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[17]そして「バブル」はノスタルジーになった

「トレンディの法則」「バブリーダンス」「とんねるずのみなさんのおかげでした」…

太田省一 社会学者

バブル時代をイメージした衣装でダンスする府立登美丘高校の生徒たち拡大バブル時代をイメージした衣装でダンスする大阪府立登美丘高校の生徒たち

 今年2017年も残りわずか。どんな一年だったかとふと回顧してみたりもする。人間は“振り返る動物”であるというところだろうか。

 「振り返る」と言えば、こんなCM動画が話題になっている。飲料メーカーが制作したこの「トレンディの法則」と題された動画、1980年代から1990年代にかけて一世を風靡したトレンディドラマの「あるある」を再現したものだ。

 冒頭、当時のヒット曲「CHA-CHA-CHA」をバックに男女あわせて7人が映る。トレンディドラマの元祖的作品である明石家さんま主演の「男女7人」シリーズ(TBSテレビ系、第1作の『男女7人夏物語』は1986年放送)がすぐに思い浮かぶ。

 服装や髪型も懐かしい。女性はワンレンにボディコン、男性はロン毛にダブルのスーツ。そして、最悪の出会いをした男女の「お決まりの奇跡的再会」、主人公が相手を追いかけ雨の中をずぶ濡れになりながら走る「愛の土砂降りランナー」、ハッピーエンドの場面で男性が女性を抱きかかえて空中でぐるぐる回す「人力メリーゴーラウンド」など、お約束のパターンが次々とドラマ仕立てで再現される。記憶をたどりながらクスッと笑ってしまう人も多いだろう。

 トレンディドラマには、時代的にバブル景気の産物という側面がある。ドラマのなかでも、普通のサラリーマンが高価そうなソファーの置かれただだっ広いオシャレな部屋にひとり住まいをしていたりしていて、それには当時から「あるわけない」とツッコまれていたと記憶する。

 ところが、この「トレンディの法則」の最後には、「今から約30年前 毎日が輝いていた」とのテロップが出る。当時見ていたであろう30代から40代の女性をターゲットにした商品のCM動画であるとは言え、違和感がないでもない。個人差はあるだろうが、バブルのただ中にいた人間にとって当時を振り返ることには気恥ずかしさが伴うような気がするからだ。

 ただこうした動画が作られるようになったこと自体、30年の時間が経ってようやく、バブルの頃をほどよく対象化できるようになった証しなのかもしれない。だからこの動画には、あの頃を懐かしむだけでなく、「あるある」形式でパロディ化して楽しもうという視線があるのだろう。

踊る高校生とバブルとの距離

 そして今年は、バブルに目を向けさせた動画がもうひとつあった。 ・・・続きを読む
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筆者

太田省一

太田省一(おおた・しょういち) 社会学者

1960年、富山県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビ、アイドル、歌謡曲、お笑いなどメディア、ポピュラー文化の諸分野をテーマにしながら、戦後日本社会とメディアの関係に新たな光を当てるべく執筆活動を行っている。著書に『紅白歌合戦と日本人』、『アイドル進化論――南沙織から初音ミク、AKB48まで』(いずれも筑摩書房)、『社会は笑う・増補版――ボケとツッコミの人間関係』、『中居正広という生き方』(いずれも青弓社)。最新刊は『SMAPと平成ニッポン――不安の時代のエンターテインメント 』(光文社新書)、『ジャニーズの正体――エンターテインメントの戦後史』(双葉社)。

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