という言葉とともに「非連続」という言葉が跋扈(ばっこ)するようになって、たぶんもう10年以上経つはずだ。

 だが、「言うは易く、行うは難し」なのが非連続だということは、東芝の例を挙げるまでもないだろう。

 だから私は、増田さんをナレーションにしたことは、すごいと思う。誰が提案したかは知らない。岡田でないかもしれない。が、起用した瞬間に、「非連続」が起きたと思う。

 念のため、朝ドラにおけるナレーターを分類するなら、「死んでしまった登場人物」が昨今のよくあるパターン第1位だと思う。

 「べっぴんさん」は主役のお母さん(菅野美穂)だったし、「ごちそうさん」は主役のおばあちゃん(吉行和子)が「ぬか床の精」と称して担当した。「あまちゃん」が生きている主たる登場人物、夏(宮本信子)、アキ(能年玲奈=当時)、春子(小泉今日子)、が3期に分かれて担当し、これもすごく新鮮に感じたものだった。

 昔はNHKのアナウンサーがほとんどで、今は姿を消していたから、「あさが来た」で女性アナウンサーだったとき、ちょっと話題になったりしたが、これは「非連続」とは言えないだろう。

 増田明美さんはまず、芸能人ではない。バラエティー番組などに出ることはあるかもしれないが、基本は陸上(長距離)の解説者であり、取材者である。増田さんって、明るくて通る声よねと思っている人はごまんといただろう。だが、ドラマのナレーションに起用しようと考えた人はいただろうか。

 こういう「非連続」の発想が「意図」として伝わると、それは視聴者はもとより、出演者にも伝わるのではないだろうか。

有村架純、5キロ太りという「非連続」 ・・・続きを読む
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筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) 「ハルメク」編集長

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月より50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長に。

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