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ナイロン100°Cの新作に三宅弘城が出演

作品は皆で一緒に作り、育てていくもの

米満ゆうこ フリーライター


拡大三宅弘城=岸隆子撮影

 ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)が主宰する劇団、ナイロン100°Cの3年ぶりの新作『ちょっと、まってください』が全国各地で上演される。劇団旗揚げからの中心メンバー・三宅弘城が大阪市内で取材会を行い、新作への期待や、KERAへの思い、俳優としての仕事などについて語った。

KERAさんは僕の親であり、師匠なんです

 取材陣に向かって開口一番、「おおまかなプロット以外、まだ何も決まっていないんです。作品の内容や役柄については僕にも何も分かりません。皆さん、どうぞお手柔らかに(笑)」と恐縮する三宅。「稽古の初日にまず、台本の数枚が配られるんです。ト書きを見るのはいつもワクワクしますね。そこから稽古しながら皆で一緒に作り上げていく。その楽しさったらないです。作品が一緒に育っていくんですから」

拡大三宅弘城=岸隆子撮影

 新作『ちょっと、まってください』は、乞食と金持ちが入れ替わる物語だという。王子と乞食が入れ替わるマーク・トウェインの有名小説『王子と乞食』を連想するが、王子は登場せず、乞食と入れ替わるのは金持ちで、金持ちも乞食も「家族」。しかも複数らしい。三宅の役柄は、乞食か金持ちかも現時点では分からない。「昔、KERAさんに医者の役と言われて稽古をしていたら、最終的には木こりになったことがありました(笑)。今回は乞食や金持ちではなく、犬の役かもしれません(笑)。よく、『役作りはどうするんですか』と聞かれるのですが、役を固めてしまうといつどんでん返しが起こるか分からない。色んなタイプの役者がいますが、僕はたとえ台本があってもこうだと決めてかからない。どんな役でも対応できるように、ニュートラルに臨んでいます」

 稽古場では、KERAの持つイメージに対して、役者がアイデアを出しながら具現化していく。それも長年培った信頼関係がものをいうという。「例えば、僕はパターンAがいいと思ってやっていても、KERAさんはパターンBがいいという。そして、Bでやってみると、KERAさんの言う通りで、Bのほうが面白くてよく伝わるんです。やっぱりKERAさんの言うことは間違いないなと再確認したりします。KERAさんは親のような師匠のような存在です。芝居のしの字も知らないころから劇団に入り、さまざまなことを教わりましたから」。稽古場では、KERAが俳優の前で実際に演じて見せることもあるそうだ。「言葉ではニュアンスが伝わらないときに、KERAさんが髪の毛を振り乱して演じてくれたことが。役者一同、見てはいけないものを見てしまった気がして、凝視できませんでしたが、みんなニヤニヤしていました。(一同笑)」

大阪では『番頭さん』と声をかけられます

拡大三宅弘城=岸隆子撮影

 新作でもどんなどんでん返しが待ち受けているか分からない。「ただ、一つ言えるのは、KERAさんはここ十数年間、劇作家の別役実さんにはまり、傾倒されているんです。『別役さんが書いたと思われるぐらいまねることができれば』とおっしゃっていました。そこまで究極を目指しているんですよね」。今回も金持ちの家族と乞食の家族が入れ替わる話を別役的な文脈で描くという。

 三宅は、ナイロン100°C の舞台以外でも主役を張り、映像でも活躍している。NHK連続テレビ小説『あさが来た』の番頭役で一気にお茶の間の顔になった。「だからといってこれだけ長く俳優をやっていますので、気持ち的には大きく変わることはないですね。ただ、大阪の街を歩いていると、『番頭さん』と声をかけられます。番頭が結婚する回があったのですが、『良かったね、おめでとう』とも言われて(笑)。それだけ生活の中にドラマが息づいているんでしょうね」とうれしそうだ。

拡大三宅弘城=岸隆子撮影

 ナイロン100°Cは来年25周年を迎え、三宅も50歳になる。「これだけナイロンが続き、僕も役者をやれるなんて思ってもみませんでした。大学卒業後に『どうなるか分かんないけどお芝居をやっていこう』と決めたんです。諦め半分、腹くくり半分でした。親にも電話して『親子の縁を切ってでも役者になる』くらいの勢いで、ノーフューチャーでしたよ(笑)」。両親からは「そろそろいい加減にして、ご飯が食べられるようにワープロでも習ったらどう?」と言われたこともある。「ワープロというのが時代を物語っていますよね(笑)。一人っ子ですから親もさぞ心配したでしょう」。三宅の今の活躍は大きな親孝行になっていることだろう。

 新作の稽古を前に「本当に今はワクワクしていますね。KERAさんはいつも新しいことをしようというスピリットがある。決して楽をしようとはしないんです」。稽古場では役者の得意技も封じられることが多いというから、俳優にとっても同じだろう。「虚構の世界を作る仕事ですので、いつもリアルにそこに居ることを大切にしています。それは昔から変わらない姿勢ですね」。ナイロンに居続けて、どんな新たな顔を見せてくれるのか。しっかりと見届けたい。

◆公演情報◆
ナイロン100℃ 44th SESSION『ちょっと、まってください』
2017年11月10日(金)~12月3日(日) 東京・下北沢 本多劇場
2017年12月6日(水) 三重・三重県総合文化センター 三重県文化会館 中ホール
2017年12月9日(土)~10日(日) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
2017年12月12日(火) 広島・JMSアステールプラザ 大ホール
2017年12月16日(土)~17日(日) 北九州芸術劇場 中劇場
2017年12月20日(水) 新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸芸術文化会館・劇場
[スタッフ]
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
[出演]
三宅弘城、大倉孝二、みのすけ、犬山イヌコ、峯村リエ、村岡希美、藤田秀世、廣川三憲、木乃江祐希、小園茉奈/水野美紀、遠藤雄弥、マギー
公式ホームページ

筆者

米満ゆうこ

米満ゆうこ(よねみつ・ゆうこ) フリーライター

「三度の飯よりアートが好き」で、国内外の舞台を中心に、アートをテーマに取材・執筆。ブロードウェイの観劇歴は20年以上にわたり、ブロードウェイの劇作家トニー・クシュナーや、演出家マイケル・メイヤー、スーザン・ストローマンらを追っかけて、現地で取材をしている。

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