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日馬富士の暴行事件にみられる角界と世間のズレ

深夜の酒席、白鵬への大甘処分、貴乃花親方の“暴走”……

岸田法眼 レイルウェイ・ライター

日馬富士日馬富士の暴行事件は、角界の問題点を露わにした

 第70代横綱日馬富士が貴ノ岩に暴力をふるって引退した事件は、1か月以上たった現在も注目を集めている。この事件で角界の閉鎖的な環境、第69代横綱白鵬の態度や行動に対する大甘処分、「土俵の充実」イコール信頼回復だという、公益財団法人日本相撲協会(以下、協会)の安直な姿勢など、世間とのズレが浮き彫りとなった。

日馬富士は気性の荒さが災い

 報道によると、同席した白鵬が説教している最中、貴ノ岩がスマートフォンに出てニヤニヤしたことで、日馬富士が激怒。素手やカラオケのリモコンで殴打したという(仮にカラオケのリモコンを壊したら、器物損壊罪にもなってしまう)。社会人が先輩後輩、取引先といった付き合いの場で電話を使うときは「失礼します」といって席を外すのがマナーなのだから、 “礼儀知らず”という点で貴ノ岩は猛省しなければならない。翌日、日馬富士のもとへ行き、謝罪して和解をしたとされるが、その後の展開をみると、貴乃花親方(第65代横綱)はそれを認めなかったということになる。

 さて、日馬富士の現役時代を振り返ると、大関昇進後から土俵上で気性の荒さが目立つ(テレビ中継で、舞の海秀平氏が1度指摘した)。番付上位は“勝って当たり前”という宿命がそうさせたのだろうか。

 この“悪癖”で墓穴を掘り、下位力士に敗れる相撲が目立つようになった。横綱推挙後もほぼ毎場所金星を配給。しかし、2017年に入ると、若手力士に力負けすることが多く、体力の衰えを露呈したほか、両ひじに黒と白のサポーターを二重にはめており、体調面でも深刻な状態に陥っていた。私は彼に限界が近づいていることを感じ、「2018年で引退」と予測していた。

 2017年秋場所は金星を4つも配給しながら、奇跡の大逆転優勝(第58代横綱千代の富士以来となる「33歳横綱」の優勝)。3横綱2大関が休場する非常事態の中、「11勝4敗」という、番付上位では平凡な成績を超越した優勝は称賛を浴びた。

角界の常識は世間の非常識

 今回の暴行事件で、問題点が3つある。

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