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【公演評】ミュージカル『グレート・ギャツビー』

小池修一郎と井上芳雄がタッグを組み、男の美学を描く

岩村美佳 フリーランスフォトグラファー、ライター


拡大『グレート・ギャツビー』公演から=東宝/梅田芸術劇場提供

 小池修一郎演出、井上芳雄主演のミュージカル『グレート・ギャツビー』が、日生劇場で上演されている(愛知、大阪、福岡公演あり)。小池と井上がタッグを組む集大成とも感じられる作品で、小池の美学と、井上の魅力を存分に堪能出来る、秀逸な作品に仕上がっている。

 原作は、F・スコット・フィッツジェラルドの同名小説。何度も映画化された名作だ。小池は、1991年に杜けあき主演(宝塚歌劇団・雪組公演)で初めてミュージカル化し、2008年には瀬奈じゅん主演(同・月組公演)で再演している。ジェイ・ギャツビー役は、背中で語る男役の集大成ともいえる役で、ともに退団間近のタイミングで演じている。

 井上が2000年に『エリザベート』ルドルフ役でデビューし、17年目にギャツビー役を演じるのは、宝塚ならば男役トップを極める程の年月。制作発表会見で「過去の経験はこのためだったと言えるようにしたい」と意気込んでいたが、まさにギャツビー役のためにこれまでがあったのではないかと思う程の完成度だ。

 ロングコートを羽織り登場したときの哀愁、過去を思い歌えばたちまちその世界に引き込まれ、背中にこれまでの人生を浮かび上がらせる。これは男役の美学ではなかったかと思う姿を、宝塚以外の舞台で見られるとは、嬉しい驚きだった。

 小池は、公式パンフレットで「『神はこの作品を創らせる為に井上芳雄と私を引き合わされ給うた』とさえ思える」と書いている。小池は初日の舞台挨拶で感極まっていたが、さもありなんと思った。

作品構造は宝塚版を踏襲、音楽は新しく

拡大『グレート・ギャツビー』公演から=東宝/梅田芸術劇場提供

 1920年代、狂騒のニューヨークが舞台。ロングアイランドにある新興住宅地・ウエストエッグに引っ越してきたニック・キャラウェイ(田代万里生)が、毎夜豪華なパーティーを開いている隣人の謎の紳士ギャツビーに出会い意気投合する。その対岸の高級住宅街イーストエッグには、ニックの又従姉でギャツビーの昔の恋人、デイジー・ブキャナン(夢咲ねね)とその夫トム・ブキャナン(広瀬友祐)が豪邸を構えて住んでいる。ふたりを尋ね懐かしい再会を果たしたニックは、そこでデイジーの友人で全米ゴルフチャンピオンのジョーダン・ベイカー(AKANE LIV)と知り合う。一見幸せそうに見えるトムとデイジーの夫婦関係は、トムの不倫が原因で破綻していた。やがて、ギャツビーの過去とデイジーとの関係が明らかになり、物語は悲劇へと進んでいく……。

 作品構造は宝塚版を踏襲していて、同じセリフも多い。今回新しくなったのが音楽だ。ブロードウェイの新進作曲家、リチャード・オベラッカーが作曲、太田健が音楽監督としてアレンジしている。王道名作ミュージカルのような壮大な楽曲が耳に残る。もぐり酒場“アイス・キャッスル”でのジャジーな格好いいナンバー、パーティーシーンの大人っぽいタンゴ、ゴルフシーンのコミカルなナンバーなど、バラエティに飛んだ楽曲が楽しめるのもいい。

 舞台セットは、舞台前方と後方を分ける位置に現れる、中心が大きなサークル状に穴が開いたパネルが印象的だ。穴の向こう側に奥行きが生まれる。幕開きのシーン(後半にも同じシーンがある)では、パネルの前にギャツビーがいて、サークルの向こうにはプールの水面が映し出されている。銃声が響いてギャツビーがその穴に落ちていくと、水面に赤い血が広がって行く。とても印象的な演出だ。さらに、パネルが中央で分かれて左右に移動することで、様々な表現も見せる。

◆公演情報◆
ミュージカル『グレート・ギャツビー』
2017年5月8日(月)~29日(月) 東京・日生劇場
2017年6月3日(土)~15日(木) 愛知・中日劇場
2017年7月4日(火)~16日(日) 大阪・梅田芸術劇場メインホール
2017年7月20日(木)~25日(火) 福岡・博多座
[スタッフ]
原作:F・スコット・フィッツジェラルド
音楽:リチャード・オベラッカー
脚本・演出:小池修一郎
[出演]
井上芳雄、夢咲ねね、広瀬友祐、畠中洋、蒼乃夕妃、AKANE LIV、田代万里生 ほか
公式ホームページ
★広瀬友祐インタビューはこちら

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筆者

岩村美佳

岩村美佳(いわむら・みか) フリーランスフォトグラファー、ライター

ウェディング小物のディレクターをしていたときに、多くのデザイナーや職人たちの仕事に触れ、「自分も手に職をつけたい」と以前から好きだったカメラの勉強をはじめたことがきっかけで、フォトグラファーに。現在、演劇分野をメインにライターとしても活動している。

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