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野村萬斎による新演出『子午線の祀り』

宇宙の中にいるような感覚、“子午線”を感じていただけるように

世田谷パブリックシアター提供


 「見るべき程のことは見つ。今は自害せん」

 『平家物語』に題材をとった木下順二の不朽の名作『子午線の祀り』が、世田谷パブリックシアター芸術監督・野村萬斎による新演出、新キャストにより、今夏、あらたな幕を開ける――

拡大『子午線の祀り』=久家靖秀撮影
 日本の演劇史上に確たる叙事詩劇として燦然と輝く、木下順二の傑作戯曲『子午線の祀り』。壮大なスケールを持つ本作を、世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演として2017年7月、新演出・新キャストにより上演いたします。

【作品概要】
 『子午線の祀り』は、『平家物語』を題材に「天」の視点から人間たちの葛藤を描き、平知盛や源義経を始めとする源平合戦にかかわった登場人物たちを、躍動感をもって浮き彫りにし、心理描写も巧みな壮大な歴史絵巻に仕立て上げました。また日本語の「語り」の美しさと荘厳な響きを引き出す「群読」という独特な朗誦スタイルが随所に用いられ、演劇史に確固たる地位を築いてきた傑作です(78年度読売文学賞受賞)。

 能・狂言、歌舞伎、現代演劇で活躍する俳優、スタッフがジャンルを越えて創り上げ、日本演劇史をひとつの作品で体現する唯一無二の舞台として、高く評価されてきました。その伝説的な舞台が、芸術監督・野村萬斎の新演出により、今夏あらたなステージへ踏み出します。

【作品の歩み】
 初演は今を遡ること38年前の1979年。演出には総合演出者・宇野重吉のほか、観世榮夫、酒井誠、高瀬精一郎、木下順二ら多様なジャンルの重鎮が名を連ねました。また平知盛を嵐圭史、源義経を萬斎の師父である野村万作、阿波民部重能を滝沢修、影身の内侍を山本安英が演じています。その後も上演を重ね、1999年・新国立劇場公演、2004年・世田谷パブリックシアター公演では野村萬斎が平知盛役を務めました。そして今回は、満を持して萬斎自ら演出にも挑みます。

【物語】
 歴史上名高い源平の合戦。次第に平家の旗色は悪くなるばかり。兄・平宗盛(河原崎國太郎)に代わり平家軍を指揮する平知盛(野村萬斎)は、一の谷の合戦で、源義経(成河)の奇襲を受け、海へ追い落とされる。以来、武将となって初めて自分に疑いをもちつつ、知盛は舞姫・影身内侍(若村麻由美)を和平のため京へ遣わそうとする。平家を支える四国の豪族・阿波民部重能(村田雄浩)は、三種の神器を楯に主戦論を唱え、知盛を立てて新しい日本国の存立を画策しようとする。知盛は平家滅亡を予感しながらも、後白河法皇の過酷な要求を拒絶し、徹底抗戦の道を選ぶのだった。一方、源義経は、兄頼朝から目付役として遣わされた梶原景時(今井朋彦)と対立しながらも、源氏方の先頭に立って慣れぬ海戦も乗り越えますます勢いづいていく。そしてついに両軍は壇の浦の決戦の日を迎える――。

木下順二の独自の視点から『平家物語』を現代劇に転化

◆作・木下順二/『平家物語』と『子午線の祀り』
 「見るべき程のことは見つ。今は自害せん」

 これは『平家物語』で勇猛果敢な武将の典型として描かれている新中納言知盛、最期の言葉です。壇の浦の決戦で敗色濃厚になり、安徳帝をはじめとした平家の一門の入水を見届けた後、自らも水底深く沈む知盛。木下順二の『子午線の祀り』の知盛は、この言葉の後に、さらに一言の絶叫が続きます。そのせりふが「影身よ!」です。この言葉を最期に知盛は入水します。『子午線の祀り』が誕生する前、木下順二の作には『平家物語による群読―知盛』があり、「山本安英の会」で1968年よりたびたび試演会を重ねてきました。そしてその10年後の1978年に雑誌『文藝』に発表されたのが本作『子午線の祀り』です。木下順二は自ら、平知盛への興味を次のように語っています。「私が『平家物語』からどういう“問い”を発見し、そのみずからの“問い”にどういう“答え”を出したかは、『子午線の祀り』を観て下さいというよりないが、私が強い関心を持ったことの一つは、三十四年を生きた知盛の最後のほぼ三年である。(中略)その苛烈刻薄な最後の三年間の中で知盛は、初めて剛毅清冽な本領を凄絶なまでに豊かに発揮する」と。

 木下順二はまさに独自の視点から『平家物語』を現代劇に転化させていくのですが、その際に用いた台詞術が「山本安英の会」でも試されていた「群読」と言う手法です。その観点から評論家の加藤周一が書いた文章が1990年の公演時のパンフレットに下記のように掲載されています。「『子午線の祀り』は、古典劇であり、同時に現代劇である。ここには、『平家物語』と木下順二の世界とのみごとな複合が成立している。(中略)『平家物語』における語りの要素と、木下戯曲におけるせりふ劇の構築との組み合わせ、さらにせりふの現代語と群読の原文との調和、という点に見られる。『平家物語』の文章のもつ格調が劇全体に強く作用し、またこの戯曲における人間群像、(中略)群読を背後に置いた対話の構築が、古典の世界を現代に生かしている」と。こうして、『子午線の祀り』は、『平家物語』を基にしながら、1979年の初演以来、昭和戯曲の金字塔として確固たる地位を築いてきました。

 そしてこの傑作戯曲を上演可能としてきた要因の一つが、古典芸能と現代劇のスタッフ、俳優の交流にありました。初演から38年を経た2017年版の『子午線の祀り』でも、狂言、歌舞伎、現代劇など各ジャンルから選りすぐりの俳優が結集し、「古典劇であり、同時に現代劇」である『子午線の祀り』を後世に伝えるべく、新たなステージへ踏み出していくのです。

『子午線の祀り』は、演劇の原体験

◆野村萬斎コメント(演出・出演)
 昭和最大の戯曲と言われている『子午線の祀り』。私の父(野村万作)が1979年の初演に源義経役で出演していたので、中学生の時に初演を観ています。いわば、私の演劇の原体験です。その後、私は1999年と2004年に平知盛を演じ、またこの度、初めて演出も務めさせていただくことになりました。

 作者の木下順二さんは、英文学者でもありご自身でシェイクスピア作品を翻訳されていましたが、シェイクスピアもギリシャ悲劇も集約して日本の『平家物語』という物語の中に落とし込まれました。そのようにして生まれた『子午線の祀り』を世田谷パブリックシアター開場20周年に上演することが叶い、“運命”というものを感じます。私は狂言の家に生まれ伝統芸能の継承者として自分の運命について常に自問してきました。また『平家物語』を語る、というのは能・狂言師の朗誦術を生かすことができます。そして現代演劇においてもギリシャ悲劇の登場人物を演じたり、シェイクスピア作品の出演・演出を手掛けるなど、さまざまな経験をさせていただきました。そうして培った私の“運命論”“宇宙観”というものは、今の私の大事な創作のテーマになっていますが、思い返せば、この『子午線の祀り』に原点があるのです。

 新しいキャストの方々をお迎えして上演する2017年版『子午線の祀り』は、登場人物たちの魅力的な内面性と、すべての人間の運命を包み込む宇宙の壮大なスケール……ミクロとマクロを舞台上に描き出したいと思っています。タイトルにある“子午線”とは、自分の立っている場所の天頂と北極の地軸の延長線上を結ぶ線をあらわす天文用語であり、宇宙における自身の座標軸との延長線にあるともいえます。まさに客席にいながらにして、宇宙の中にいるような感覚、“子午線”を感じていただけるような作品にしたいと存じます。ぜひご期待ください。

◆音楽・武満徹/戯曲の壮大な宇宙観を、音楽で表現
 初演以来、音楽は武満徹の作曲した楽曲が使われています。木下順二は『夕鶴』であれ『オットーと呼ばれる日本人』であれ、そして本作『子午線の祀り』でも、ドラマを宇宙の一つとしてとらえ、その中で人間の運命に思いを巡らせるという姿勢が一貫していますが、まさに『子午線の祀り』の武満の音楽は、その宇宙観を見事に構成しています。野村萬斎新演出の2017年版は演出、出演者を刷新するものの、やはり変わらずに武満徹の音楽を使用することを、萬斎自ら決定しました。

◆主な配役
野村萬斎…新中納言知盛 (しんちゅうなごんとももり)平家の武将
成河…九郎判官義経 (くろうほうがんよしつね)源氏の武将
河原崎國太郎…大臣殿宗盛 (おおいとのむねもり)知盛の兄
今井朋彦…梶原平三景時 (かじわらへいぞうかげとき)源氏の武将
村田雄浩…阿波民部重能 (あわのみんぶしげよし)平家方の地方豪族
若村麻由美…影身の内侍 (かげみのないし)知盛を慕う舞姫

◆公演情報◆
世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演
『子午線の祀り』
2017年7月1日(土)~23日(日) 東京・世田谷パブリックシアター
(プレビュー公演/7月1日~3日)
※チケット一般発売開始=2017年5月14日(日)
[スタッフ]
作:木下順二
演出:野村萬斎
音楽:武満徹
[出演]
野村萬斎、成河、河原崎國太郎、今井朋彦、村田雄浩、若村麻由美
佐々木梅治、観世葉子、小嶋尚樹、星智也、月崎晴夫、金子あい、円地晶子、篠本賢一、内田潤一郎、時田光洋、松浦海之介、嵐市太郎、岩崎正寛、浦野真介、駒井健介、西原康彰、神保良介、武田桂、遠山悠介、三原玄也、森永友基、宇田川はるか、香織、田村彩絵、吉川依吹
主催=公益財団法人せたがや文化財団
企画制作=世田谷パブリックシアター
後援=世田谷区
公式ホームページ

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