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ミュージカル『レ・ミゼラブル』

新しいマリウスに出会ったという感覚

真名子陽子 ライター、エディター


拡大ミュージカル『レ・ミゼラブル』に出演する海宝直人=安田新之助撮影

 東京・帝国劇場で日本初演30周年記念公演・ミュージカル『レ・ミゼラブル』が上演中だ。1987年に初演を迎え、2013年には新演出版が登場し、2015年には上演回数3000回を超えたミュージカル『レ・ミゼラブル』。その2015年からマリウス役(トリプルキャスト)で出演している海宝直人は、子役時代から『レ・ミゼラブル』が大好きで、毎回必ず見に行っていたという。新鮮に演じることができているという2度目となるマリウス役について、大阪で開かれた取材会で熱く語ってくれた。

2015年はとにかく、くらいついていった

――2015年に初めてマリウス役で出演されたときの気持ちを聞かせてください。

 『レ・ミゼラブル』は子役時代から憧れていた作品で、小学生の頃から毎回必ず見に行っていました。その頃はガブローシュ役に憧れていましたね。大人になってからもずっと大好きな作品で、何度かオーディションにチャレンジし、2015年にようやく受かったんです。その知らせは駅のホームで電話を受けたのですが、あまりにもうれしくてホームを行ったり来たりして、最終的には反対方向の電車に乗ってしまって……(笑)。そのくらい『レ・ミゼラブル』のマリウス役をやれることがうれしかったです。

 2015年の公演は、2013年に引き続いて出演するキャストが多く、お稽古の進み具合が早かったんですね。歌稽古も簡単な指示だけでいきなり歌うという感じでした。すでにカンパニーは出来上がっていて、継続のメンバーと新しいメンバーとの温度差のようなものがどうしてもあって、距離感というか勝手なプレッシャーを感じていました。最初はものすごく緊張して歌っていましたが、音楽監督のビリーさんが熱を持って指導してくださって、とにかく、くらいついていきました。

――そして今回、改めてマリウス役を演じるお気持ちは?

 前回ももちろん全力でやりましたが、もっとできたのでは、もっと深められたんじゃないかと思うところがあったので、ブラッシュアップしていきたいなと思っています。そして今回は、イギリスのスタッフとの稽古で、それぞれのキャラクターに2015年とは少し違う解釈が足されたり、違ったアプロ―チを求められたりしたので、2015年の感覚に凝り固まらず新鮮に捉えて、とにかくチャレンジしていきたいなと思っています。作品全体も、また音楽も、熱量が増えたりテンポアップしたりしていますので、それを感じていただけたらうれしいです。

拡大ミュージカル『レ・ミゼラブル』に出演する海宝直人=安田新之助撮影

――マリウスの人物像はどのように感じ取っていますか?

 レミゼファンの方に話を聞くとエポニーヌに共感する方が多くて、マリウスに対してはなかなか厳しい意見が多く(笑)、ひどい男だとよく言われるのですが、すごく人間的な魅力を僕は感じています。いろんな出来事にぶつかり、いろんな人と出会い、そしてコゼットとの恋など、それまでの人生で味わったことがないことをものすごい濃度で経験していくキャラクターです。その中で成長して変わっていきます。アンジョルラスにも負けないくらいの情熱を持っているのですが、それをどこにぶつけていいのかが定まっていなくて。それが仲間の死を経験しコゼットとの出会いを経て、最終的にはジャン・バルジャンをなくしたコゼットを守り、革命で命を落とした仲間たちやエポニーヌの思いを背負って、未来へつないでいく役割を果たす――。人間としての面白みを改めて感じていますし、演じていてとても魅力的な役だなと思います。

 前回、マリウスは優しいイメージがあるかもしれないけど、直人に感じたのは男性的でパワフルなところだから、イメージに流されずに自分が信じたものを出してくれればいいんだと言ってくださったんです。役作りに悩んでいたのですが、その言葉がとても腑に落ちて、そこから自分なりのマリウス像を作っていけるようになりました。

特別な何かが宿った作品だなと思う

――今年29歳になりますが、20代最後に憧れの作品で舞台に立てますね。

 そうですね。東京で幕が開いて実際に演じてみて、改めて素晴らしい作品だなと実感しました。2度目ですが、一から作った感覚が大きいんです。今回、エイドリアン(演出補のエイドリアン・サープル)がマリウスに新しい色味を足したいと言ったんですね。恋をして悩むことが多かったのですが、もっとフレッシュで情熱的で鮮やかな感情表現が、今回のマリウスには欲しいと。1幕のコゼットに出会って恋に落ちた時などの表現は、内向していくのではなく、もっともっとオープンに出していって欲しい。そのように見せることで、2幕で悩んだり苦しんだりするマリウスの心情が、ダイレクトにお客様に伝わるからと。そういうアプローチで作ったので、演じていてとても新鮮ですし、新しいマリウスに出会ったという感覚があるんです。20代最後の年に、同じ作品だけど新しいチャレンジを『レ・ミゼラブル』でできるということは本当に幸せですし、日々やっていてとても楽しいです。

拡大ミュージカル『レ・ミゼラブル』に出演する海宝直人=安田新之助撮影
――今回は、日本初演30周年記念公演ですが、長くこの作品が愛され続ける理由はなんでしょう?

 「誰かを愛することは、神様のそばにいることだ」という歌詞があるのですが、それがすべてを表しているなと思います。人間の本質を描き出している作品なので、いつの時代でも心に響くのではないかと思いますし、見る方の年代によってもいろんな感じ方や共感の仕方があると思います。10代で見た方が再び20代で見ると、新たな発見があると思います。あの時はこの人に共感したけれど、今回はこの人のこの気持ちにとても共感できる、といったような……。そういうところが30年続いている普遍的な魅力だと思います。そして、色あせない音楽の素晴らしさ。プロローグの最初の音が鳴った瞬間、物語へガッと引き込んでくれるエネルギーは素晴らしくて、何度聞いても高ぶりますし、特別な何かが宿った作品だなと思います。

――海宝さん自身も年代によってこの作品の見方は変わりましたか?

 最初はガブローシュがカッコいいなと思っていて、マリウスやコゼットはあまり意識して見ていなかったのですが、大人になってからマリウスの魅力や人間らしさというものを理解できたり共感できるようになりました。あと、なぜジャベールが自殺するのか、以前はわからなかったけれど、少しずつ感覚的に理解できるようになってきました。経験を重ねていくうちにそういう感覚が広がっていきました。

――マリウス役以外にやりたい役はありますか?

 将来的な話になりますが、ジャン・バルジャンは魅力的ですし、役者としてチャレンジしてみたい役です。

トリプルキャスト、細かいところが違うからおもしろい

拡大ミュージカル『レ・ミゼラブル』に出演する海宝直人=安田新之助撮影

――トリプルキャストですが、他の方との関係はいかがですか?

 (田村)良太さんとは前回から一緒ですし、(内藤)大希くんとは他の作品で一緒だったこともあって仲が良いんです。役についても話しますし、稽古場を離れても相談し合っています。お互いの稽古を見て、こういう風に見えてたよと感想を言ったり、「どうだった?」って聞くこともあります。お互いに励みになりますし、それぞれの持ち味が違うので刺激になっています。

――コゼットもトリプルキャストですが、印象は?

 それぞれの個性に合わせて演出をされていて、引き出す所も違いました。演じていてもそれぞれ全然違うんです。ここで気持ちが動いているんだとか、こういうアプローチがあるんだとか、ここで目が合うんだとか。基本的な動きは一緒ですが、細かいところが違うので注目していただけると面白いと思います。

 他の役も複数キャストで演じ、組合せが様々なので毎回新鮮なんです。アンジョルラスが違えば空気感、しゃべる声、台詞の聞こえ方、全部違いますので、向かい合う私もすごく新鮮です。それは見てくださるお客さまにも感じていただけると思いますね。これもレミゼの魅力かなと思います。

拡大『レ・ミゼラブル』舞台写真パネル展(写真は2015年公演から)/大阪・中之島フェスティバルタワー・ウエストにて、6月18日まで=安田新之助撮影

――最後にメッセージをお願いします。

 2013年、2015年と新演出版として上演してきましたが、2017年版は、『レ・ミゼラブル』は進化し続ける、停滞することなく前に進み続ける、というコンセプトで、判を押したような作品は作らないと演出家はおっしゃっていました。新演出版を見た方も、今回は“最新演出版”として見ていただけるのではないかと思いますので、ぜひ見に来てください!

◆公演情報◆
ミュージカル『レ・ミゼラブル』
2017年5月25日(木)~2017年7月17日(月・祝) 東京・帝国劇場
〈プレビュー公演〉5月21日(日)~24日(水)
2017年8月1日(火)~26日(土) 福岡・博多座
2017年9月2日(土)~15日(金) 大阪・フェスティバルホール
2017年9月25日(月)~10月16日(月) 名古屋・中日劇場
[スタッフ]
作:アラン・ブーブリル&クロード=ミッシェル・シェーンベルク
原作:ヴィクトル・ユゴー
作詞:ハーバート・クレッツマー
オリジナル・プロダクション制作:キャメロン・マッキントッシュ
演出:ローレンス・コナー、ジェームズ・パウエル
[出演]
ジャン・バルジャン/福井晶一、ヤン・ジュンモ、吉原光夫
ジャベール/川口竜也、吉原光夫、岸祐二
ファンテーヌ/知念里奈、和音美桜、二宮愛
エポニーヌ/昆夏美、唯月ふうか、松原凜子
コゼット/生田絵梨花、清水彩花、小南満佑子
マリウス/海宝直人、内藤大希、田村良太
テナルディエ/駒田一、橋本じゅん、KENTARO
マダム・テナルディエ/森公美子、鈴木ほのか、谷口ゆうな
アンジョルラス/上原理生、上山竜治、相葉裕樹
ほか
公式ホームページ
海宝直人オフィシャルサイト
【コンサート出演情報】
村井邦彦 作曲活動50周年記念コンサート
『LA meets TOKYO』
2017年12月15日(金)Bunkamuraオーチャードホール(東京)
海外よりグラミー受賞アーティスト他トップアーティストが集う公演に、海宝直人の出演決定!

筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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