メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

【公演評】月組『瑠璃色の刻』

美弥るりかの妖艶な美が映える、ドラマシティ単独初主演

さかせがわ猫丸 フリーライター


拡大『瑠璃色の刻』公演から、シモン役の美弥るりか=Studio Elenish撮影

 月組公演、ミュージカル『瑠璃色の刻(とき)』が、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演されました(5月13日~21日、TBS赤坂ACTシアター)。旅役者のシモンがふとしたきっかけから、伝説の人物サン・ジェルマン伯爵になりすまし、一度は時代の寵児になりながらも、革命の渦にのまれていく物語を、美弥るりかさんがドラマシティ単独初主演で挑みます。

 陽気なシモンが王家の運命を占う重要人物として、人々にたたえられるほど、自分を見失っていく姿を、繊細な演技力で表現する美弥さん。センターに立つ姿もたのもしく、もちろん貴族になった姿の麗しさも期待を裏切りません。雪組から異動し、この公演が月組デビューの月城かなとさんが、2番手役となるシモンの友人ジャックを演じ、美弥さんとのフレッシュなコンビも誕生しました。

 高低差のある回廊が回ったり開閉したりしながら場面の色を変え、長い階段を上りながら歌う演出もドラマチックで、松井るみさんの舞台装置もみごたえたっぷりです。

瑠璃色に輝く石とシンクロする美弥の瞳

 舞台はロワール川の畔にあるシャンボール城。魔術や錬金術にたけ、不老不死とも言われた謎多き伝説のサン・ジェルマン伯爵が、太陽王から与えられたという。

 なにやら神秘的なムードが漂う中、美弥さんが黒天使風ダンサーたちと踊るところから幕が上がりました。バレエ風ダンスをしなやかに踊る美弥さんの美しさが、不思議な物語への期待を高めます。

――18世紀、フランス。貧しい旅役者の生活に飽き飽きしていたシモン(美弥)とジャック(月城)は、シャンボール城に忍び込み、お宝を探し求めていた。偶然入った隠し部屋で、城主サン・ジェルマン伯爵の肖像画を見て、シモンと瓜二つであることに驚く。同時に、伯爵が未来を占ったという「賢者の石」を発見し、これを利用して富と権力を手に入れようと、シモンはサン・ジェルマンに、ジャックはその従者テオドールになりきることを企んだ。さっそく華やかな舞踏会に現れたシモンは、役者で培った演技力を駆使して、人々の心をあっという間につかんで、時代の寵児に躍り出るのだが……。

 『瑠璃色の刻』という題名に芸名をかけているだけあり、ルックスも美弥さんらしい妖艶な美しさを引き立てています。ウエービーなロングヘアを、シモン時代は一つにしばって平民服でシンプルに男らしく。サン・ジェルマンになれば貴族らしい華やかな衣装を着こなし、チャームポイントの大きな瞳も麗しくて、まるで王子様のよう。

拡大『瑠璃色の刻』公演から、シモン役の美弥るりか(左)とジャック役の月城かなと=Studio Elenish撮影

 泥棒に入った城で、思わぬことから「なりすまし詐欺」を思い立つシモンとジャック。しかし、本物のサン・ジェルマンは60年以上も前から行方不明になっています。長い旅から舞い戻った設定なのに、若々しい外見であることは明らかに不自然ですが、そこは旅役者。若返りの術や錬金術などで貴族たちの欲望を利用し、巧みな話術で人々をだましていくのでした。

 小道具の一つ「賢者の石」もことあるごとに瑠璃色に輝き、サン・ジェルマンが醸し出す神秘的なムードを高めています。利用するはずのこの石に、いつしかシモン自身が操られるようになるとも知らずに。

 シモンは陽気で、いつもポジティブシンキング。ジャックに対してはちょっぴり兄貴肌で、だいそれた企みもものともせず、サン・ジェルマンになりきる様子がおかしくてたまりません。王宮で次々と貴族たちを驚かせる様は痛快で、この作品ってコメディだっけ?と錯覚するような面白さでぐいぐい物語を引っ張ります。

 『1789』のアルトワや『アーサー王伝説』のモーガンなど、耽美な世界が似合ってきた美弥さんですが、『メイちゃんの執事』でのヤンチャな男子高校生や『グランドホテル』でのオットーなどの役もハマる演技派です。金と権力のためにノリで変身を楽しんでいたシモンが、やがてシリアスなサン・ジェルマンそのものへと変わっていく様子は、鬼気迫るものがありました。

◆公演情報◆
ミュージカル『瑠璃色の刻』
2017年4月29日(土)~5月7日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
2017年5月13日(土)~21日(日) TBS赤坂ACTシアター
[スタッフ]
作・演出:原田諒
公式ホームページ

・・・続きを読む
(残り:約2133文字/本文:約3891文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
デモクラシーやJournalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

さかせがわ猫丸の新着記事

もっと見る