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[3]面接で過去の話ばかりしてない?

面接官が聞きたいのは未来の話。すべての組織は「未来への伸びしろ」を模索中だからだ

梅田悟司 電通コピーライター・コンセプター

連載「『と思います』禁止令」と著者の梅田悟司さん連載「『と思います』禁止令」と著者の梅田悟司さん

就職活動の季節である

面接では過去の話ばかりをしがちになる面接では過去の話ばかりをしがちになる

 経団連の新方針によって、選考活動の開始日が6月1日となり、まさにいまエントリーシートを書いたり、面接を受けたりしている学生の方も多いだろう。

 エントリーシートの提出方法は手書きからウェブエントリーへと変化しているものの、中身で問われていることはあまり変わらない。

 過去にどんな経験をしてきたか。

 どんな研究やアルバイトをしてきたか。

 そこから何を感じ、何を学んだのか。

 そして、なぜこの企業を志望したのか。

 この設問はエントリーシート通過後にも、面接やワークショップと形を変えて繰り返し聞かれることになる。一方的なプレゼンテーションではなく、双方向コミュニケーションの中で、自分の意見を一貫して伝え切れるかを評価されるのだ。

 最近はグループワークで団体行動におけるリーダーシップやフォロワーシップを評価されることも当たり前になっているが、グループワークへの参加権を得るためにもいくつかの「関門」を越えなければならない。

面接の季節であることは学生に限ったことではない

 年度の始まりが1月の企業にとっては、6月で半期が締まることになるため、7月の初旬には評価面接を受けることになる。そこで聞かれることも、就職活動と同じく、1月から6月という限られた範囲ではあるものの過去についてである。

 どんな業務を行ってきたのか。

 どんな新規案件が生まれたのか。

 継続案件をどのように円滑に進めたのか。

 そして、そこから何を得て、何に生かしていくのか。

 年齢や立場、規模は違えども、私たちは一定期間毎に面接をされ、成果を報告する義務を課されている。その際に準備するものは、過去の成果をまとめた書類である。就職活動であれば人となりが分かるエントリーシートであり、評価面談であれば結果を一覧できる成果シートのようなものである。

 ここで考えていただきたいことがある。

 それは「過去をまとめるだけで必要十分なのだろうか」という点である。

 私個人としては、必要条件は満たしているものの、十分条件にはなっていないものと考える。面接を受ける側も、評価する側も、過去を重視するあまりに未来の話が完全に抜け落ちてしまっているからである。

本当に聞きたいのは「未来」の話だ

未来からの逆算で現在を見つめ直す未来からの逆算で現在を見つめ直す

 過去と未来の関係を考えると、2通りの解釈が存在する。

 一つ目は、過去の延長線上に未来があるというとらえ方である。

 こんなに努力してきたんだから、この先も同様に、努力できるに違いない。

 こんなに成果を上げてきたんだから、この先も同様に、成果を上がられるに違いない。

 面接の場合、この、ある種、慣性の法則に則(のっと)った視点で評価が進んでいくことになる。なぜなら、前項で述べた通り、面接では常に過去の成果について説明をし評価を受けることで、この先も同様に、期待できるに違いないと考えるからである。

 もう一つの解釈は、どんな過去も大きな未来の一部に過ぎないというとらえ方である。

 前者が積み上げ型の未来とするならば、後者は未来の設計書があって、必要な経験や実績を逆算しながら行動するバックキャスティング型の発想である。

 この両者を比較すると、明らかに評価軸が変わっていく。

 前者では過去こそが重要と考える一方で、後者は大きな未来を描く力こそが重視される。その結果、後者の場合、プロセスの一部に過ぎない過去に対する評価割合は、相対的に下がっていくことになる。

 評価を与えるという1点に絞れば、前者の方が、評価軸が明確になることは間違いない。そのため、多くの人材を一律に評価し、比較する面接の場においては、過去を評価した方がブレが少なく都合がいいのだ。

 一方で、面接官や評価者が聞きたいと考えているは未来の話である。

 その理由は非常に簡単である。

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