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舞台『管理人』、登場人物はわずかに3人

狂気とユーモアの“ピンター・ワールド”が開幕

世田谷パブリックシアター提供


拡大『管理人』ビジュアル=細野晋司撮影

 ノーベル文学賞作家ピンター・ワールドの代表作『管理人』。その登場人物はわずかに3人。ガラクタを拾い集める男と、ガラクタを処分したい男と、ガラクタ同様に拾われてきた男……。

 常軌を逸したやりとりを繰り広げる男たちの不条理劇には、息詰まる緊迫感と不格好なまでのペーソスがあふれ出し、それゆえに人間存在の脆さとたくましさが表裏一体となるおかしみ! 森新太郎のエッジの効いた演出、絶妙にアンバランスな3人の男による狂気とユーモアの“ピンター・ワールド”、ここに開幕!

 世界の演劇界に多大な影響を及ぼしたノーベル文学賞受賞の鬼才ハロルド・ピンター。その代表作を、ここ10年でめきめきと頭角を現し今や日本の演劇界で押しも押されもせぬ地位にいる演出家・森新太郎が手掛けます。

 この三人芝居に名を連ねるのは、青年ミック役の溝端淳平(=ガラクタを処分したい男)、その兄アストン役の忍成修吾(=ガラクタを拾い集める男)、宿無し老人デーヴィス役の温水洋一(=ガラクタ同様に拾われてきた男)。それぞれに異なる個性を持つ、森いわく「完璧」な顔合わせで、絶妙にアンバランスなトライアングルをつくります。

「アホらしい!」と笑えてしまうくらい、滑稽なせめぎ合いが

◆演出:森新太郎コメント
 舞台の出来事はロンドン西部にある小さな一室で起こります。戯曲冒頭のト書きによれば、その部屋は大量の廃品=ガラクタで溢れかえっており、今日の日本で言うところのいわゆる“ゴミ屋敷”です。登場人物は3人。この部屋にガラクタを拾い集めてくる男と、この部屋からガラクタを処分したい男と、この部屋へガラクタ同様に拾われてきた男です。彼らが何者でどんな人生を送ってきたのか、ピンターは何一つはっきりとは提示してくれません。全てが曖昧。ただひとつ確かなことがあるとすれば、それは彼らがこの部屋において、常にある種の緊張状態に置かれているということでしょうか。そこでは、自分の居場所を巡っての駆け引きや闘争が、延々と容赦なく繰り広げられます。「アホらしい!」と笑えてしまうくらいに。そんな滑稽なせめぎ合いの様は、我々が生きている現代社会そのものかもしれません。徐賀世子さんによる切れ味のいい新訳のもと、ユーモアと臨場感に満ちたピンター劇をお届けできたらと思います。どうぞお楽しみに。

◆ストーリー
 舞台はロンドン西部にある家の小さな一室。住み込みで働いていたレストランを首になったばかりの宿無し老人デーヴィス(温水洋一)は、偶然知り合ったアストン(忍成修吾)に自分の家に来ないかと誘われ、これ幸いとついていく。だが翌朝、いきなり現れたアストンの弟ミック(溝端淳平)に不審者扱いされ激しく責め立てられる。口の減らない図々しいデーヴィスの前に交互に現れる、無口で謎めいた家のリフォーマーと称するアストンと、家の所有者であると主張する切れ者のミック。彼らはそれぞれ別々に、この家の「管理人」にならないかとデーヴィスに提案してくる。兄弟に見込まれたデーヴィスの態度は、次第に変化していき――。

“人間というものは訳がわからない、無茶苦茶だ”

◆不条理劇について
 「不条理劇」は、「哲学的」「難解」ともイメージされますが、森は「“不条理”の元々の英語“Absurd”には、“ばかばかしい”という意味もある。人間存在の不合理性、不可解さを描いた不条理劇とは、簡単に言うと“人間というものは訳がわからない、無茶苦茶だ”と感じる世界のこと」と語ります。

 森はこれまでサミュエル・ベケットやマーティン・マクドナーなどの鬼才たちの作品を演出してきました。沈黙や間が多いという点で同じ系譜にあるピンターの作品は、最初に読んだときは面白さがわからなかったと言いながらも、「気分が塞がっている時に『管理人』を読んだら、とても魅力的で、“わかりやすい”とさえ思った。人間関係がどんどん変化していき、どん詰まっていく。そして無力であろうが、それでも生きていかざるを得ない彼らの存在が、笑えるのと同時に切なくなり、その時の私には救いにすら感じられた」と、惹かれた理由を語ります。森新太郎演出の不条理劇『管理人』からは、ピンターの描く人間存在の滑稽さ、それゆえの切なさが浮かび上がってくることでしょう。

登場人物の3人は現在の日本の状況や日本人とも重なる

◆本作の演出について/【キーワードは「ガラクタ」】
 約60年前のイギリスの戯曲『管理人』を今日の日本で演出する手がかりとして、森は「ガラクタ」をキーワードにあげます。

 「壊れているモノ、つまりガラクタであふれているこの部屋は、まるで現代の“ゴミ屋敷”のよう。そしてこの部屋の中では、“ゴミと人間が等価”であると自分には映った」と森は語ります。兄アストンは自分の孤独を埋めるように過剰なまでにガラクタを集めますが、老人デーヴィスを拾ってきたのも、彼が“ガラクタ同然”だからと森は解釈しています。そして兄はガラクタを修理しようとしますが、何一つ直すことができません。そこに、ガラクタを処分して理想的な家にリフォームしたいという野心をもつ弟が加わって、身動きの取れない三すくみの関係が生まれます。ガラクタが堆積した部屋、そこから抜け出せない現状、また“抜け出したい”と“閉じこもっていたい”という背反する感情を抱えている彼らは「現在の日本の状況や日本人とも重なるように感じた」と森は現代との接点を見出しています。

◆公演情報◆
『管理人』
2017年11月26日(日)~12月17日(日) 東京・シアタートラム
2017年12月26日(火)~27日(水) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
※チケット一般発売:9月17日(日)~
[スタッフ]
作:ハロルド・ピンター
翻訳:徐賀世子
演出:森新太郎
[出演]
溝端淳平、忍成修吾、温水洋一
公式ホームページ