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雪組『幕末太陽傳』『Dramatic"S"!』

早霧せいなの魅力全開、人情喜劇で咲妃みゆとともに明るくさわやかな旅立ちへ

さかせがわ猫丸 フリーライター

拡大『幕末太陽傳』公演から、佐平次役の早霧せいな(右)とおそめ役の咲妃みゆ=岸隆子撮影

  雪組公演ミュージカル・コメディ『幕末太陽傳』とShow Spirit『Dramatic"S"!』が、4月21日、宝塚大劇場で初日を迎えました。雪組が最も得意とする日本物で、トップスター早霧せいなさんと娘役トップ咲妃みゆさんのサヨナラ公演を飾ります。

 2015年に雪組トップスターへ就任した早霧さんは、大劇場お披露目公演『ルパン三世 -王妃の首飾りを追え!-』を皮切りに、明るさと美貌、身体能力を生かした二次元キャラクターがハマり、独自の世界観を確立しました。咲妃さんとの相性も良く、劇場は常に満員御礼。2番手の望海風斗さんを加えた「トリデンテ」人気は、100周年直後の宝塚を大いに盛り上げたと言っても過言ではないでしょう。

 1957年に上演された映画『幕末太陽傳』をミュージカル化したこの作品は、遊郭を舞台にした軽妙洒脱な人情喜劇。和物を得意とする雪組で、早霧さんの人間味あふれる魅力も全開し、明るくさわやかな旅立ちとなっています。

 早霧さんが演じるのは“居残り稼業”の佐平次。冥途の土産に寄った旅籠で才覚を発揮し、次々とトラブルを解決していくのですが、タンゴやジャズのリズムに乗せた古典落語風の演出が洒落ていて、和物だからと構える必要もありませんでした。一つの出来事を軸にストーリー展開するのではなく、独立した場面をつなげていく少し珍しいスタイルが、笑いの波を途切れさせません。たくさん笑ってほろりと泣かされ、「早霧さんらしいなあ」と思わずほっこり。

 この公演は103期生の初舞台でもあります。初々しいひな鳥たちの誕生と、トップコンビの卒業を同時に祝う、春らんまんの公演となりました。

粋でいなせな早霧は和製ルパン三世!?

拡大『幕末太陽傳』公演から、佐平次役の早霧せいな=岸隆子撮影
 時は幕末、文久二年。異人らと長州藩士たちのいざこざも絶えない不穏な時代。東海道五十三次の品川宿に軒を連ねる旅籠「相模屋」に、突然現れた町人風情の男、佐平次。あれよあれよという間に人々の心をつかんでしまうこの男は一体何者なのか?

――相模屋の座敷では、佐平次(早霧)なる男が芸者をはべらせ、飲めや歌えのどんちゃん騒ぎをしていた。だが宴が終わると支払いを引き延ばしたうえ、誘いに来た女郎おそめ(咲妃)も追い返し、早々に休んでしまう。翌朝、楼主・伝兵衛(奏乃はると)とおかみのお辰(梨花ますみ)らが忙しくする中、現れた佐平次は「昨夜の勘定は働いて返す」と宣言。さっそく女郎こはる(星乃あんり)と客のトラブルをあっという間に解決して、相模屋の人々を驚かせるのだった。

 佐平次が相模屋にやってきたのは、胸を患ったことから「どうせ死ぬなら、ぱーっと遊ぼうじゃないか」という、いわば開き直りでした。しかし金がないため始めた “居残り稼業”。才覚にあふれたお茶目なキャラクターで人々の懐に入り愛されていく佐平次は、まさに早霧さんそのもののよう。端正なマスクが映える着流し姿が美しく、粋でいなせなのに身のこなしはあくまで軽くて、ひょうひょうとした三枚目キャラ。おとぼけなのに頭が切れるところは、まるで和製ルパン三世みたいではありませんか。

 しかし、そんな明るさとは裏腹に、達観しているような乾いた気配が、時折、迫りくる死を思い出させます。物言わずとも醸し出す空気感と、絶妙な間合いでお客様を笑わせる……早霧さんの演技力にも、改めて感嘆してしまいました。

◆公演情報◆
ミュージカル・コメディ 『幕末太陽傳』
Show Spirit 『Dramatic"S"!』
2017年4月21日(金)~5月29日(月) 宝塚大劇場
2017年6月16日(金)~7月23日(月) 東京宝塚劇場
[スタッフ]
『幕末太陽傳』
原作:映画『幕末太陽傳』ⓒ日活株式会社 監督/川島 雄三 脚本/田中 啓一、川島 雄三、今村 昌平
脚本・演出:小柳奈穂子
『Dramatic"S"!』
作・演出:中村一徳
公式ホームページ

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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