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こまつ座『イヌの仇討』出演、彩吹真央に聞く/下

吉良上野介の立場から描く『忠臣蔵』異聞が29年ぶりによみがえる

中本千晶 演劇ジャーナリスト


こまつ座『イヌの仇討』出演、彩吹真央に聞く/上

死と隣り合わせの空間にも、滑稽な人間模様が

拡大こまつ座『イヌの仇討』に出演する彩吹真央=岩村美佳撮影
――お稽古はちょうど一幕が終わろうとしているところだそうですが、手応えはいかがですか。

 お稽古の進め方が役者にとってありがたくて、「今日はここまで」「明日はここまで」と区切ってくださって、その日の範囲だけを何度も何度もやってくださるんです。もし、どんどん進んでしまうと、たとえばセリフがうろ覚えだったり自分の中で整理がついていないときも、そのままお稽古しないといけないですが、今回はとてもやり良いですね。毎日だいたい1時から始まって夕方に終わるのですが、ずっと集中してやっています。

 どんなお稽古も集中すれば疲れますが、今回は壁板一枚向こうに敵がいて、見つかったら全員殺されてしまうかもしれないという恐怖感の中のお芝居ですから、それはもうしんどいです。でも、実際に炭小屋に隠れていた吉良の方々には、私たちが想像する何百倍もの恐怖感があったでしょうから、そういう時のハクハクした鼓動や汗をお稽古場でリアルに感じておかないといけないと思うんです。

 その暗闇の小さな空間の中でも、登場人物には位があって人間関係があって、私とお三さまとは対立していて、まさに小宇宙です(笑)。300年もの間、憎まれ役だったお殿様が寒い寒いと震えて「座布団が欲しい」と言う、その座布団一枚をめぐって皆で喧嘩するという滑稽さ。演出の東さんからは、そんな人間の可笑しさ、人間臭さをディープに求められるのが面白いですね。

――吉良上野介を演じられる大谷亮介さんとの共演はいかがですか?

 私の中での吉良上野介さんは、もう大谷さんそのものですね。上野介さんは、お吟自身が自分の命に代えてでもお守りしたいと思っている最愛の方ですし、実際ご領地の人や近習たちからも慕われていた人格者ですが、大谷さん自身も大らかでお優しい方なんです。いろいろなアドバイスをくださったり、「ここはどうしましょう」とお聞きすると「一緒にやってみよう」と言ってくださったり、いい意味で変な緊張感なく接することができています。それがお吟と上野介さんの関係に自然に繋がっていくといいなあと思いますね。

拡大こまつ座『イヌの仇討』に出演する彩吹真央=岩村美佳撮影

――女中頭のお三さまとはバトルもありますが、三田和代さんとの共演はいかがですか?

 お三さまって近習たちよりも上野介さまよりも肝が座っている。その深さにお吟は気づかず対立してしまうわけですが、本当に誰よりもかっこいいんですね。役の上では対立しなければいけないのに、三田さんもとてもお優しくて、いろいろと教えていただいています。私、日本物のお芝居は宝塚を辞めてから初めてなので、作法でおかしいところを指摘していただいたり、私からもお聞きしたり、お三さまとの関係とは真逆の、とても温かい空気です。でも、そこに甘えすぎてはいけないですね。お芝居で負けてしまう部分があると「そこはもっと向かってきて欲しい」とおっしゃってくださるので、「では!」と思って向かっていっています(笑)。

◆公演情報◆
山形新聞・山形放送 後援
こまつ座118回公演
『イヌの仇討』
2017年7月5日(水)~23日(日) 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
[スタッフ]
作:井上ひさし
演出:東 憲司
[出演]大谷亮介、彩吹真央、久保酎吉、植本潤、加治将樹、石原由宇、大手忍、尾身美詞、木村靖司、三田和代
公式ホームページ
〈彩吹真央プロフィル〉
1994年宝塚歌劇団入団。繊細な演技力とのびやかな歌声を持つ男役スターとして活躍。2010年宝塚歌劇団を退団。主な出演作品は『DRAMATICA/ROMANTICA』『Pal Joey』『COCO』『モンティ・パイソンのスパマロット』『サンセット大通り』『シラノ』『ウェディング・シンガー』など。また、コンサートなどの歌手活動や声優など様々なジャンルにも積極的に挑戦している。
彩吹真央Official Web Site

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筆者

中本千晶

中本千晶(なかもと・ちあき) 演劇ジャーナリスト

山口県出身。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。ミュージカル・2.5次元から古典芸能まで広く目を向け、舞台芸術の「今」をウォッチ。とくに宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。主著に『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』『タカラヅカ流世界史』『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』(東京堂出版)、『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』(ポプラ新書)など。早稲田大学非常勤講師、NHK文化センター講師。

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