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【公演評】星組『阿弖流為 -ATERUI-』

現役屈指の実力派が魅力を爆発、強くて優しい阿弖流為は礼真琴そのものだった

さかせがわ猫丸 フリーライター


拡大『阿弖流為』公演から、阿弖流為役の礼真琴(中央)=岸隆子(Studio Elenish)撮影

 星組公演、『阿弖流為-ATERUI-』が、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演されました(7月31日~8月6日、東京・日本青年館ホール)。

 歌・ダンス・演技の三拍子そろった礼真琴さんは、スターがひしめく95期生の中心的存在。星組の2番手としてもますます輝きを放っています。大劇場公演で大きな役をいくつも経験し、2度のバウホール公演を経て、3度目の主演をいよいよ初のドラマシティで迎えました。さらに、リニューアルされた日本青年館での本格的なこけら落とし公演にもなっています。

 原作となる高橋克彦氏作の『火怨』は、2000年に吉川英治文学賞を受賞した歴史小説。平安時代初期、ふるさとの蝦夷を守るため、征夷大将軍・坂上田村麻呂に挑む阿弖流為の生きざまを壮大に描いています。作品の面白さに加え、2015年に上演された歌舞伎NEXT『阿弖流為』が映画館で公開されたことから、ファンの皆さんの期待もより一層、高まっていたことでしょう。男役10年を目前に、大人の色気とたくましさを身につけてきた礼さんは、そんな期待を裏切ることなく、当て書きのごとく阿弖流為そのものになっていました。

若手を率いる礼の強烈な求心力

拡大『阿弖流為』公演から、阿弖流為役の礼真琴=岸隆子(Studio Elenish)撮影
 魅惑の低音ボイスと劇場を震わせる歌唱力。体幹の強さを物語るシャープなダンス。性別を問わない情感こもる演技。礼さんが持つ実力の高さは、初舞台の頃から注目の的でした。『ロミオとジュリエット』のベンヴォーリオ、『風と共に去りぬ』のスカーレット、『ガイズ&ドールズ』のアデレイド、そして『THE SCARLET PIMPERNEL』のショーヴランと、並みいる大役を次々と担いながら、常に結果を出してきた礼さんが次に挑むのは、等身大のヒーローです。

――8世紀。東北の蝦夷には、自然を愛し穏やかに暮らす人々がいた。だが朝廷は「蝦夷は鬼、人には非ず」と蔑み、絶対服従の支配下に治めようとしている。ある日、蝦夷の長の息子たちの前に、朝廷側へ寝返っていた伊治公鮮麻呂(壱城あずさ)が姿を見せた。自らの命と引き換えに参議・紀広純(輝咲玲央)の首をとる機会を伺っているという。だが阿弖流為(礼)だけは、裏切られた思いの強さから、その言葉を信じることが出来ない。

 蝦夷にはいくつかの集落があり、それぞれの長の息子たちが立派な青年に成長していました。その中でも胆沢(いさわ)の阿弖流為は、卓越した武力を持ち、強さと優しさを持つ人柄で、皆のリーダー的存在になっています。腰まで届く長い髪の一部を高く結い上げ、色鮮やかに飾りつけた民族衣装の足元は宝塚らしくロングブーツ。涼しげな和化粧も美しく、凛とした立ち姿から大人の色香が匂い立ちます。重そうな衣装をものともせず、登場から仲間を率いてダイナミックに踊り、美声を響かせ熱唱。冒頭から舞台も客席も丸ごとわしづかみにする礼さんの求心力に、いきなり圧倒されてしまいました。

 頼もしい実力と人柄でみんなを引っ張る阿弖流為は、今の礼さんの姿と重なります。鮮麻呂役の壱城さんが阿弖流為に対し、こんな立派な青年になってと感心するシーンにも納得せずにはいられません。

◆公演情報◆
『阿弖流為 -ATERUI-』
2017年7月15日(土)~7月23日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
2017年7月31日(月)~ 8月6日(日) 日本青年館ホール
[スタッフ]
原作:高橋 克彦『火怨 北の燿星アテルイ』(講談社文庫)
脚本・演出:大野 拓史
公式ホームページ

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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