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『スカーレット・ピンパーネル』待望の再演

安蘭けい、私と作品の強い絆を感じながら

さかせがわ猫丸 フリーライター


拡大安蘭けい=さかせがわ猫丸撮影

 2008年に宝塚歌劇団で日本初上演された『スカーレット・ピンパーネル』は、数々の名曲と痛快冒険活劇の面白さで、当時、衝撃ともいえる話題を呼びました。その後、2度再演され、今や宝塚にとって財産ともいえる作品になっています。

 そして2016年秋、パーシー役に石丸幹二さんを迎え、ブロードウェイ版を基にした『スカーレット・ピンパーネル』世界初のバージョンが上演されました。フランク・ワイルドホーン氏が新たに書き下ろした2曲も加わり、チケットが入手困難になる大好評を博しましたが、その興奮も冷めやらぬ中、わずか1年後に、待望の再演が決定しました。

 ヒロインのマルグリット役をつとめる安蘭けいさんは、宝塚での初演当時、星組トップスターとしてパーシー役を演じています。ヒーローとヒロインを共に演じ、この作品には格別の思いがあるという安蘭さんが、再演の喜びと意気込みを語りました。

不思議なご縁を感じています

拡大岩村美佳撮影・2016年公演より
記者:再演が決まった時のお気持ちをお聞かせください

安蘭:前回の評判が良かったのでもしかしたらと思っていましたが、1年後に再演と聞いたときは、嬉しいと同時に「そんなに早くやるんだ」という驚きもありました。でも、石丸幹二さんとは「もし再演できるのなら、なるべく早い方がいいね」と話していたんです。この公演は体力を使うので少しでも若い方が…(笑)。思わず「ありがたいね」と喜びあいました。

記者:プレッシャーはありますか?

安蘭:プレッシャーというより、前回見逃した方に見てもらいたい気持ちが大きいですね。あと、ピンパーネル団のキャストがガラッと変わりますし、前回は演出補を担当された石丸さち子さんが、今回はガブリエル・バリーさんとの共同演出で全面的に関わって下さるので、前回とは違った役作りが深められるかなという楽しみもあります。

記者:宝塚で主演した作品を退団してからも演じるのは、どのようなお気持ちですか?

安蘭:不思議なご縁を感じます。トップだった当時、「海外ミュージカルが出来れば辞めてもいい」と思っていましたが、その夢をこんな素晴らしい作品が叶えてくれて、これ以上望むものはないと思うほど、私にとって宝物になりました。この作品があったから、宝塚の安蘭けいが出来上がったと言っても過言ではありません。退団後、今度は女性の役で巡り合え、極上の喜びであることはもちろん、作品と私の強い絆も感じています。

どっちの気持ちになるか迷うこともあります

記者:演じるにあたって、当時の経験を活かしましたか?

安蘭:それが……パーシーの気持ちがわかりすぎるんです。「あ、マルグリットって、こう思っていたんだ。あの時、なんでわかってあげられなかったんだ、バカバカ!」みたいな(笑)。自分の中にパーシーとマルグリットの両方がいて、役作りをしているときに、どっちにつこうか迷ってしまうという不思議な感覚がありました。

記者:マルグリットの新たな魅力に気づいた点は?

安蘭:宝塚バージョンにはありませんが、フランス革命での活躍や自分の家族を助ける場面など、マルグリット自身のアイデンティティや人間性などが深く描かれていることで、よりステキな女性に思えました。彼女は信念を持っていて、どんな男性に会っても芯の強さはぶれなかったのですが、パーシーに出会い恋をしたことで、女性としての素顔ものぞくようになった。そこが同じ女として可愛いと思うし、魅力的だなと思います。

記者:マルグリットと安蘭さんの共通点はありますか?

安蘭:ぶれない強さは共感できますね。でも私、仕事に関しては一貫しているんですが、ふだんは本当にグラグラなんですよ。

マルグリットがこんなに強くていいの?

拡大安蘭けい=さかせがわ猫丸撮影

記者:迫力満点の殺陣もありました。

安蘭:そうなんです。最初に演出家から「今回は戦ってもらうから」と言われて、その時はパーシーとショーヴランの間でチョンチョンくらいかなと思っていたら、二刀流とか!驚きますよね。今回はそれが減るのか増えるのか……楽しみです

記者:殺陣は宝塚で何度も経験されていたので、苦労はなかったでしょうね。

安蘭:はい、すぐ覚えられました。殺陣の先生は宝塚でもよくご一緒させてもらっていた方で、私がどれくらいできるかもご存じで、まったく問題はなかったのですが、「マルグリットがそんなに強くていいんですか?」とは、何度もお聞きしました(笑)

記者:一番難しかった場面はどこですか?

安蘭:橋の上で、スカーレット・ピンパーネルと出会うところです。姿が見えず、パーシーだとは思わないまま話している場面が、難しいけれど好きでした。

記者:公演を観たファンの方からはどんな感想をもらいましたか?

安蘭:パーシー役をまた見たい、という意見は多かったのですが、それと同じくらいマルグリットも愛してくださったようで、それがすごく嬉しかったです。パーシーもマルグリットもステキだから両方見たい、と言われると、性別を超えた役替わりをしないといけませんね(笑)

宝塚では親の気持ちで号泣しました

記者:先日、宝塚でも『スカーレット・ピンパーネル』が再演されましたが、ご覧になりましたか?

安蘭:もちろんです。星組トップスター紅ゆずるは当時、ピンパーネル団の仲間でしたが、今やパーシーまで成長したことに感動しました。下級生の頃から知っているので、親みたいな気持ちかもしれません。懐かしかったし、お客様が喜んでくださっていることも嬉しくて、もういろんな思いがこみ上げて、号泣してしまいました。

記者:当時のことを思い出しましたか?

安蘭:それが、こんな場面あった? こんな曲歌ってた?というのが結構あって、不思議でした。忘れている自分に驚愕です(笑)

記者:私ならこう演じるのに、と思った部分はありましたか?

安蘭:宝塚大劇場と東京宝塚劇場の両公演を見たのですが、宝塚の時は胸がいっぱいでそれどころではなかったけれど、東京では冷静に見ることが出来たのか、そう思うところもありましたね。

記者:それはどちらの役ですか?

安蘭:パーシーとしてですね。マルグリットは宝塚とは全然違うので。

記者:紅さんは今、安蘭さんから「ひるまずぶつかっていけ」と言われたことを、組子に伝えているそうですよ。

安蘭:そうなんですか、嬉しいですね。なんだろう、彼女はほっとけなかったなあ。バイタリティがあって恐れを知らず、萎縮もしなかったので、私もアドバイスしやすかったですし、素直に伸びていきましたね。これからも私が出来なかったことをたくさんやってほしいな。子どもに託す親みたいですね。

宝塚は私を作り上げてくれた場所

拡大安蘭けい=さかせがわ猫丸撮影
記者:今でも男役としての顔がのぞくことはありますか?

安蘭:普段の生活ではもうありません。でも先日、一路真輝さんの35周年記念コンサートで「ひとかけらの勇気」を歌わせていただいたのですが、男役の歌は声の出し方も動きもやっぱり自然に戻っていました。まだ私の中で体が覚えてるんだろうな、何かきっかけがあればパーッと出てくるんだろうなと思うと、ちょっと恐怖を覚えました(笑)

記者:どんなことに「変わったなあ」と思いますか?

安蘭:よく、無意識に脚が開くと言われますが、気づけば脚を閉じてるし、脇も閉じてるんです。そういうのを頑張らなくてもできるようになっていました。8年経つと、いつのまにかできるようになるんです。

記者:すっかり女優さんですね。

安蘭:でも、いろんな仕事先で初めて会う方には、「さすが背筋が伸びていますね」とか「やっぱり元男役ですね」とは、言われたりしますね。

記者:宝塚を離れた今、あらためてどんなところだったと思われますか?

安蘭:辞めた当時は、女優・安蘭けいになったら、宝塚の肩書はいらないと思っていました。否定ではなく、ゼロから始めたかったからです。でも20年の歳月はやはり大きくて、ただの通過点じゃなく、私自身を作り上げてくれた場所でした。大切な仲間たちと一緒に過ごした時間は、人生80年のうちの4分の1でも、私の中では8割を占めている。それくらい大きな存在だとあらためて気づきました。最初は元宝塚と言われるのに抵抗がありましたが、今は素直に宝塚出身だと言えるようになりました。

記者:周りの方の反応も様々なんでしょうね。

安蘭:以前は宝塚というと「ああ~…」と、少し特殊な人を見るような反応でしたが、今は先輩方がメディアでも活躍されたことで、イメージが変わってきたように思います。そうやって道を築いてくださったからこそ、私も元宝塚だと胸を張って言えるので、本当に感謝しかありません。

記者:安蘭さんも宝塚の看板のような存在になっていただきたいです。

安蘭:なりたいですね。宝塚の作品がこうして外部で上演されるのも、とても誇らしいことです。『スカーレット・ピンパーネル』もいつか『エリザベート』のように、いろんな俳優さんが憧れる作品になれば嬉しいです。

記者:最後にメッセージをお願いします。

安蘭:大好きなこの作品をわずか1年で再演させていただき、本当に嬉しいです。前回、見に来られなかったお客様にも、ぜひお越しいただきたいですし、たくさんの方に愛されるミュージカルになればいいなと思います。ピンパーネル団のキャストがガラリと変わりましたし、さらにパワーアップした『スカーレット・ピンパーネル』をお見せいたします。ぜひ期待してください。

◆公演情報◆
ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』
2017年11月13日(月)~15日(水) 大阪・梅田芸術劇場メインホール
2017年11月20日(月)~12月5日(火) 東京・TBS赤坂ACTシアター
[スタッフ]
原作:バロネス・オルツィ
脚本・作詞:ナン・ナイトン
作曲:フランク・ワイルドホーン
訳詞・翻訳・潤色:木内宏昌
潤色・演出:ガブリエル・バリー
演出:石丸さち子
[出演]
石丸幹二/安蘭けい/石井一孝/上原理生、泉見洋平、松下洸平、久保貫太郎、久保田秀敏、多和田秀弥、東啓介、藤田玲、則松亜海 ほか
公式ホームページ

 


筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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