メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

ミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』評

トム・サザーランド演出で北翔海莉が女優デビュー、フォッシーダンスも華麗に披露

さかせがわ猫丸 フリーライター


拡大『パジャマゲーム』公演から=花井智子撮影

 ミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』が、9月25日、東京・日本青年館ホールで初日を迎えました。元星組トップスター北翔海莉さんの女優デビュー作でもあります。2016年11月に宝塚歌劇団を退団した直後から、ディナーショーやコンサートで休む間もなく走り出していましたが、本格的なお芝居はこれが初めて。21年間培ってきた男役を脱ぎ捨て、本来の女性に戻って舞台に立つのは、北翔さん自身も、ファンのみなさんもドキドキな瞬間だったのではないでしょうか。

 記念すべき女優デビューを飾る作品は、1954年にブロードウェイで初上演されたミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』。初演、2006年の再演ともにトニー賞を受賞した、ミュージカル映画黄金期時代のエポックメーキング的作品です。時代を超えて愛されてきたこの名作を、『タイタニック』『グランドホテル』でおなじみの演出家トム・サザーランドが斬新なアレンジで現代によみがえらせました。

北翔が違和感なく女性に溶け込む?

 柔らかな物腰で、素顔は女性らしさも感じさせましたが、舞台に立つと一転、巷の男性よりもはるかにりりしく変身していた北翔さん。男役の完成度が高ければ高いほど、退団後の“性転換”は急速に…とはいかないものでしょう。それだけに女優デビューはひときわ注目が高まりましたが、今回演じるのは、パジャマ工場で7セント半の賃上げを要求する組合のリーダー、ベイブ・ウィリアムス。キャピキャピはしゃぐ仲間の女性たちとはまったくタイプの異なる、仕事命のハンサムウーマンです。これなら違和感なく溶け込めるかも……?

――1954年。スリープタイト社のパジャマ工場では、低賃金への不満が渦巻いていた。労働組合の急先鋒に立つベイブ(北翔)と委員長プレッツ(上口耕平)らを中心に7セント半の賃上げ要求が高まる中、新工場長にシド・ソローキン(新納慎也)が赴任する。若くてハンサムなシドに女子社員たちは大盛り上がり。工場のタイムキーパー、ハインズ(栗原英雄)は、恋人の社長秘書グラディス(大塚千弘)も惹かれているのではないかと気が気でない。そんな中でもベイブは全く関心を持たず、組合のリーダーとしての使命をまっとうしようと、シドに対して果敢に意見するのだった。

 組合委員長プレッツを演じる上口さんが開演アナウンスをつとめ、まずはオーバーチュアで劇中音楽のダイジェストが流れます。生演奏の熱が伝わり、客席のボルテージも上がってきた頃、ハインズにせかされ多忙を極めるパジャマ工場が浮かび上がりました。ミシンをかける女性社員が投げるパジャマを、ペアとなった男性社員が受け取る連携プレーに始まり、海外ミュージカルらしいコーラスとリズミカルなダンスで、さっそくワクワクしてきます。

拡大『パジャマゲーム』公演から=花井智子撮影

 そこに登場する北翔さんは、アップにまとめた髪に白いシャツと青いパンツのシンプルな装いで、ピシッとした姿勢の良さが元タカラジェンヌならでは。外国人女性のような長い脚とメリハリあるスタイルの良さにまず圧倒されてしまいました。これまですみれのベールに隠されてきた女性らしいラインは、これから新しい武器になるかも!?

 意志が強いベイブは、新工場長のシドにも臆することなく立ち向かいますが、シドから甘い視線を投げかけられ、隠しきれず戸惑う様子にこれから先の2人を予感させます。仲間の女性社員たちにはやし立てられても、恋なんかしていないと頑なに否定する歌は、ベイブの気の強さと可愛さが交錯し、実にキュート。もちろん歌唱力の高さも健在です。

◆公演情報◆
ミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』
2017年9月25日(月)~10月15日(日) 東京・日本青年館ホール
2017年10月19日(木)~29日(日) 大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
[スタッフ]
演出:トム・サザーランド
振付:ニック・ウィンストン
[出演]
北翔海莉、新納慎也、大塚千弘、上口耕平、広瀬友祐、阿知波悟美、佐山陽規、栗原英雄 ほか
公式ホームページ
★北翔海莉インタビューはこちら

・・・続きを読む
(残り:約1828文字/本文:約3534文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
デモクラシーやJournalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

さかせがわ猫丸の新着記事

もっと見る