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公演評:『THE SMALL POPPIES』

大人が演じる5歳児の物語が描く、多文化共生のありよう

岩橋朝美 フリーエディター、フリーライター


拡大『THE SMALL POPPIES』〈kangarooチーム〉公演から=劇団スタジオライフ提供

 男性のみで構成される劇団スタジオライフが、オーストラリア発の傑作戯曲『THE SMALL POPPIES』を、新宿シアターサンモールで上演中だ。作品の舞台は、1980年代のオーストラリア・アデレード。生まれた国や宗教がさまざまな子どもたちの学校生活を通して、多文化共生のありようを描きだす。本作はkoalaチーム、kangarooチームの2チームでの上演だ。

 同じ日に小学校へ入学した5歳のクリント(山本芳樹、岩﨑大)、テオ(笠原浩夫、船戸慎士)、レップ(松本慎也、宇佐見輝)。母子家庭で育ったオーストラリア人のクリントは、内気なお母さんっ子。大好きなママ(仲原裕之)が恋人に首ったけなのが面白くない。ギリシャから一家で移民してきたテオは、いつも明るく元気だけれど、入学前に短くした髪型が気に入らない。カンボジア難民の少女レップは、姉ノイ(若林健吾)とともにオーストラリアに来たばかりで、まだ英語が話せない。それぞれに不安を抱えた3人を、担任のウォルシュ先生(関戸博一、緒方和也)は温かく迎え入れる。それでも、なかなか学校になじめないクリントは、レップもある悩みを抱えていることを知る。

 最初に目に入るのは、舞台の中央に配置された大きな盆と、その周りに設置されたイス。たくさんのペイントが施された青色の盆は宇宙を表し、オーストラリア・アデレードがその一部であることが示される。盆の上に登場する小学生たちの髪は、栗色や黒、直毛に巻毛とバラエティ豊かだ。移民や難民を積極的に受け入れてきたオーストラリア社会の一端が、舞台となるアデレードの小学校にも見てとれる。

さまざまな感情を少ないセリフで豊かに表現

拡大『THE SMALL POPPIES』〈kangarooチーム〉公演から=劇団スタジオライフ提供

 その盆上で、子どもたちの何気なくも新鮮な出会いに満ちた日常生活がテンポよく展開する。初めて学校という社会に放り出される5歳児を演じるのは、スタジオライフの役者たち。もちろん、成人した大人だ。とはいえ、主人公クリントを演じる山本、岩﨑は今までも『PHANTOM』『訪問者』などで少年役を演じてきた子ども役の名手。何かあれば「ママ~!」と叫ぶ甘ったれで気弱なクリントを可愛らしく演じている。意外性のある配役なのが、テオ役の笠原と船戸。『DAISY PULLS IT OFF』の女子高生役に続き、挑戦の役となる笠原は、本来の長身をあまり感じさせず人懐こい笑顔で陽気な5歳児を体現。一方の船戸は、5歳児にしてはがっしりすぎる体型ではあるが、大きな目をきょろきょろと動かし、ただ元気なだけではなく、よく周りを見ている様が印象的だ。

 そして、3人のうちの紅一点レップには、宇佐見と松本。新たな地で前向きに生きようとする希望、自国の文化が周囲に受け入れられない悲しさ、亡き母への想いなど、さまざまな感情をほとんどセリフなしで豊かに表現した彼らの芝居は、作品の大きな魅力。しなやかな宇佐見、清楚な松本、それぞれの女役としての個性が光る役作りも見ものだ。

◆公演情報◆
スタジオライフ公演『THE SMALL POPPIES』
2017年6月15日(木)~7月2日(日) 東京新宿・シアターサンモール
[スタッフ]
作:DAVID HOLMAN
上演台本・演出:倉田淳
企画・制作・問合せ:Studio Life〈03-5942-5067/平日12:00~18:00〉
[出演]
笠原浩夫、山本芳樹、岩﨑大、船戸慎士、牧島進一、関戸博一(koalaチームのみ)、松本慎也、仲原裕之、緒方和也、宇佐見輝、若林健吾、千葉健玖、江口翔平、吉成奨人、藤原啓児
公式ホームページ
★関戸博一×松本慎也×宇佐見輝インタビューはこちら

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筆者

岩橋朝美

岩橋朝美(いわはし・あさみ) フリーエディター、フリーライター

映画関連のムック・書籍の編集に携わった後、女性向けWEBメディア・Eコマースサイトのディレクションを担当。現在はWEBを中心に、ファッション・美容・Eコマースなど多様なコンテンツの企画、編集、取材、執筆を行う。また、宝塚やミュージカルを中心とした舞台観劇歴を生かし、演劇関連の取材や執筆も行う。

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