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【ヅカナビ】『阿弖流為』から見る

タカラヅカ流古代日本の世界

中本千晶 演劇ジャーナリスト


 星組期待のスター礼真琴の、満を持しての東京での初主演作「阿弖流為 -ATERUI-」(脚本・演出/大野拓史)。多くのファンがチケット入手困難に頭を悩ませる人気公演となり、新しくなった日本青年館ホールが熱気に包まれた。

 もともとは劇団☆新感線が同名の作品をやっており、これが歌舞伎バージョンにもなっている。そちらで名前を聞き知っていた人も多いだろう。いっぽうタカラヅカ版は高橋克彦氏の小説『火怨 北の燿星アテルイ』をもとにしているから、劇団☆新感線版とはストーリーは異なる。だが、阿弖流為と坂上田村麻呂、この二大英雄の対決が物語のクライマックスとなるのは間違いない。果たしてタカラヅカ版ではどう描かれるのだろうということで、上演が発表された時から興味津々だった。

 スマホで「あてるい」と入力するとちゃんと「阿弖流為」と変換されるのには驚いたが、そもそも「阿弖流為」とはいったい何者なのか? 今回のヅカナビではまずそのあたりから振り返り、かつて日本史の時間に学んだことなども思い出しつつ、この作品の魅力を探ってみることとしよう。

日本史の教科書にも登場

 「坂上田村麻呂」――この名前だけは、学生時代に日本史の時間に聞いた記憶がある、という人も多いだろう。私が高校時代に使っていた日本史の教科書(山川出版社)を見直してみると、「奥羽の蝦夷が大規模な反乱を起こすが、桓武天皇の時の征夷大将軍 坂上田村麻呂が鎮定に成功」と書かれている。だが、今の日本史の教科書を見てみると、

780年:帰順した蝦夷の豪族 伊治呰麻呂(これはりのあざまろ)が乱をおこす。
789年:紀古佐美を征東大使として大軍を進めるが、族長阿弖流為に大敗。
802年:征夷大将軍となった坂上田村麻呂が胆沢城を築き、阿弖流為を帰順させる。

 といったところまでぐっと詳しく記述されている。坂上田村麻呂のほか伊治呰麻呂もちゃんと太字ゴシックである。そして阿弖流為も紀古佐美もちゃんと登場している。

 伊治呰麻呂とは、今回の作品で壱城あずさが熱演している伊治公鮮麻呂(これはるのきみあざまろ)だ。朝廷が記録させた『続日本紀』には「呰麻呂」と表記されているそうなのだが、小説『火怨 北の燿星アテルイ』の中で高橋克彦氏は「私は小説的意図の下に資料の引用時以外は鮮麻呂と書き改めている)と注記している。紀古佐美は、夏樹れいが演じている朝廷の高官だ。今の学生からすると阿弖流為は私の世代とは違って、なじみの深い歴史上の人物なのかもしれない。

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筆者

中本千晶

中本千晶(なかもと・ちあき) 演劇ジャーナリスト

山口県出身。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。ミュージカル・2.5次元から古典芸能まで広く目を向け、舞台芸術の「今」をウォッチ。とくに宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。主著に『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』『タカラヅカ流世界史』『宝塚歌劇は「愛」をどう描いてきたか』『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』(東京堂出版)など。早稲田大学非常勤講師、NHK文化センター講師。

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