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田代万里生インタビュー/下

こまつ座『きらめく星座』に出演、「自分の中にト書きがある状態に自然になれたら」

中本千晶 演劇ジャーナリスト


田代万里生インタビュー/上

『エリザベート』で変わった、役作りの仕方

拡大田代万里生=岩村美佳撮影

――先ほどお話にも出た『グレート・ギャツビー』や『エリザベート』のお話も伺いたいと思います。今まで色々な『エリザベート』を観ましたが、田代さんのフランツ・ヨーゼフは何というか、とても愛すべきフランツ・ヨーゼフだった気がします。

 嬉しいですね。2010年にルドルフをやりましたが、そのときはフランツにはそれほど注目してなかったんです(笑)。やはりルドルフから見たら常に敵対する人でしたから。でも、そうやってルドルフの立場で考えた上で2015年にフランツを演じて、さらにその後ウィーンに行ったんですね。そこでフランツゆかりの地を訪ねたりすると、2016年にはまた全然違う感覚でやることができました。知れば知るほど、やればやるほど好きになった大切な役です。

――先日の『グレート・ギャツビー』も拝見したのですが、タカラヅカ版と比較しても、ニックという役の重みが増していて、とてもバランスがいい感じがしました。

 あの作品も原作があって、原作ではニックは語り部だけど、ミュージカル版では語り部にはなっていない。でも目線としては語り手になっているんです。つまり、語らないけれど語らなきゃいけないのが難しい役でした。台詞のないところでニックとしてお客さまに伝えるべき情報量がとても多くて、他の人物のキャラクターもニックの反応次第で定まってくるところが面白かったです。

拡大田代万里生=岩村美佳撮影
――『エリザベート』のときは確か「ミュージカル『エリザベート』はこうして生まれた」という本をおすすめされていましたよね。私も読みましたがとても興味深い内容でした。『グレート・ギャツビー』のときも、「『グレート・ギャツビー』の読み方」という本を超おすすめされていました。

 そしたら絶版だったという。皆さん図書館を巡って探したり、「古本屋で1万円でありました」とか(笑)。

――再販して欲しいですよね(笑)。でも、お話を伺っていると、田代さんの場合、ひとつの役の下にお調べになったり体験されたりしたことがとてもたくさんある感じがします。

 それが楽しいんですよね。今回の作品もそうですが、ただ台本の字面だけを読んでいたらあっという間に読めちゃう。でも、何でもないと思っていた台詞も「当時はこういう意味だった」とか「これは、こういう価値のあるものだった」とか、知ったうえで読むと、そこにまた色々なドラマが見えたりするんです。台本だけを読んでいてもわからないことがたくさんあるのだと『エリザベート』などで強く感じたので、それが役作りの仕方につながっていると思います。

――やっぱり、演じていても違ってくる感じなのでしょうか。

 そうですね。お客さまには全部伝わらなくても自分の中で成立させるため、正一バージョンのスピンオフ『きらめく星座』を自分で作って(笑)、筋が通ったお芝居ができたらと思っています。でも、たぶん皆さんそういうことを無意識にやっているんですよね。それをバランス良く組み合わせていって、ひとつの舞台にしていくのだと思います。

 『グレート・ギャツビー』では、台本10ページ分もの間、台詞は一つもないのに舞台上にずっと出ていて、そこで色々なドラマがあって常にリアクションしているという状況もあったので、そこでどういう風にたたずんでいるか、何を考えているか、自分の中に常にト書きがある状態に自然になれたらいいなと思いました。

――田代さんには『エリザベート』のスピンオフとしてフランツ・ヨーゼフ版をぜひやってほしいです!

 やってみたいですね(笑)。いくらでも語りたくなります。

◆公演情報◆
こまつ座第120回記念公演
『きらめく星座』
2017年11月5日(日)~23日(木・祝) 東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
2017年11月30日(木) 宮城・仙南えずこホール 大ホール
【スペシャルトークショー】
★11月7日(火) 1:00公演後 秋山菜津子・山西惇・田代万里生・木村靖司・深谷美歩
★11月12日(日) 1:00公演後 吉原毅(城南信用金庫 顧問)-戦争の足音が聞こえる時代に-
★11月16日(木) 1:00公演後【井上ひさし誕生日特別トークショー】辻萬長・木場勝己・久保酎吉・後藤浩明
★11月21日(火) 1:00公演後 いとうせいこう(作家・クリエーター)-「音楽」は「笑い」を連れてくる!-
※アフタートークショーは、開催日以外の『きらめく星座』のチケットをお持ちの方でもご入場いただけます。ただし、満席になり次第、ご入場を締め切らせていただくことがございます。
※出演者は都合により変更の可能性がございます。
◆同時開催◆
『こまつ座のキセキ』
第120回公演を記念して、こまつ座の33年間の軌跡を秘蔵の資料と共に展示いたします。他では見られない貴重な資料を一挙大公開!!『きらめく星座』公演期間中、劇場ロビーにて開催。
[スタッフ]
作:井上ひさし
演出:栗山民也
[出演]
秋山菜津子、山西惇、久保酎吉、田代万里生、木村靖司、後藤浩明、深谷美歩、阿岐之将一、岩男海史、木場勝巳
公式ホームページ
〈田代万里生プロフィル〉
東京芸術大学音楽部声楽科テノール専攻卒業。大学在学中、東京室内歌劇場公演オペラ『欲望という名の電車』日本初演で本格オペラデビュー。2009年『マルグリット』でミュージカルデビュー、12年『ボニー&クライド』で初のタイトルロールを務める。主な出演作は『グレート・ギャツビー』『エリザベート』『スリル・ミー』『ラブ・ネバー・ダイ』など。第39回菊田一夫演劇賞受賞。
田代万里生オフィシャルサイト

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筆者

中本千晶

中本千晶(なかもと・ちあき) 演劇ジャーナリスト

山口県出身。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。ミュージカル・2.5次元から古典芸能まで広く目を向け、舞台芸術の「今」をウォッチ。とくに宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。主著に『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』『タカラヅカ流世界史』『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』(東京堂出版)、『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』(ポプラ新書)など。早稲田大学非常勤講師、NHK文化センター講師。

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